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閑話-4 グーラル視点

この小説は今回の投稿で完結となります。いままでお読みいただき誠にありがとうございました。

 俺はグーラル、トモミ様の銀河でA級神をすることになった神だ。もちろんその前は下級神、年齢は10億歳くらいで神としては中堅といったところか。


 A級神と呼ばれるなんて10億年も生きていると色々なことが起きる物だと思う。もっとも10億年前俺が神として生まれ変わったときの驚きにくらべれば何てことはない。なにせ身体が惑星になったなのだ。まあ前世で神と親しくしていたから、ああそういうことかと納得はしたものの、次に生まれ変わった時に自分が神に成っているなんて考えてもいなかった。どうやら俺の魂は前世の時点で神の手前まで進化していたらしい。前世でも結構強力な魔法が使えたのだ。もちろん人族としては強力という意味だ。俺の居た惑星では人間族と魔族の中が悪くしょっちゅう戦争をしていた。強力な攻撃魔法が使える俺は、王や貴族たちに勇者とか呼ばれてうまくおだてられ戦争の道具として多くの戦いに出向かされたものだ。そして俺の参戦は魔族に大きな打撃を与え人間族は戦争に勝利した。今となっては恥ずかしい思い出だ。戦っている最中は魔族が悪で戦争に勝てばすべての問題が解決すると信じていたが、良く調べてみれば魔族が悪と断定する根拠は何も見つからなかったのだ。魔族もひどいことをしていたが、人間族だって負けず劣らずだった。


 戦争が終わってからそのことに気付き後悔した俺は、そのまま姿を隠して隠遁生活をしていた。その惑星の神と知り合ったのはそのころだ。カルジュという名の女神だった。山の中でひとり生活を送っていた俺に向こうから話しかけて来たのだ。最初は驚いたが話し相手に飢えていたこともあり毎日色々と話をした。今思えばカルジュに恋をしていたのかもしれない。念話だけで姿を見せないカルジュに俺が姿を見せて欲しいと頼んだが、それに対する回答は神の身体は惑星そのものであり、おれは毎日見ている風景はカルジュの身体の一部だというものだった(女性の身体をジロジロ見る物じゃないわよと冗談を言ってたっけ)。惑星が身体なんて不自由じゃないかと言う俺に、カルジュはそうでもないという。惑星上のことであれば魔法で大抵のことは出来るらしい。それに人族が高度な社会を築いて行く様に見守り導くのが神の役目であり楽しみでもあるのだとの事。もっとも、物を食べたり、眠ったり、家庭をもったり、子供を育てたりという人族だったら当たり前のことが出来ないのは残念とも言っていたな。

 神に成ったものの最初俺の惑星には人族どころか生物がいなかった。何をしたら良いのか分からない俺にメッグスと名乗る神が話しかけて来た。彼は俺の様な新米の神を指導するのが仕事との事だった。メッグスが言うには惑星を生物が住むのに適した環境に整え、魂の器として最初の生物の身体を用意すれば、魂がひとりでに生物の身体に入り増えて行くらしい。俺はメッグスに言われるままに、惑星の環境を整え、まずは海に微生物から軟体類、魚類、両生類、藻や海藻までさまざまな生物の身体を作りだした。するとどこからか魂がやってきて生物の身体に入り活動を始めたのだ。魂は常に宇宙を巡っており、その魂の進化の度合いに合わせて適切な生物の身体に入り、その生物が死ぬとまた宇宙を巡る流れに戻って行くという。面白くなった俺はさらに陸の生物として様々な植物や鳥類、両生類、爬虫類、哺乳類と作り、最後に人族を創造した。神を除き一番進化した魂が入るのが人族の身体らしい。最初の人族はひ弱で俺が見てないとすぐに死んでしまった。仕方なく俺は色々と世話を焼きつづけた。人族が辛うじて文明と呼べるものを作り出したときは歓喜したものだ。いつの間にかカルジュと同じ様に人族の文明が発達して行くのを見るのが楽しみになっていた。

 メッグスは神々の社会についても教えてくれた。まず俺やカルジュの様に惑星を身体としている神が下級神。メッグスは中級神で銀河の一部が身体らしい。そしてひとつの銀河全体を身体としているのが上級神だそうだ。そして上級神の更に上には超越者と呼ばれる神が居ることも教えてくれた。なんと超越者は人族の身体を持っているとの事。

 問題が起ったのはそれから何億年も経ってからだ。突然メッグスが行方不明になったのだ。それと同時に超越者の悪い噂を聞くようになった。カルジュから念話で「超越者について調査してみる」との連絡を貰ったがそれっきりカルジュも行方不明になった。どうやら超越者について調べる動きを見せた神々が軒並み行方不明になっているらしい。おれは怒った。疑いもなく超越者は悪だ! だがひとりでも超越者に立ち向かう覚悟を決めた俺の元にひとりの人族が他の神から送られてきた。内密の話を伝えに来たと言う。聞けば超越者に一泡吹かせる計画があるとのこと、超越者は俺達の宇宙よりひとつ上の次元から来ているので、更に下の次元には来ることが出来ない。これを利用して銀河ごと下位次元に逃亡する計画が進んでいるらしい。人族が来たのはこの計画の承認を求めることと、超越者の目を引く行動を慎んで欲しいという願いを伝えるためだった。仕方が無い、俺もその計画に乗ることにした。悔しかったがひとりで超越者に立ち向かっても自己満足にしかならず、勝ち目がないことは分かっていた。計画の立案者はリリという別の銀河の上級神らしい。まずはリリの銀河が下位次元への移動を試しうまく行けば他の銀河も一斉に行動を起こすことになっている。超越者の隙を突く必要があり実行は遅れに遅れたが、ある日ついに決行された。リリからの下位次元への移動成功の連絡を受け、すべての銀河が一斉に行動を起こす。もちろん俺達の銀河もだ。結果下位次元への退避は成功。ひとまずの安息を得た。


 だがそれから1万年ほど経ったとき、突然俺達の銀河に超越者の皇帝ガープがやって来た。かつて我々の銀河を支配していた超越者とは別物らしい。ガープは上級神、中級神のすべての神を消し己の力とした。あっと言う間だった。後に残ったのは惑星から離れられない下級神のみ。惑星から動けない俺達は個々にガープに対抗するしかない。勝ち目はないがせめてもの抵抗をしてやると心に決めた俺。だがガープは下級神には手を出そうとしなかった。なぜ? という疑問はすぐに溶けた。惑星に生まれてくる人族の子供が激減したのだ。宇宙空間にある魂の流れからガープが魂を強奪していることは明らかだった。少しでも長く魂の力を奪い続けるために下級神を人族の生存環境を守る装置と見なして放置しているのだ。俺のはらわたは煮えくり返った。俺達が心を籠めて育てた人族の社会が絶滅の危機に瀕しているのだ。だが、惑星から動けない俺達下級神は向うがやってこない限り攻撃することすら出来ない。諦めかけた時ライルがやって来た。なんと人族の姿を手に入れた下級神だった。ライルは惑星を巡りながらアバターに魂を移して自由動ける身体になる方法を伝授してくれていた。リリ様の銀河から来た神トモミに教えてもらったという。もちろん俺は一も二も無くライルに教えを乞うた。超越者に反撃するための唯一の手段だった。ライルが警告する失敗の可能性など考えもしなかった。幸いガープはこの時期銀河を不在にしていた。ライルの話ではトモミを追ってどこかへ去ったという。トモミには悪いがチャンスだ、ガープが居れば必ず下級神の動きを邪魔していただろうから。

 こうして約1000人程の下級神が自由に動ける様になった頃、光速の壁の排除に成功した。排除できたのは銀河とその周辺のみだが、これでタイムロスなしでの会話や移動が可能になった。これによりアバターに魂を移して自由に動き回る方法の伝授もガープに対抗するための作戦会議も効率的に行えるようになったのだ。そしてチャンスはやって来た、リリ様の銀河から来た神トモミが銀河の近くでガープと戦っているとの知らせが入った。その頃までには10万まで増えていた俺達アバターに魂を移した神はガープに一矢報いるべく銀河を後にした。この頃には俺とライルが神々のリーダーという立場になっていた。

 現場に転移して驚いた。たったひとりの神がガープと対等に渡り合っていた。いやガープを圧している様にも見える。すでにガープは身体を破壊され必死に再生させているところだったのだ。俺達は一斉に再生中のガープの身体に攻撃を開始した。千載一隅のチャンスだ。俺達の参戦で戦いの流れは完全にこちらに傾き、最後はトモミがガープの魂の力を吸収しガープを魂の種に戻す形で決着がついた。神々から歓声が上がったが俺は一末の不安を持った。トモミは超越者と同じように魂の力を自らに吸い取ったのだ。本当にこいつは神なのか? 超越者の回し者ではないかと疑った。今となっては笑い話だが、当時は真剣に疑ったものだ。だがおれの心配は杞憂だった、トモミはその後すぐに自分の銀河に戻って行ったのだから。超越者の回し者ならば神々に乞われるままに上級神としてこの銀河に居座っただろう。


 まあ、結局は神々の代表としてトモミに俺達の銀河の上級神になって欲しいと嘆願に行ったライルの働きにより、こちらの銀河の最高神に成ってくれたのだが。それと仕え初めて分かった。こいつは長所もあるが欠点もある普通の神だ、頭は悪いが性格は良い。上司としては悪くないかもしれない。欠点は俺達がカバーすれば良いのだ。


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