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18. 終結

 私の最大級の破壊魔法が空間を揺らす。さすがのガープの防御結界も打ち破りガープの身体は再び消滅した。


<< 無駄なことを...。>>


 とガープの声がして再び身体の再生が始まる。今度は間髪を入れず破壊魔法を放つ。こうなったら根気比べだ。私はガープの身体が防御結界を張れるまで回復する前に破壊魔法を放なち続けた。


<< いいぞ、ガープの魂の力がさっきより小さくなっている。このまま続けるんだ。>>


 とハルちゃんが言う。そういえば再生のスピードが若干遅くなったような気がする。ようし! と意気込んだが、次の瞬間私は息を飲むことになる。目の前で10体の身体が再生を始めたのだ。それだけではない、私の背面でも同じく10体程度の身体が再生を始めている。すべてを破壊するには通常の破壊魔法では間に合わない。私は破壊魔法を私の周り360度全面に放った。当然破壊力はピンポイントの魔法より劣るが、防御結界を張る前なら十分なはずだ。だがガープの身体は破壊しても破壊しても次々と再生を始める。数もどんどん増え続けている、今では軽く100体を越えているだろう。どれでも良いから私の攻撃を逃れた身体を使うつもりなのだろう。


 再生するガープの身体が1000体を越えたあたりで私の処理能力の限界を超える。破壊魔法を360度全面に放出しているためにどうしても威力が落ちる。何体もの身体が重なると背面の物が完全には破壊出来ない。ついに防御結界が発生して私の魔法が弾かれた。ここまでか、と思った瞬間私の周りのあらゆる方向からガープに向かって一斉に破壊魔法が放たれた。魔法の威力は大きくはないが数えきれないほど数が多い。あっと言う間にガープの再生途中の身体はすべて消滅した。防御結界を発生していた身体も数発の破壊魔法を同時に受け消滅している。


<< トモミ殿、ラルフじゃ。助太刀に参ったぞ。>>


 私の傍に美少年が転移する。ラルフさん???


<< ラルフさん! アバターに魂を移すことに成功したのですか??? >>


<< そうじゃ、すべてトモミ殿のご教授のお蔭、他の者もすべて我らの銀河の下級神達じゃ。超越者に一矢報いることができると皆喜んでおる。>>


<< でもお別れして直ぐなのに早すぎませんか? >>


<< 分かれて直ぐ? 何を言っておる。トモミ殿と会ってから30年は経っておるぞ...。>>


 と言われて思い当った。光速の壁だ。私達の銀河がある次元ではリリ様が撤廃したが、この元の次元では光速の壁の制限はそのまま残っているのだ。光速の壁とはあらゆるものは光の速度を超えて移動できないという制約である。だが瞬間移動は例外だ、軽く光速を越える。しかし光速の壁の影響は瞬間移動についても発生する。瞬間移動すると周りと時間の流れがずれるのだ。移動距離が短い場合は誤差範囲だが、長距離の瞬間移動の場合は無視できない影響がでる。本人には瞬時に移動したと思えるが、着いてみれば周りでは時間が経過しているのだ。時間経過の長さは瞬間移動の距離の2乗に比例する。同じ銀河内の惑星間の移動でも数日経過していたのだ。今回私がガープに追われて逃げ回った距離を考えれば30年経過していても不思議ではない! 30年間の間にラルフさん達はアバターに魂を移して魔法を使う訓練をしていたということか...。


 想定外だが、今はありがたい。数には数で対応することでガープの再生を抑え込むことに成功した。その時ガープの念話が響き渡った。


<< ライネル!!!! 何の真似だ? 裏切り者! >>


 ガープの念話が発せられると同時にライネルさんが現れる。


<< 裏切者とは心外ですね。私はラース様の部下の子孫。あなたとは関係ありません。それとあなたの部下達を呼んでも来ませんよ。この戦いに手出しをしないと確約してもらっていますから。>>


<< それと、お察しのとおりあなたが魂だけで逃げ出せない様に結界を張っているのは私です。ここでラース様の無念を晴らさせていただきます。>>


<< おのれ! おのれ! おのれ! 下賤な民の分際で皇帝に刃向うか。恥を知れ! >>


 なんとライネルさんまで参戦してくれていた様だ。彼なら魂だけに成ったガープを滅する方法を知っているかもしれない。


<< ライネルさん、ガープの魂を破壊する方法はありますか? >>


<< トモミ殿、魂を破壊することはできません。だが種に戻す方法はあります。あなたがガープの魂の力を奪い取るのです。方法はお教えします。魂の力を奪うには相手より魔力が強くなければならない。ここに居る中でそれが出来るのはトモミ殿だけです。>>


 ライネルさんはそう言うと同時に私の頭に魂から力を奪う方法を伝えてきた。いや、そんな方法は知りたくなかった! が、ガープを倒すのはそれしかなさそうだ。でも私の魔力がガープより強い? そんな馬鹿な!


<< トモミ、ガープの魂は力を使い過ぎて急速に弱まっている。今ならトモミの方が強い! >>


 とハルちゃんが言う。状況を察したのかガープが喚く。


<< やめろ! 我は皇帝だぞ! 無礼者め! 触るな~~~>>


 だが私はガープの叫びを無視してライネルさんに教えられた方法でガープの魂の力を奪い始める。ガープの魂と私の魂の力比べだ。私の方がわずかに残っている魔力が強いとはいえ、ほとんど拮抗している。長い長い綱引き状態が続いたがついにガープが屈服した。彼の魂の力が一気に私に流れ込む。それと同時に彼の記憶も流れ込んで来た。ある惑星の小国に生まれた王子の野望と挫折の物語。その内容に私は絶句した、宮廷に蠢く陰謀。唯一彼を愛してくれた恋人とその死。復讐のために力を得る方法を探し出す命懸けの旅。ラースさんとの出会い。そして復讐を遂げた後の空虚感。そしてその後...胸に突き刺さるガープの記憶を私は涙しながら受け止めた。それは決して語られることの無かった物語。もはや知る人の無い物語だ。私も語るのは止めておこう。


 ガープの魂は今までに獲得した力、性質、記憶のすべてを亡くした魂の種となり、どこかで生まれ変わるべく飛び立っていった。途端に周りで神々の歓声が響き渡る。


<< やったぞ!!!!!!! 超越者を倒した!!!!!!! これでこの宇宙は救われるぞ!!!!!! >>


 という声がいつまでも続く。


<< トモミ殿には感謝のしようもござらんよ。どうじゃこのままここに残り我らの銀河の上級神になってはいただけぬか? >>


 驚いたことに周りの神々からも賛同する声が湧きあがる。


<< はい??? ライルさん、早まってはいけません。私に上級神が務まるわけがないです。きっともっと適任な方がいます。>>


<< いや、間違いない。トモミ殿以上の適任者はおられぬよ。だが確かに早まった。我の一存では決められぬな。いずれあらためてお願いに上がる。>>


<< ラ、ライネルさん帰りましょう。>>


 と私は焦って言う。


<< トモミ殿、ひとつお願いがある。ガープの元側近達を一緒に連れて行ってもらえないだろうか。彼らと約束したのだ、ガープの元を離れるなら皆が平和に暮らせる世界に連れて行くと。大丈夫だ、彼らはガープから力を分け与えられていただけで、他人の魂の力を奪う方法は知らない。トップシークレットだったからな。ガープが滅んだ今となっては知っているのは私とトモミ殿だけとなった。>>


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