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にゃんこ転生  作者: アニマエリ
第1章 生活基盤を整えよう
6/6

5.新居作り

おうちつくるぞー!

(よし。まずは土台作りからね!)


 正しい建築の仕方はわからないが、下から頑丈に作ってみればなんとかなるだろう。まずは、資材を集めるために木の伐採から手をつける。


(エアカッター)


 魔力を多めに込めて大きく鋭く凝縮した空気の塊を黒い巨木に向かって放つ。

 歯の生えた草が拠点の防衛の役割を担ってくれそうなので、そこよりは若干上を狙った。近付くと威嚇しながら妨害して来るが、魔法なら妨害されない事は昨日実験済みである。

 エアカッターが巨木に命中すると、スパンと見事に真っ二つになった。


(レビテーション)


 続いて浮遊魔法を使って木が倒れる前にその場に浮かせる。そのまま建設予定地の隣まで運び、そっと横たえると、エアカッターを複数出して邪魔な枝を伐採していく。

 伐採し終えた枝を風で集め一ヶ所に集めると、やや不格好ではあるが丸太が出来上がった。

 遠くから見ても大きい木だったが、こうして間近で見るとその大きさがよくわかる。


(うん、いい感じ! この調子でやるわよ!!)


 エアカッター、レビテーションを用いて二本、三本と続けざまに伐採し、同じように処理をして丸太を作る。十本ほど伐採し終えたところで、一旦作業を中断した。

 これだけあればきっと作れるだろう。足りなければまたその時に伐採すればいい。


 休憩も兼ねて一旦腹拵えをすることにした。

 一気に魔力を使いすぎればまたフィオたちに怒られてしまう。ノルが言っていた『ビリッ』というのがどのくらいの威力なのかわからないため、それが一番怖い。

 もしかして、フィオとリアが何処かへ行き、その間にノルが残っていたのはもしかして私の監視をさせるためなのではないだろうか。

 そうだとしたら、油断ならない精霊たちである。


 まだ拠点に食料はないので、森に出て昨日の目印を辿って湖へと向かう。昨日の行き帰りで道順を少し覚えていたので駆け抜ければ、あっという間に着いた。


 湖に近づいて、水分補給をする。冷たくて美味しい。


(顔洗ったら気持ち良さそう)


 元が人間なので、水が嫌いとか怖いというのはない。そこは変わらないままでよかったなぁとしみじみと思う。


 試しに両手で水を掬ってみる。

 隙間から漏れ出てしまうが、微々たるものだ。顔を洗う分には十分である。掬った水がなくならないうちに、パシャッと顔面にかける。


(んー……。気持ちいいー……)


 ひんやりとした水が心地いい。被毛が濡れてじっとりするのが少し気持ち悪いが、まだ我慢できる程度だ。例えるなら、服を着たまま水に入った時の感覚に近い。

 パシャパシャ何度か顔を洗いすっきりしたので、風魔法に火魔法を組み合わせて温風を起こし、顔を乾かす。完全に乾いたら、今度は毛繕いをしていく。


(そういえば身体を舐めたりってもっと抵抗あると思ったけれど、すんなり受け入れてる気がする。やらないと落ち着かないし……。人の精神と猫の精神が上手く融合したのかな)


 顔、背中、お腹と、届く範囲を綺麗にしていく。

さすがに抵抗があり届いても舐めれない場所はあったけれど。何処かは察して欲しい。


 ひと通り綺麗にし終えると、やりきった感があった。誰も見ていないけどドヤ顔する。

 身だしなみも整えれたので、次は食事に取りかかろう。

 今朝のメニューは魚だ。

 さぁ、獲るぞ。

 昨日みたいにノルにやってもらうのもいいが、今日は自分でやってみる。


 魔力を練り、掌に雷を凝縮させる。

 自分の魔法は自分には効かないのか、青白い光がバチバチしているがまったく痛くない。


(ねぇノル、威力ってどのくらいにすればいい?)

『んーとね、それだとまるこげー! このくらいかなー』


 ノルが私の掌にある雷に触れると、雷のバチバチが少し弱まった。調整もできるらしい。

 ノルのお陰でだいたいの魔力量が掴めたので、次からは今の感覚を基準にするとしよう。


 凝縮させた雷をポイッと湖に放り投げると、バチバチっと稲妻が迸る。

 しばらくして水面にぷかーっと魚が浮き、こちらへと流れてきた。

 今日も大漁である。

 生態系が、雷耐性が、とか考えていたけれど今のところこれしか捕獲手段がないので仕方ない。


 流れ着いた魚の中から大きいのを選び、空中に水のコンテナを作ってそこに魚を収容する。見た目はコンテナのような長方形だが、作る過程で檻をイメージしているので入ることはできるが出ることはできないスグレモノだ。

 だいたい二十匹くらいは入っただろうか。

 余裕を持って作ったコンテナの中身がみっちりしている。一匹一匹が本鮪くらいのサイズなので、当たり前かもしれないが。


 電気ショックが解けたのか、コンテナに閉じ込めた魚をたちがお互いの隙間を縫うように泳ぎ始める。しかし外には出れないので、同じところをぐるぐると泳ぎ回っている。思いつきで試してみたのだが、上手くいった。


 満足気にその光景を眺めていると、背後から見知った声が聞こえてきた。


『ぬしさますごーい!!』

『あはは、おもしろーい!』


 フィオとリアだ。

 最初から湖に居たのか、それとも拠点に戻ったら私がいなかったからこっちに来たのだろうか。


(どこに行ってたの?)

『もりのみまわりー!』

『もどったらぬしさまいなかったから、ごはんかなーっておもってこっちきたのー』


 大正解だ。

 にしても森の見回りか。この森には野生動物とかいないのだろうか。

 こちらの世界に来てから、未だ変な植物と精霊、魚くらいしか生き物を見ていない。嫌でも関わることになりそうだから人間はまぁいいとして、熊とか猪とか鹿とか、それに近しい動物がいるのかどうか知りたい。

 聞いてみよう。


(そういえばさ、この森って私たちと魚以外にどんな動物がいるの?)

『ここはねー、とくべつなもりだからみずでおよいでるやつと、おっきくてくろくてでかいのしかいないよ』

『くろいの、ぬしさまいたからさっきにげたよー』

(逃げたって……)


 やはり生態系としては私は上位の部類なのだろう。物理攻撃も魔法も扱えるのだから。

 そうなると、不用意に森から出ると危険とみなされて殺されるかもしれない。死ぬのは御免こうむりたいし、森に籠る方向で行こう。


 大きくて黒いお肉は逃げたみたいだし、魚が気絶から覚めないうちに食べる分だけ手早く処理をしてしまおう。

 レビテーションでコンテナから魚を三匹取り出し、草むらに並べる。昨日のように一匹ずつ処理をして終わったものから順に食べていく。

 まだ二回目だが、手際はかなり良くなってきた。

 コンテナに残った魚はそのままにしておき、新居が出来てから移送する予定だ。


(この魔法ってすぐに消えたりしない?)

『んーとねー、けっこうのこってるとおもうー』

『ぬしさまのまりょくがこもってるからだいじょうぶよ!』


 ノルとリアにお墨付きをいただいたので、この場を離れても大丈夫そうだ。

 さぁ、帰って建築の続きをしよう。






 拠点に戻ってきた。

 フィオとリアは巨木に向かって一目散に飛んでいき、周りを楽しそうに飛び回っている。


『ねぇねぇノル、ぬしさまとなにしてたのー?』

『おうちつくってたー』

『たのしそう!おれもてつだうー!』

『わたしもー!』


 そう言うと、精霊たちは声を揃えて『『『なにをすればいい(の)ー?』』』と聞いてきた。

 なんていい子たちなのだろう。涙が出そう。


(みんなありがとね。今はまだ大丈夫だから、後で手伝ってほしいな)

『わかったー』

『ぜったいだからねー』

『ぼくはぬしさまみはるー』


 ノル……。どんだけ信用ないんだ私。

 宣言通り、ノルは定位置から動かない。これは気を引き締めてやらねば。

 魔力量を自分で把握できるようになればいいのだろうが、感覚で掴むしかないので難しい。ステータスがあって、見られればいいのになぁと思ってしまう。


 一気に魔力を込めすぎないように気をつけながら体内で魔力を練り、作りたいものを頭の中でイメージする。

 こうして色んな魔法を使うようになって、わかったことがある。

 一つ目は、言葉(ワード)によって発動する魔法。具体的なイメージがなくとも、言葉(ワード)を媒介として発動する。頭の中で使いたい魔法を大まかにイメージすると、言葉(ワード)が存在する場合は脳裏に該当する言葉(ワード)が自然と浮かんでくる。魔法の質は、練り上げた魔力に依存し、エアカッターやレビテーションがそれにあたる。

 二つ目は、起こしたい現象や物事を詳細にイメージすることで具現化させる魔法。こちらには媒介となる言葉(ワード)が必要ない。どれだけ詳細なイメージができるかで魔法の質が変わる。自由度は高いけれど、相応の魔力を消費するため使いすぎると危険だ。ただ、こっちの魔法は規模を大きくしようが縮小しようが、消費魔力に変動がない。つまり、イメージに対して魔力が必要となる。初めて魔法を使おうとした時に魔力だけを扱おうとすると失敗し、イメージをした時にだけ魔力を扱えたのはそれが理由だ。

 イメージをしながら予め魔力を練る必要があり、魔力が必要量に達すると発動できる。言葉(ワード)で発動する魔法に比べると消費魔力が多いので使いすぎると危険だが、必要な魔力を事前に把握することができるため、ある程度の管理はできる。発動しようとした魔法の消費魔力が多すぎるのであれば、そのまま発動しなければいいのだ。そうすれば魔力は消費されず、練った魔力が残るので次の魔法の発動が短縮される。さらに、魔法発動のための媒体があれば消費魔力を減らすこともできる。


 この世界の魔法はものすごく便利にできているようだ。これだけ使い勝手がいいと、あちこちで争いが起きていそうで心配だ。

 目覚めたのが平穏な場所で本当に良かった。



 ある程度作りたいもののイメージが定まったので、頭の中で形を作っていく。床、壁、ドア、窓枠、天井など、外観の細部までイメージをする。

 最終的に完成したイメージは、コテージだ。

 ただしサイズは私が入れるサイズなので、通常の倍近くある。

 サイズの次は強度。コンクリートと変わらない強度はほしいので、それをイメージに組み込む。

 最後は媒体の指定だ。コテージと丸太をリンクさせてイメージを固め、魔力を練り上げる。消費量はそんなに多くなさそうだ。


 コテージの設置場所を定めて、魔法を発動させる。

 体内から魔力が抜けていくと同時に丸太を淡い光が包み込み、光の中でどんどん形を変えてイメージ通りに形成されていく。

 精霊たちと一緒に見守っていると、数分後、光が収まりコテージが完成した。


『おっきーい!!』

『すごーい』

『わー!』


 精霊たちはさっそくコテージに近づき、興奮気味にあちこち観察している。

 私自身ここまで上手くいくとは思っていなかったので感動だ。


 出来たてのコテージに近づき、ドアノブを捻る。

 ギィィィという音を立てながらゆっくりとドアが開いた。

 木独特の香りが鼻腔をくすぐる。

 中はゆったりと広く、ちょっとジャンプしたくらいなら天井にはぶつからない。家具も何もないので殺風景だが、かなり良い出来栄えだ。

 精霊たちも物珍しそうにあちこち観察しながら部屋の中を楽しそうに飛び回っている。


 コテージを気に入ったのか、フィオが魔法で部屋に花を飾り、リアとノルはフィオの手伝いをしている。

 そんな精霊たちを見ていると、精霊たちの部屋を作りたくなってきた。きっと喜んでくれるに違いない。


 そうと決まれば善は急げだ。

 食料や水は地下に保管場所を作る予定なので、部屋の半分くらいのスペースを使っても問題ない。

 寝るくらいにしか使わないのだから。


 こっそり外に出て、魔法で幹が太い木を四本根本から掘り起こす。今回は処理せずに、そのまま使う。コテージをなんちゃってツリーハウスに改築してしまおう。

 媒体はコテージと四本の巨木。

 その二つを融合させて新たなイメージを固めていく。

 四本の木を融合させてさらに巨大な木に変え、コテージを安置できる場所を作る。コテージを支えるように枝を伸ばし、縦、横、斜めと地震がきても動じないくらい頑丈に固定する。そこから上に枝を伸ばし、周りの木を参考に自然な形を作る。葉をそのまま茂らせ、コテージの窓の部分や入口付近だけ、違和感がない程度に枝葉を避ける。

 最後に、木の幹に螺旋状の階段をつける。ジャンプすれば問題なく家の中に入れるので必要ないのだが、見た目がオシャレな感じがするので飾りとしてつける。


 これで外観は完成だ。


 次は中も少し改造していく。

 コテージの右半分くらいに床扉を付け、そこから地下に向けて穴を作る。地下室は後でつくるので、道だけ通しておく。崩れたりしないように、構造強化も忘れない。

 それが終わったら、右の壁と木を融合させて、室内に枝葉の通り道を作る。

 根本に近い部分なので、枝も太くしっかりしている。これなら大丈夫そうだ。

 枝を螺旋状に天井まで伸ばし、その途中の枝分かれした場所にミニコテージを三つ作る。さらに、その中にミニチュアのイスとテーブル、ベッドを作る。

 全体のバランスを微調整し、あとは天井まで伸ばした枝を貫通させ、他の枝と同じように違和感ないように伸ばして葉を足して終わる。

 その際屋根にも手を加え、日が差すようにする。

 これでイメージは完成だ。

 大規模改築してしまったが、後悔はない。やりたくてやった。

 魔力消費量も思ったより多くなかったので、魔力を練り上げて発動させた。


 直後、巨木とコテージがうねうねと形を変えて合わさっていく。

 精霊たちが中にいたままだったので、突然の変化に慌てる声が聞こえてきた。注意喚起くらいはした方が良かったかもしれない。

 今更だけれど、一声かけておこう。


(みんなー! ちょっと改造しただけだからびっくりしないでねー!)

『わわっ、ぬしさま、これちょっとじゃないよー!!』

『あっちからきがはえてきたー!』

『わぁー!』


 うん。ごめん。

 結局、光が収まり改造が終わるまで精霊たちは慌てたり驚いたり時々感激したりしていた。

 今度からはなにかする前に言おう。


 ジャンプでツリーハウスに跳び乗り、ドアを開けて中に入る。

 フィオとノルがお花で飾り付けをしてくれていたのでそのままになるように避けて改造したつもりなのだが、ちゃんと出来ているか不安なのでチェックしていく。他にも全体のバランスや大きな問題がないかを調べる。


 そうしていると、落ち着いたフィオたちがこっちに向かってすごい勢いで飛んで来た。


『ぬしさま!ちっちゃいおうちがある!』

『あのおうちなぁに?』

『みっつある!!』


 怒られるかなぁと思ったが、改築によって新たに部屋に作られたミニコテージに気づいて、そっちが気になって仕方ないみたいだ。コテージのサイズや数から、自分たちのかもしれないと察してくれている。


(いろいろと助けてくれたお礼だよ! 使ってくれたら嬉しいな。)

『ぬしさまありがとう!!』

『ぬしさまだいすき』

『ぼくもだいすきー!』


 フィオたちがスリスリしてくる。あまりにもの可愛さに悶える。

 


(じゃあ、私はこれから地下室の方を作るから、みんなでこのコテージを住みやすくして欲しいな! 敷布団とかあればいいわね……。)

『しきぶとんってなぁに?』

(寝る時に、下に敷くもの、かな?)

『なんでもいいの?』

(チクチクしなくて、ふわふわして柔らかいものがいいかな)

『わかった!おれいってくる!』


 そう言うとフィオはそのまま天井の穴から何処かへと飛んで行った。口ぶりからして心当たりがあるのだろう。


『わたしたちはどうしよっか』

『んー……。ぼくはここをまもるけっかいつくるー』

『それならわたしもやくにたてる! いこっ、ノル!』

『うんー!』


 リアに引っ張られるようにしてノルも外に出て行く。

 精霊たちは行動が早い。

 私もさっさと地下室を作って完成させてしまおう。

 立派な我が家(ひきこもりハウス)を!


 精霊たちを見送り、地下へと通じる床扉を開けて真っ暗な穴の中へとためらないなく飛び降りた。


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