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蝉から夏  作者: 灼無戯
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ゲルギオ

竹とんぼ飛んだ。壊れて消えた。


容赦なくジリジリと照りつける日差し。アスファルトもところどころ溶け出しているようだった。

一歩、また一歩と歩く度に、靴底がぬちゃっとして、非常に不快だった。

風もなく、ここ数日は雨も降っていない。

ただただ容赦なく照りつける日差しだけがあった。


海に向かおう。



潮風が目にしみる。

浜辺を少し歩くと、遠浅の海のようで数キロ式の海の上を歩く少年が二人。

よくぞ、そこまで走り回れる、と思うほどに元気で、またそれがあらからの年月を思い起こさせる。

懐かしい、実に懐かしい思い出ではあるものの、思い出したい類のものではなかった。

イメージで言えば、何もないということだ。


「無」という状態について考えていた。

いや、考えてもいなかった。いや、考えることも考えられなかった。

恐ろしく曖昧な、そして虚無的な何かだが、特段寂しさや、怖れは感じていなかった。

それが、「死」という感覚に近いのかもしれない。

停止、あるいは停滞。それが時間的な関数を描く。

ある一定の点、またそこからの距離は「無」であるならば、いくら動こうとしても動けないはずだ。


はたまた、消滅なのかもしれないが、それはここで語ることはできないだろう。


磯の臭いがする。ふと、上を見上げた。

入道雲だ。白い。透明とはどんな雲なのだろうか。


年がら年中、海について考えていた。

一昨年の夏もそうだ。

茶色と青と白と透明でできていた。

それが過不足のない状態だとは思わなかった。

足らない。そう、何かが足らないという感覚が常に自分の意識の奥底に眠っているような気がする。


吐き気が、するほど、むせ返るほどの暑さ。

アスファルトは溶けきったの、かもしれない。

長い道のり。終わらない旅をした。


海辺はまだ遠い。

焼け焦げだような廃屋の中で流れる時間。

たしかに何かを待っていたのかもしれない。


そう言うときこそ、ゆっくりと寝て起きて。また明日からの生活に耐えてゆかなければならない。



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