6件目:王都へ
ワイバーンの件で俺はマイスとどうしても話さなければいかん…。
やだ、超面倒くさい…。状況が状況だったし色々有耶無耶に出来なかったし…。
あー…ハイパー面倒くさいなぁ…。
「…僕は僕で話したんだ…まさか、ルシオは今更隠したりしないよね?」
俺が腐界に侵食されてるのかどうかは定かではないが、何だかマイスの
言い方とかが浮気を追求しようとする女みたいに見える…うぉぇ…何か吐きそう。
「………」
「…ルシオ…」
その表情やめい。ちっちゃい頃は女の子みたいでマジでギョッとしたんだ。
「………仕方ない…」
ヤバそうなのはぼかしまくって何かを一つぶっちゃけてやり過ごすぜ。
<Maisuron Side>
普段は多くを語らないルシオが語ったことは中々に衝撃的だった。
「つまり…君が見せた能力は…そういうことなのかい?」
「断定はできん」
やはりルシオは僕と同じ…いや非常に近い境遇の者だった。彼は
得体が知れないがこの世界とは別な世界からの神の加護を受けており、
先日の件で完全に覚醒をしたとのことだった。そのため、色々と整理がつかず
大変だったそうだ。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ…」
「お前の頑固さを考慮したまでだ」
「っ…!」
うっ…それは反論できない……ふふ…やっぱり凄いよルシオ。でも、
これで僕は益々君から離れるわけにはいかないね。君のあの力…
やはり僕が危惧している予言成就に一役買いそうだ。
僕は絶対に君を、皆を破戒王に転化などさせない…!
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口数の少ないキャラ&謎だらけなので憶測まみれだが大丈夫か? 作戦で
どうにかマイスを納得させることはできた。が、これで俺は間違いなく
マイスのパーティメンバー永久参加が決まってしまった。当然だが
セラムもなので、正直畜生がと叫びたい。
「さて…ともすればさっさと王都に行かねばな…」
「うん。目標金額まで残りは8万Irla…10万を超えたとはいえ…正直
先日のワイバーン討伐みたいなのでしか大口のクエストが無いんだよね…」
「そればかりはどうにもならんだろう」
「流石にそれはルシオに同意しちゃうかも…」
「うむ…先日の件は中々堪えた…」
「いっそギブればいい」
「ちょっと、セラムさん…?」
個人的にはこのまま足踏みしたままでも良いが…それは体面的にもまずい。
「……ともすれば…拠点をチッタから少しでも王都に近い街に変えるか?」
「うーん…それもそれで正直不安だなぁ…」
「しかしチッタで稼ぐならワイバーン討伐は今後も避けては通れないぞ?」
「そーなんだよねぇ…流石に今のあたしにはレベルが足りないわ…」
「私達がレベルを上げるにはどうしたって魔物を倒さねばならんし…」
「少なくとも色々稼げるのは確実。でも効率は悪い」
「ふぇぇ…」
仕方ねぇ…こうなりゃアレをやるか。
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チッタ…というかアイタリエ王国はこの世界基準でも結構文化的らしい。
なのでそういう国には色々なものがある。
「来たわねぇルシオちゃん! そしてマイスちゃんも!! グドゥフフ…
アチキの勘に狂いはなかったわん☆」
「「………」」
アイタリエ王国はその昔…古代アウグストゥス帝国と呼ばれたほぼ神話みたいな
時代から性的なものを含めて性文化だの酒呑み文化だのが進んでいる。
「み、短い間ですが…よろしくお願いします…」
「……マイスに同じだ」
「やぁねぇもう…☆ 二人ならいつでも歓迎するからねん☆」
ガチムチボディなのにクネクネしてる派手目メイクの巨漢…いや乙漢が…
どこぞのオカマが使う「ただの瞬き(だが砲弾も押し返す風圧を放ちそうな)」を
ヴァッチィン! と決めてくる。マイスと俺の膝が笑いそうだ。
「短期間ジュリよろ」(セラム)
「んふふ…☆ よろしくねぇんセラちゃん☆」
「…そこで止まれ。ここからはルシオだけの絶対聖域」
「んふ☆ 良いわねぇ☆ 愛されてるじゃないのんルシオちゃん?」
「その件に関しては文句はない…」
「アチキの門はいつでも開いてるからいつでもおkよ☆」
「永遠にお断りする」
「やぁん☆ サランちゃんが可愛そうwww☆」
「やめろ…奴の話を出すなこのオカマ野郎!」
「グドゥフフ…ごめんなさぁい☆」
俺たちが暫く副業をすることとなる酒場…「エンピレオ・ジュリアーナ」の店主
…ジュリアーナ・ルー・フォモール(本名ジュリオ・タウゼントヴンダバー)は、
「可愛ければ大概おk」な人で、基本は男好きだが高潔漢…だが乙漢だ。
「な…なんなのこの人…!?」
「…そういう人種は少なからずいるとは私も知ってたが…」
「…うぐっ…?!」(アリア)
マイスはともかく、この乙漢相手にショックを受けない人物は
(前世地球人な俺を除く)間違いなく英雄になれると思う。見ろ、腐界という名の
極限幻想を生きる真正乙女のアリアには現実世界は耐え難いらしい。
これを機に普通の人間に戻ってほしいが…腐界の住人は逞しいからな…。
「やぁねぇ☆ マイスちゃんの幼馴染って可愛い子かオイシソウな子しか
いなくてオネェさん困っちゃうわぁん☆」
「「「「………」」」」
「ルシオ…」
「いいぞ」
俺はセラムが引っ付いてくるのを許した。だって…怖いんだ色々。
「もぉ☆ 俺はノンケを所構わず食っちまうほど下種じゃないぜ?」
「………ル、ルシオ…ホントに大丈夫なのかい?」
「畏まってきたが…私は不安だぞルシオ…?」
「っていうかさぁ…あんた何でこの…人…? と知り合いなの…?」
以前も語ったと思うが、俺は口では多くを語らず、幼少期から
時々突拍子も無いことをして親父から拳骨連打を食らったり、
何回かは町長会で吊るし上げられた事もある。ただしその理由は多くが
誰かのために何かしてあげようというものだったので、損ばかりだったようだ。
まぁ、そのお陰なのか年寄りや子供(セラム含む)とかの一部からは好かれてる。
だ が 残 念 な こ と に 好 か れ る の は
大 多 数 が 男 で す 。
どちらにしてもホモショタの気は無いのでノーサンキューである。
大事なことなので強調しつつ繰り返させてもらう。
ジュリアーナとはそういう縁で……「何か困ったことがあったら
いつでも漢迎するからねぇん☆」ということになった次第だ…
おのれ偽ぇロース…!! 俺は神殺しを目指すぞッ! 邪神どもぉーッ!!
「………好きで知り合ったわけじゃない…」
「んふ☆ ルシオちゃんには創業の恩もあるからねぇん☆」
幼少期の俺はゲイとかオカマって生命体に無知だったからな…
あの巨漢がみっともなく鼻汁まみれでギャン泣きしてるのを見てたら
あまりにも可哀想で放っておけなかったんだ。
「…安心してくれやルショーノ。おr…アチキ。義理堅くあるとエロース様に
誓ってるわん☆」
一瞬男らしかったが絶対信用できねぇ…!
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これまでのウホア"ッーなイベントの諸悪の根源は間違いなく偽ぇロースだが、
だからといって関わりのある人間全てが奴に侵蝕されきってる訳では無いらしい。
まぁ酒場「エンピレオ・ジュリアーナ」は店主含め従業員の六割が同性愛者か
両刀使い(バイセクシャル)ってだけで、ホイホイやってきたノンケを遠慮なく
いただきまア"ッーするような連中じゃないみたいだ。というかむしろ
彼らだからこそわかる男女の機微だの悩み苦しみだのを酒を交えて吐かせ、
別ベクトルでホモだらけの一神教の司祭や神父では不可能な悩み相談を
一手に引き受けるとあって、チッタどころかアイタリエ王国でジワジワと
確実に人気を集め始めている。なので、従業員への金払いが真面目に
前世の儲かってる水商売店舗同様に凄まじい。金払いが良すぎて
冒険者どころかノンケすらやめちまった奴もいるくらいだそうだ。
「三番卓さん! ローゼス印ブッコミでぇーす!!」
「「「はぁい☆ かしこまりぃ~☆」」」
この声はマイスだろうか。合いの手は店主と幹部従業員が主だ。
「七番…カプリチョーザ、パンナコッタ、愛のヴィネ」
「「「はぁい☆ かしこまりぃ~☆」」」
セラムの小さな声も聞き逃さないのは恐るべし。
「12番ワイン追加! 15、6、7お会計ッ!!」
「こっち11番はカプチーノだって!!」
「「「はぁい☆ かしこまりぃ~☆」」」
最初はジュリアーナに圧倒されてたエリルウィンダルティアとルティナだが、
結構ノリが良いな。まぁ、良い飲み屋ってのはそうじゃなきゃ駄目だから
それで良いんだろうが…。
「なぁ、アンタ…店が終わったら…やらないか?」
「ノ・グラッツェ(お断りします)」
「オイオイ…こんな店でホイホイ働くようなお前が俺を断るのかい?」
「君みたいな良い男がボクの誘いを断るとか…まさか、そういう焦らしかい?」
「そういうのは嫌いじゃないぜ?」
……何で俺には細いも太いも揃いも揃ってガチな客ばっかり絡んでくるんだ…。
「あらん☆ ダメよぉルシオちゃんはアチキが予約済みなの☆」
「……ふっ…ジュリアーナの先約なら仕方ないな」
「仕方ないね。じゃあ今回だけは言うとおりにするよ」
…絶対に許さんぞ偽ぇロース…!
> > >
と、まぁ正直マイスが時折やらかしてくるデストラップが屁みたいなレベルの
地獄イベントフラグをどうにか叩き割りつつ、俺達は
「エンピレオ・ジュリアーナ」の副業の力を以って目標資金を着実に貯め…
………半年かけてようやく18万Irlaを稼ぎ出した。
「とうとう達成できたのねぇん。おめでとうルシオちゃん☆ オネェさんとしては
ちょっと寂しいけどねぇ☆」
「あぁ…一生分頑張った気がする」
「大変でしたが…経験としては悪く無かったですよ」
「だが二度と御免」
「皆良い人たちばかりだけど…私もセラムに同意する」
「あたしも禿同」
「や、やっと終わったよぅ…」
他にも数多くの常連客たちから惜しまれたが、後ろ手など引かれぬ。
引かれたらもうそれはノンケとして終わってるからだ。
「グドゥフフ…☆ 疲れたらいつでも門にブチ込んで来て良いからねぇん☆?」
「「「「「「ノ・グラッツェ(お断りだヴォケ)☆」」」」」」(爽やかな笑顔)
「いやぁん☆ もぉぉ☆ 皆照れ屋さん☆」
…この乙漢は変なところがマイスと同じ難聴系だから始末に終えねぇ。
「あ、嫌だわアチキったら…普通に忘れるところだったわん☆」
そう言ってジュリアーナは懐から大きな皮袋をこちらに渡してきた。
皮袋はミッチリと詰まってたがジャラリと音もする。
「ジュリアーナさん…? これは…?」
「餞別よぉ☆ 正確には渡り鳥さんから聞いたトクベツボーナスってヤツねぇん☆
マイスちゃん達のお陰でこの半年黒字続きだったんだからぁ☆」
普通に月給で金貨単位のカネを貰ったんだが…そこまでだったのか。
いつの世界どこの時代でも水商売はやはり水商売なんだな。
「うわ…! これ! ほとんど金貨じゃん!!」
「ひーふーみーよーいつむーななやー…軽く6万Irlaある…!」
「ろくま…ッ!?」
世界標準は知らないが、アイタリエ王国の平均月収は一般人1360Irlaで
命がけの冒険者平均は7300Irlaとしても一人頭10000Irlaは破格である。
もしかすると最初からジュリアーナの店で働くだけで18万Irla稼げたのでは…?
「一応餞別込みだからねぇん☆? まぁ、ルシオちゃん達なら一年住み込みで
働いたりしてくれちゃったら50万Irlaくらい稼げちゃうかもだけどぉ…?
アチキのお店は貴族さんや豪商さんも依怙贔屓してるから…グドゥフフフフフ☆」
「「「「「「…」」」」」」
水商売の儲けは良い時は油田で悪いときは津波であるというのは
強ち間違いじゃないんだろうな。
「では…行くか」
「うん! 行こう! 王都ヌオヴォ・カエサルへ!」
「マイス(とあたし)の夢の為に!」
「マイサロン(と私)の理想の為に!」
「…ルシオ(と私)の未来のためにも」
「ジュリアーナさん。色々お世話になりました」
丁度迎えの馬車も来たので、俺達は変なモノが変なナニカを繰り出してくる前に
微妙に足早で店から去ろうとする。
「風邪引くなよ。俺はお前からなら伝染さられても構わんが」
「ボクはルシオ君とマイス君の為に詩でも考えて凱旋を待ってるよ」
熱烈すぎる常連客どもの台詞は右から左に受け流す。
「体に気をつけてねぇん☆ ……………生きて帰って来いよ。
俺は、お前らとまた最高の狂想曲をやるのが生き甲斐だからな」
…最後にジュリアーナが男前だったのが、良くも悪くも印象的で魘されそうだ。
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ぐう大風呂敷で大山火事のキワミあ゛ッ………!
コンティニューカウントだけは無駄に長いGameOver画面
~もう少し頑張ってみる?~
<Yes!>←_(´ཀ`」 ∠)_
<Yada>