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4. 冒険者ギルド

 とりあえず今問題なのはふたつ、ひとつはダンジョンに入る方法、もうひとつはこの星の言語だ。ダンジョンに入るには何らかの手続きあるいは資格が必要かもしれない。調べたいがこの星の言語が分からないのでは効率が悪い。それにいつまでも念話で通していては目立ってしまうだろうし、念話は読み書きには使えない。誰かに言語に関する知識をコピーさせてもらえれば良いのだがこの星に知り合いは居ないし、無理やりコピーするのも気が引ける。とりあえずここにあるダンジョンの町で念話を使うのはやめておこう。超越者に注目されてはまずい。


 そう考えた私は最初の町にもどった。ここなら念話を使っても超越者に疑われる可能性は低いだろう。とりあえずこの町の冒険者ギルドで冒険者として登録しようと思う。ダンジョンに入るのに必要かどうか分からないが、ウェートレスさんの話ではダンジョンで沢山の冒険者が亡くなっているらしいから冒険者なら入れる可能性が高いと予測を立てた。

 と言う訳でこの町の冒険者ギルドに向かう。ここは大きな町だけあって冒険者ギルドの建物も立派だ。中に入ると右手に受付があり、左手はレストランになっている。なんだか昔読んだラノベの記載通りだ。受付は複数あるがどの受付にも人の列が出来ている。私は一番手前の列に並んだ。しばらく待って自分の番が来たので受付の女性に冒険者登録がしたい旨を念話で伝える。一瞬の間が空いた後営業スマイルを浮かべた受付嬢は私に向き直った。


「登録ですか? 冒険者登録は13歳以上でないと出来ないのですが、お嬢さんはお幾つでしょうか。」


<< 大丈夫です、13ですから。>>


「承知いたしました。登録は無料ですが、仮登録の後ギルドが指定する依頼をひとつこなしてからFクラス冒険者として正式登録となります。よろしいですか?」


<< はい >>


「それではお名前、年齢、出身地、得意な職種をお願いします。」


<< あの、職種と言うのは? >>


「剣士、槍使い、弓使い、薬師、魔法使い、拳闘士の6つの中から一番得意とするものをお選びください。」


<< 分かりました、名前はトモミ、年齢は13歳、出身地はワプス王国、職種は魔法使いでお願いします。>>


 受付嬢は私の回答を聞きながら慣れた手付きで用紙に記載してゆく。出身地は武器屋のおばさんが私の出身地と勘違いした王国の名前を言っておいた。それにしても念話で話しかけたのに動じないのはさすがはプロの受付だ。


「犯罪歴はありますか?」


<< いいえ。>>


「分かりました、質問は以上です。この記載内容で間違いなければこちらの水晶球に手を置いて読み上げてください。」


<< ごめんなさい。私はこの国の文字を読めません。>>


「失礼いたしました。それでは私が読み上げますので復唱をお願いします。」


<< 分かりました。ご配慮ありがとうございます。>>


 そういえば水晶球は魔道具かな? 魔力量の測定器だったらまずいかも


<< あの、この水晶球は? >>


「これは記載内容に虚偽が無いか確認するための魔道具です。虚偽の記載があると赤く光ります。」


 嘘発見器みたいなものか。少なくとも年齢と出身地は嘘をついている。光魔法で赤い光を止めてみるか....。私は慎重に水晶球に手を置き光魔法で水晶球から出てくる光を遮断しながら受付嬢の読み上げる内容を復唱した。


「はい、問題ありません。仮登録の冒険者証が出来上がるまでの間に別室で注意事項等についてご説明いたします。こちらへどうぞ。」


 と言うと受付嬢は窓口業務を別の人と交代し私を別室へと案内した。ふうっ、何とかなった様だ。部屋の中では冒険者として守るべきルールや注意事項、冒険者ギルドのサービス内容、クラスの説明があった。守るべきルールと言っても特に変わった物はない。トラブルがあった場合は冒険者同士で解決しようとせず必ずギルドに仲裁を求めることとか、掲示されている依頼の受諾は、掲示板の依頼書を先に受付まで持ってきたものが優先されるとかである。だが注意事項には特筆すべきものがあった。ダンジョン内では国やギルドの助けは当てに出来ないというものだ。ダンジョンは広大でかつ危険、国もギルドも安全を保障することは出来ない。入るのは危険を承知で自己責任でどうぞと言うことらしい。たとえ中で遭難しても、殺されそうになっても誰も助けに来てくれないとのこと。


<< 冒険者になればダンジョンに自由にダンジョンに入ることが出来るのですか? >>


「この支部ではダンジョン内での仕事は勧めてないの。毎年沢山の冒険者のがダンジョンで亡くなっているのよ。あなたの歳で入るなんて自殺しに行くようなものよ。身入りは少なくても安全な警護や薬草採取、町での雑用等の仕事を勧めるわ。それにダンジョンへは冒険者といえど単独での入場は許可されないの、入るには3人以上のチームでないといけない規則なのよ。トモミさんはFクラスからのスタートとなるし年齢からいっても、ダンジョンに入る様な実力者のグループから誘いがかかることはないと思った方が良いわよ。最低でもCクラスでないと。まずは地道に薬草採取等の仕事をこなしてクラスを上げていくことをお勧めするわ。」


 個室にはいったからかやや砕けた口調になった受付嬢(アンジェラさんと言うらしい)だが、親身になって心配してくれているのが分かる。ダンジョンに入るには冒険者になるだけでなく、冒険者のクラスを上げておく必要がありそうだ。


<< クラスを上げるにはどうすれば良いのですか? >>


「クラスを上げるにはふたつの方法がある。ひとつは各クラス毎に決められた依頼を所定の回数こなして実績を積むこと、もうひとつはギルドで行われる昇級試験に合格することよ。」


<< そうなんですね。早速ですが昇級試験をここで受けることはできますか? >>


 と聞いてみると、運よく今日の午後3時から実施予定とのこと。仮登録の課題をそれまでに達成すれば受験することは出来るらしい。仮登録の課題はスタウ草というこの近くの草原に生えている薬草50本を採取してくること。見本のスタウ草を見せてくれたので探査魔法を使えば楽勝と思い、これ幸いと申し込む。昇級試験の内容はそれぞれの職種の能力を計るらしい。剣士や槍使いなら専門のギルド職員との模擬戦闘になるが、魔法使いは練習場で的に向かって攻撃魔法を放つことで実力をみるとのこと。対人戦でないので安心した、相手に怪我をさせるのは嫌だからね。試験の結果どの階級に上がるかは試験管の判断に成るが、よほどのことがないと1ランク上がるにとどまり、しかも一度ランクがあがると最低一年は昇進試験を受けることが出来ない。これはこの支部独自の決まり事で、経験不足のままランクが上がりいい気になって難しい仕事を受けて死んでしまうことが無いようにとの配慮だそうだ。ここの支部の配慮に反して申し訳ないが、それなら他の支部に行けば再度昇進試験を受けることは可能な訳だ。ダンジョンの周辺は冒険者の町になっており、そこにも別の支部があるとのことなので、ランクが足りなければそこで再度受験することにしよう。

 ついでにアンジェラさんにダンジョンに入る時に必要な装備について確認する。


「先ほども言った様に、うちの支部としてはダンジョンに行くのは勧めて居ないんだけどね。」


 アンジェラさんはムッとした様だが、こまごまと必要な備品について教えてくれた。親切な人な様だ。「ごめんね」と心の中で謝っておく。ダンジョンの中は暗いと思いきや壁が発光しているところが多く、光源としてのランプや魔道具の発光球はあった方が良いが多くは必要ないとのこと。それより何日間かダンジョンに入るのであれば寝る時に寒さを防げる厚めのローブ、十分な保存食と水、モンスターの眼を一時的に眩ませるための閃光玉が重要と言う。それと魔法使いであっても護身用の短剣は必須らしい。


「魔法を使うには精神集中に時間が掛かるからね、突然襲われたら剣の方が早いのよ。」


 と言う。まあ、私には当てはまらないかな。たぶん慣れない私が剣を抜くより魔法を使う方がずっと早い。


「それと、くれぐれも単独行動はしないこと。ダンジョン内でひとりで行動するなんて死にに行く様な物よ。それと仲間は慎重に選ぶのよ、特に女性の場合は中で何をされるか分からいんだから。」


<< 分かりました、ありがとうございます。>>


 アンジェラさんは色々と心配してくれている、いい人だな。嘘をついていると思うと心が痛む。


 その後仮登録の冒険者証を受け取り、さっそく課題のスタウ草の採取に草原に瞬間移動する。草原には雑多な草だけでなくまばらに灌木も生えておりかなり広い。そのまま森林地帯に繋がっている様だ。早速探査魔法でスタウ草を探す。ここから500メートルくらい離れた所に群生地があるようだ。歩いていると男女のふたり組が私と同じように薬草を探しいてるのに気付いた。


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