表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【実習】看護学生の奮闘記

嘘つきな赤ちゃん天使

作者: 菜須よつ葉

『菜須さん、けんた君の検査結果を看護記録で確認して』


指導看護師から指示が出ました。言われた通り看護記録に目を通す。横に外泊許可「不可」の文字。


お家に帰りたかったんだ。と何気なく見た生年月日。あっ、お誕生日だ。


誕生日に合わせて外泊許可の申請をしていた様子。きっと「検査結果」が良かったら、お家でお誕生日をお祝いしてもらいたかったんだろう。と思うと悲しい気持ちになりました。


どうして指導看護師は担当でもない、けんた君の看護記録を見なさいと言ったのか正直言うと謎でした。看護学生は、その日自分の担当する患者様の看護記録を見て把握する事はあっても、担当外の患者様の看護記録は見ることも触ることもしないからです。


きっと私の顔に出ていたんでしょう。指導看護師さんが


『何か、不思議そうな表情ね。担当外だもんね。理由は直ぐにわかるわよ』


そう教えられました。答えは教えてもらえませんでした。臨床でしか味わえない感覚と実践。教科書通りにいかない臨床現場。看護学生にとってインターンシップは臨地実習とは違った、別のことを学べる大切な機会でした。


指導看護師の謎の指示の答えを直ぐに知る事になりました。


ナースステーションを出て各病室をラウンド(見回り)してくるように言われました。各病室を見渡し声をかけたりかけられたりしました。指導看護師は、私の少し後ろから様子を見守って下さっています。(何か困った事があっても頼れるから私は嫌いではない。人によっては緊張すると言う人も居るようです)


『新しい看護師さんだぁ』

『看護師さん 誰の担当なの?』

『明日も来る?』


等と質問や言葉がけにも必ず返事をしているけど、この病室だけに居るわけにはいかないので、うまく切り上げる術を身に付けさせて下さっているんだと思い、その思いに応えるべく頑張る看護学生よつ葉。


ある病室をラウンド中に


『ねぇねぇ看護師さん! ボクお家に帰れる?』


と質問を受けました。ネームプレートで名前と主治医を確認する。あっ、けんた君だぁ。後ろを振り返ると指導看護師が私を厳しく見ているのが見てとれました。私が伝える事ではない。と思いましたので、けんた君には


『けんた君、おはよう。朝の回診の時に主治医の先生に確認してみようね』


と伝えました。けんた君は、回診いつ?もうすぐ? と外泊許可の事を聞きたくて仕方ない様子に申し訳ない気持ちになる。心の中で「ごめんね」と呟きました。


こうして色々学んで看護師になっていく看護学生。


患者様に嘘をついたよつ葉。


指導看護師さんに


『あの病室に行ったら聞かれるだろうなぁ……って思っていたの。菜須さんがどう対処するのか見たかったのよ。完璧でした。以前に担当した学生は、自分で話してしまったり、あからさまな嘘をついたりと目に余る行動をする事が多い中で菜須さん、あなたは患者さんに嘘をつくこともなく知っていることも顔に出さず回診で主治医に聞こうと説得したことは素晴らしいこと。自分の行動に自信を持って望みなさい。しっかりフォローするから』


と言って下さいました。前回小児外科病棟で失敗しているだけに嬉しかったです。


臨床でたくさんの事を学ばせていただきました。この経験を応用臨地実習で活かしていきたいと思います。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 嘘は全て悪いわけではありません。 分かっていてもつかなければいけない事も、多々あります。 それは看護師だけでなく、働く人間すべてに言えます。 納得はできないかもしれませんが、頑張って乗り…
[一言] こんばんは、なななんです。 素晴らしい対応だったと思います。なかなかできる事ではないと思います。 医療現場は大変な事も多いと思いますが、素敵な資質をお持ちなので頑張って頂きたいです。 指導さ…
[良い点] 試され続ける日々なのですね。 大変だー。 頑張れ、未来のナース!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ