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【投稿】異世界転生なんてろくでもない【停止中】  作者: 理緒
第二章 友と戦い、朋と笑う
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139.カルルカンの巣

 テッラは冒険者ギルドへと冒険者登録の為に出かけて行った。

 俺に対してある意味で依存していて子犬のように後ろをついて来るテッラだったが、流石に数年経てば俺から離れて行動することくらい出来るようになっている。

 だからこそ必要なことをする際にはこうして別行動を取ることが出来るようになっていた。

 そうしたテッラの成長に少しだけ感動したのは秘密にしておこう。

 俺たちはカルルカンを探して自分の記憶を頼りにひとまずはそよかぜの丘へと向かった。

 確か丘にいるカルルカンに子供が出来たはず、と思い出したからだ。


「カルルカンさんは……まだ主様に気づいていないみたいですね」


「俺に気づけばだいたい寄ってくるからな……でも、話を聞くためには気づいてもらわないといけないな」


「そこで話を聞く、という考えを実行出来るのは主様だけだと思えますね……」


 事実として俺だけだと思う。他にいるとすればイシュタリアだろうか。いや、出来ないか。


「かもな。そんな俺のおかげでカルルカンの巣に行けるんだ。良かっただろ?」


「はい!主様がカルルカンさんとお話出来て、本当に良かったと思います!でも出来ることなら私もカルルカンさんとお話がしてみたいです!」


「それは難しいと思うけどな」


 カルルカンのこととなるといつもより気合が入るシャロの言葉を聞いて、小さく笑みを零してから一歩前に出る。

 そして軽く手を数回叩くとその音に反応したカルルカンが数匹顔を上げて俺の方を見た。

 俺の姿を確認したカルルカンは一泊置いて俺の下へと駆け寄って来るが相変わらず見事なまでの疾走で、頭突きでもされるのではないかと思ってしまう。


「よし、止まれ!」


 だから止まるように言うのだが、これもまたいつも通り俺の目の前で器用に止まったカルルカンはすぐに撫でるようにと催促してくる。

 催促してこないカルルカンもいるが、自然な動きで俺の周りを固めている。本当に、いつも通りの動きだ。


「むー……やっぱりカルルカンさんは主様にまっしぐら、ですね」


「あぁ、いつものことだな」


 シャロにそう返してからカルルカンを撫でながら聞きたいことを聞き出すことにした。


「なぁ、子供が生まれたのはこの辺りのカルルカンだよな?」


 この辺りにいるカルルカンが子供を産んだはずだ。と思いながら確認の為に聞けばカルルカンたちはシャロの方を見てから一鳴きした。


「えっと……主様、カルルカンさんたちは何と言ったのですか?」


「この子に教えても大丈夫なのか、だとさ。あぁ、大丈夫だから教えてくれ」


「仕方のないことだと思いますけど、信用されていませんね……」


「元々警戒心の強い生き物だからな。こうして傍にいるだけでも相当珍しいことだぞ?」


「それはわかっていますけど……」


 それでも納得がいかない。もしくは羨ましくて仕方がない。という様子のシャロはカルルカンたちに気づかれないようにじわじわと距離を詰めていた。

 とはいえ野生動物であるカルルカンにとってはその程度のことを気づけないわけがない。


「…………私はまだ、一人ではカルルカンさんを撫でることが出来ないのですね……!」


 自分はまだまだだ。というような反応をしているが、俺が特殊なだけで普通は誰もカルルカンに触れることは出来ない。

 そのことをちゃんと理解して、本当に少しずつカルルカンたちに認められるしかないのだが、シャロにはまだそこまで考える余裕はないらしい。

 それだけカルルカンと仲良くなりたい、ということだろうか。


「カルルカンの警戒心の強さを考えれば当然だな」


 シャロにそう言っている間にもカルルカンたちは思い思いに鳴き声を上げて俺の質問への答えを口にしていた。

 やはりこの丘にいるカルルカンが子供を産んだとのことで、今はある程度大きくなるまでは巣で育てているらしい。


「そうか……案内を頼めるか?」


 俺の言葉にカルルカンは一鳴きして応え、俺たちに背を向けて歩き始めた。

 カルルカンの後に続けばシャロも俺の隣へとやってきて一緒に歩く。

 その後ろをカルルカンたちがついて来るので傍から見るとなかなかの大移動となっていたのではないだろうか。


 暫くカルルカンについて歩き、丘にいたはずなのにこもれびの森の奥地へとやって来ていた。

 結局、丘や森、平原といったようにバラバラの場所を好んでいるとしても巣はこうした森の奥に作るのがカルルカンだ。


「この森には何度か足を運んでいますけど……カルルカンさんの巣らしき場所は見たことがありませんね……」


「それなりには奥に巣を作るからな。それにカルルカンもイシュタリアに祝福されてる存在で、巣なんかは人に感知され難くなってるんだ」


「そうなのですか!?」


「あぁ、だから俺もこうしてカルルカンの後をついて行くようにしてる。とはいえ、本気で探そうと思えば出来ないことはないけどな」


 探そうと思えば手はある。ただ、それは使うべきではない手だ。


「むぅ……主様には秘密が多すぎるような気がしますね……」


「自覚はある。ただ……」


「ただ、どうかしたのですか?」


 秘密にしているのか、口にしていないだけなのか。俺はスラム街の出身だと伝えているがシャロはエルフの里出身という当たり前のことしかわかっていない。

 家族構成が気になる、というわけではないがシャロについての話はほとんど聞いたことがないのが気になっている。

 まぁ、だからと言って聞き出そうとは思わない。いつかシャロから話をしてくれると思いたいからだ。


「いや、何でもない。少し気になることがあっただけだ」


「気になること、ですか……」


「本当に少し気になった、って程度だからシャロは気にしなくて良いぞ。それよりもそろそろカルルカンの巣に着くんじゃないか?」


「え?ほ、本当ですか?」


 カルルカンの巣が近いのではないか、と俺が口にするとシャロは目に見えてそわそわし始めた。

 そして先頭を歩くカルルカンの行く先に巣があるのだろうとちょっと背伸びをして前の方を見ようとしたり、もしかすると何処かにカルルカンの姿があるのではないかときょろきょろと辺りを見渡したりしていた。

 そんなシャロの姿を見たカルルカンが一鳴きすると、先頭を歩いていたカルルカンも同じように一鳴きして返事を返していた。


「もうすぐ着くみたいだな」


「もうすぐですか……仔カルルカンさんは、きっとすっごく可愛いのでしょうね……!」


 カルルカンの子供というのはたぶん、誰も見たことがないのではないか、と思ってしまう。

 シャロがそのことを理解しているかはわからないが、わざわざ言うだけ意味がないのかもしれない。

 シャロにとっては誰も見たことはないはずのカルルカンの子供が見れるからこんなにも胸を躍らせているのではなく、単純にカルルカンの子供のことが気になって仕方がないからだ。

 であるならばわざわざ小難しくなりそうな話をする必要は何処にもない。


 そんなことを考えながらシャロと共にカルルカンの後をついて歩いていると突如として開けた空間が現れた。

 そこにはカルルカンたちが座っていたり、横になっていたり、他のカルルカンよりも小さな体をしていて角も生え切っていない子供のカルルカンが複数で集まって飛び跳ねながら遊んでいたりと、いつも以上に自由な姿を見せていた。


「あ、主様!主様!!あれ!あれ見てください!!」


 目をキラキラと輝かせて、大喜びでカルルカンの子供のことをつい指差してしまったというようなシャロの手をそっと降ろして口を開く。


「カルルカンの子供が見えれ嬉しいのはわかるけど、指差すのはやめような」


「あ、はい。すいません……で、でも、仔カルルカンさんですよ!仔カルルカンさん!」


「そうだな、カルルカンの子供だな」


 シャロは非常に興奮した様子なので気づいていないが、シャロが堪らずといった様子で声を挙げたのを聞いてカルルカンたちが警戒してしまっている。

 親と思しきカルルカンの後ろに隠れる子供や、何かあればシャロを排除しようと身構えるカルルカン。威嚇するように頭を振り、一歩でも近づけばこの角で刺し貫いてやる。と脅しているようだった。

 だがシャロはそれに気づかない。というよりも気づけない。

 普段であれば気づくことも出来たかもしれないが、今のシャロは非常に興奮しているので冷静に物が見えていない。

 このままでは不味いと思うのでシャロの一歩前に出てカルルカンたちの注目を集める。


「主様?」


 カルルカンたちは俺の姿を見て一瞬動きを止め、それからそれぞれが好き勝手に鳴き声を上げ始めた。

 その内容は俺に対して、その子は何者なのか、危ない子なら容赦なくズドンとやるぞ、可愛い我が子を見てくれ、撫でてもらっても良いですか、などなど。

 とにかく平常運転といえば平常運転の状態だった。


「とりあえず、お前たちが警戒してるこの子は危なくないから安心してくれ。それと、俺たちは産まれたっていう子供を見に来たんだ」


 俺の言葉を受けて、シャロに対しての威嚇はやめたが疑いの眼差しは変わらず、俺に対してはトコトコと歩いて近寄ってくるカルルカンたち。

 シャロはそうした状況になって漸く周りを冷静に見ることが出来たようで、オロオロとしていた。


「あ、あの、主様……」


「シャロが気づいていないだけで、あんまり良くない状況だったな」


「うっ……も、もう少し、落ち着いて行動します……」


「あぁ、そうしてくれ。はしゃぐ気持ちも理解出来ないわけじゃないけど、カルルカンたちが驚くからな」


「はい……あの、今から気を付ければ、仔カルルカンさんと遊んだり、撫でたり出来るでしょうか……?」


「あー……そうだな……たぶん、シャロ次第だとは思うけど……」


「そうですか……わかりました。私、頑張ります!」


「あ、あぁ……その、何だ。頑張れよ……?」


 何を頑張るというのかわからないが、とりあえず応援しておく。

 シャロは非常にやる気になっているので、そのやる気に水を差さないように、という気遣いだ。もしくは曖昧に受け流しただけ、ともいう。

 何にしてもカルルカンたちはシャロを遠巻きに警戒しているのでこの状況をどうにかしなければならないだろう。


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