3件目:成人式はヌルゲ、俺の人生はゴブリン殺し三昧?
一瞬予約投稿をミスったかと焦りましたが、正常に投稿されてました。
目が覚めてから俺はまずジャンピング土下座でマイスに謝る事にした。
「…いや、まぁホントにビックリしたけど…」
「ルシオ…本当に大丈夫?」
セラムが俺の鳩尾をナデナデしようとする。でもセラム、そこは…
鳩尾じゃなくて下腹部なんだ、もう一人の俺の近所なんだよ?
流石に一日でドン勝六枚以上は死ぬから勘弁してね?(ゲス注意)
「大丈夫だ、問題ない…それよりもマイス…本当にすまなかった…
お前の肩にスカラファッジョ(ゴキブリ)が居たように見えて…つい…」
言い訳としては妙案だった。流れ込んだ記憶便りだが、この世界では
ゴキブリはその多くの種類が魔物であり、魔物としては普通のゴキブリと
対して変わらない生命力しかないが、こいつ等は地球のゴキブリと違って
最悪の疫病や呪いを媒介する厄介な種も多いのだ。そして地球と共通で
ゴキブリは汚い生き物として広く知られているのでチッタでも見つけたら
即座に殺して構わないのが常識だ。そんなだから地球でもそうだが
病的に嫌う人も多い。
そこで俺は今後は病的なゴキブリ嫌いで通すことにしたのだ。
「ったく! ルシオ! あんたって時々突拍子もないんだから!」
「すまぬ」
「まぁ…普段からあまり喋らないし…そこは否定してやれないな」
俺としては憤懣遣る方無いが、俺としては
返す言葉も無い。何しろ俺は口では多くを語らず、幼少期から
時々突拍子も無いことをして親父から拳骨連打を食らったり、
何回かは町長会で吊るし上げられた事もある。ただしその理由は多くが
誰かのために何かしてあげようというものだったので、損ばかりだったようだ。
まぁ、そのお陰なのか年寄りや子供(セラム含む)とかの一部からは好かれてる。
だが残念なことに好かれるのは大多数が男です。俺にしろ俺にしても
ホモショタの気は無いのでノーサンキューである。
……だから何年か前に男の娘なサランって少年にプレゼント込みで告られた時は
ショックのあまり親父に「俺を殺してくれ」と言って「お前は馬鹿か」と
普通に半殺しにされたことを…うっ…最後に拳骨を落とされた脳天が…脳天が…!
「ルシオ…? ホントにだいじょぶ?」
セラムが俺の頭を撫でようとしてくれたが、届かなかったらしく
腰の辺りを撫でてくる…ってセラム…そこはもう一人の俺の近所だよ?
流石にドン勝七枚は真面目に死ぬって…。(クソゲス注意)
「っはぁ~…"我、癒しの祝詞を以って汝の苦しみを癒し給う…初級治癒"」
エリルウィンダルティアが俺に回復魔法を掛けてくれる。
「すまぬ…」
「一番ガタイが良いのにあんたって弓士なのよね…間違ってるわ」
「す、すまぬ…」
これは俺も返す言葉が無い。何しろ俺と俺は
見た目に反して力より技のタイプが共通するのだ。
「う~ん…やはりルシオは私と一緒に朝練するべきかもしれないな」
「勘弁してくれ」
「即答?! 流石にちょっと情けないぞルシオ…?」
こりゃ堪らん…ルティナとの朝練には嫌な思い出しかない。初めて
彼女と朝練に付き合った時から体力の差が色々とオカシイと痛感させられて
心も体もバッキバキに折られまくっているのだ。まぁ、だから俺は
弓士を目指し、親父のような山師を目指すことにしたわけだが…。
っつーか7歳で100キロは超えてそうな岩を割と軽そうに持ち上げるような
怪力少女を前にしてたら俺だって色々なモノがバッキバキに折れるわ。
「ルティナ…」
「な、何だよセラム…そんなに睨まなくても良いじゃないか」
あれ、おかしいな? 俺は嬉しいのに俺は悲しいぞ?
…あぁ…そうか…昔と今の立場が…そうか…頑張れ俺…。
「改めてすまぬ…皆に迷惑を掛けた」
「それはもう良いよルシオ…というか今も昔も僕はそんな君の
突拍子も無い行動に数多く助けられたんだから、ね?」
「マイス…」
わかったからそれ以上近寄るな。何か薄ら寒いんだ。おい肩に優しく手を置くな、
そういう時は軽く小突くのが男同士の友情の正しい作法だ。
その美しい花を愛しむような視線もアウトだ。そういう時は
ちょっと悪そうな笑顔を向けるんだ。多少嘲りが入っていると尚良い…筈だ多分。
「…はふ…!」
「どしたの、アリア?」
「ふぇ!? え、いえ…何でもないですよ?」
「そう…?」
「………」
嫌な予感…虫の知らせ…? よくわからんが確かに妙に嫌な気配を感じた俺は
さりげなくアリアのステータスを覗き見てみたくなった。
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名:アリア 姓:チッタ・ディ・モンターニャ・デ・ターリオエルバ
隠し名:エロース・エナ・コリーツィ 忌み名:プロテヘルニクス・カオティキテア
年齢:16(16) 性別:女(処女)
格:1
命:21/21
魔:14/36<High Power Up!>
心:12<Power Up!>
技:1
体:2
<技能>
卓越原初神エロースの加護LvMMM、原初神術LvΦ【未覚醒】、薬学Lv2、料理Lv1
特級魔術(腐食)Lv1<New!>
<称号>
卓越原初神エロースの娘 勇者の花嫁 勇者の義妹 勇者の幼馴染 ブラコンLv4
腐界に目覚めし乙女<New!> 腐界道Lv1<New!>
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ふざくんなちくせう。あの腐姉様が何かしてきやがったとしか思えねえぞ…?!
「や、やめろマイス! それは男にする行為じゃない!」
「うわ…!? あ、ごめん…何か変だったかな?」
W俺は思わずマイスの手を掴んで強めに戻した。
「…おっふ…!」
「アリア…?」
「ひょ?! …な、何ですかセラムさん?」
「………(クソが)」
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名:アリア 姓:チッタ・ディ・モンターニャ・デ・ターリオエルバ
隠し名:エロース・エナ・コリーツィ 忌み名:プロテヘルニクス・カオティキテア
年齢:16(16) 性別:女(処女)
格:1
命:21/21
魔:14/85<Super Power Up!>
心:13<Power Up!>
技:1
体:2
<技能>
卓越原初神エロースの加護LvMMM、原初神術LvΦ【未覚醒】、薬学Lv2、料理Lv1
特級魔術(腐蝕)Lv2<Level Up!>
<称号>
卓越原初神エロースの娘 勇者の花嫁 勇者の義妹 勇者の幼馴染 ブラコンLv4
腐界に目覚めし乙女 腐界道Lv2<Level Up!>
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これはひどい。だがこれは俺の短慮が招いた結果だ…
そうであると信じなくては…だが…一度腐界に堕ちたモノの強靭さは…クソが!
「マイス…お前はもう少し柔軟になってくれ…」
「え…? あ、うん…? 精進するよ…?」
さっとアリアを盗み見るが、アリアの表情には先ほど感じた気配は無い…多分。
「…まー、その感じだとルシオも大丈夫そうね?」
「そうだな。ルシオが倒れてからそんなに時間も経ってないし、
どうする、マイス?」
「うん。それじゃあ今一度準備して魔物退治に行こうか?」
俺にとっては初っ端から不安的なしこりが残ったが…
この気持ちは雑魚を矢だらけにして晴らしてやるさ。
> > >
成人式前の最後の雑魚魔物たちとの戦闘は危なげなく終わった。
「ふぅ…」
「やっぱり雑魚は雑魚ね。たまにはゴブリンの群れとか出会わないのかしら?」
「それはないな。ゴブリンはゴブリンでスカラファッジョより厄介な魔物だ。
仮に出たとしても村の自警団員や常駐の冒険者達が即座に殺すんだし」
そう、この世界ではゴブリンは基本Ⅹまである危険度で見るとⅢ以上の魔物だ。
とはいえゴブリンは単体の強さはそれこそ「人型のスカラファッジョ」と
馬鹿にされるくらいの弱さで、実際に親父同伴とはいえ俺が10歳の時、
たまたま出会った斥候であろうゴブリンを難なく一人で殺せたのだ。
だが、ゴブリンが危険度Ⅲ以上と言われる所以はそこじゃない。
ゴブリンは放置された探鉱や廃墟に集まり、やがて巨大な巣を構築する。
単に数が集まるだけならそれこそ危険度Ⅲ止まりなのだが、ここからが問題だ。
様々あるが、条件が整うと巣を構築したゴブリンはスカラファッジョ同様に
爆発的に増える。文字通り数の暴力と化する。もしもその段階になれば
危険度はⅤを超える…というのもそうなってくると、殖えたゴブリンは
互いの魔力に影響しあって、まず中鬼化する。中鬼は単体の危険度がⅣあるので
駆け出し冒険者では倒すのが難しくなる。それだけならまだ良いが、
そんな中鬼が一匹ずつ出るわけがない。一度に複数体生まれるのだ。
さらに次の段階で黒子鬼、赤帽子といった
単体でも危険度がⅤ…討伐に中級冒険者パーティが必要になるモノが増殖し…
ソルジャー、ナイト、メイジ、ビショップ、ロードと危険度Ⅴ~Ⅶ超えの上位種が
ネズミ算式に増殖し、末はキング、タイクーン、エンペラー、オールドワンズ…
と言った危険度災厄級の最上位種が誕生してしまうのだ。こいつ等の上位化速度は
似たような種であるオークとは天と地ほどに比べ物にならない速さがある。
ただ、そんなゴブリンだが、こいつ等は他の魔物と違って同種族としか
徒党を組めない。そして基本は雑魚なのでゴブリンを餌や苗床とする他の魔物に
その九割近くが全滅させられるのだ。
何で俺がそんなにゴブリンに詳しいかというと、かなりの大昔チッタにも
ロード種が率いるゴブリン軍団が現れたことがあり、五代くらいの前の
スピエラディグローリア辺境伯と、今は伝説となった子鬼殲滅者という
偉大な英雄が多大な犠牲を払って打ち倒したことが教訓となり、本や吟遊詩人、
世界各地の冒険者ギルドに「ゴブリン見敵必殺」の逸話が話され記されで
ゴブリンスレーターの偉大さを世に残し、伝えるべく
「ゴブリンデストロイヤーズ」なんていう専門クランが生まれたくらいなのだ。
当然チッタにもそのクランメンバーが数人常駐している。だから俺は…というか
この世界で生きる人々は必然的にゴブリンの脅威を嫌でも知ることになるのだ。
特に俺は…あっ!! そうか! だからか! だからセラムは…!
セラムが俺に好意を寄せてるのは…そうか…10歳の時に殺したゴブリンが…
「ルシオ? どしたの?」
「む…?! いや、すまん…耽っていた」
「…ゴブリンの、こと…?」
「すまん…」
「いい…私にはルシオがいるから」
思い出したくは無いんだが、俺が10歳の時、セラムはゴブリンに
一度攫われたのだ。ゴブリンは人型なら大概苗床にしてしまえる怪物だ。
だからセラムが攫われたとき、俺は必死で親父に掛け合い、どうにか
群れに連れ去られそうになっていたセラムを奇跡的に無事に救出したのだ。
だからセラムは俺を…。
「…エリル」
「でもさぁゴブリン…あっ…!! ご、ごめんセラム!!」
「別にいい…でも、同じ女としてあのゴブリンを軽んじるのは嫌」
「……ごめんなさい」
「…すまないセラム…私も考えが至らなかった…」
「いい…だって皆もいるし…マイスもゴブリン相手なら頼りになるし…」
セラムは俺にしがみついて来た。俺は条件反射でセラムの頭を撫でた。
「…ルシオ。一旦ツリーハウスに戻って二人でゴブリン探し殺しでもするかい?」
「…ああ」
思い出したら沸々とゴブリンどもへの憎悪が沸いてきた…
そうだ、あいつ等は今の俺のレベルアップ経験値にも丁度いい…。
> > >
そんなわけで、雑魚散らしを一旦終えた俺とマイスはチッタに常駐する
「ゴブリンデストロイヤーズ(略称GDS)」クランのお姉さん達と
成人式が始まる時間ギリギリまでゴブリン探し殺しをすることとなった。
「いる…! 矢を番えて!」
「うむ!」
俺はクランのエルフお姉さんの指示通りにした。俺の腕力を以ってすれば…
当てた場所次第だがオークだって殺せるのだ…! 多分!
「一匹は確かに雑魚だが…だからといって逃がすんじゃないよ?」
「はい!」
マイスはマイスで歴戦の凄みを感じる女傑戦士さんの傍で剣を構え…
俺と戦闘訓練するときとは別人の表情になる…あのチートすぎるステータスを
見る前までは、マイスの変貌振りに毎度毎度畏怖させられたが…
あのチートステータスなら納得である。そんなチーター(暴言)マイスがいれば
チッタは仮にゴブリンキングが率いる子鬼師団(GDS命名)も余裕だろうがな。
「貴方は…私と同じ方向に矢を放つだけで良いわ」
「う、む…!」
ゴブリンが居るであろう方向を見るエルフお姉さんの目は怖かったので
ちょっとどもってしまった…まぁ、強姦魔よりも最悪な人類種女子の敵だし。
無理も是非も無いな。
「マイ坊…あんたとあたしのそれぞれの相棒らが第一射を放ったら突撃だよ」
「わかりました…!」
なんかもうマイスは女戦士さんと仲良くなってる臭いな…
これが美少年の力か…?! 転生ボーナスに美少年化とか無かったのか…?!
………いかんいかん邪念を振り払え…!
「今!」
「応!」
俺とエルフお姉さんの第一射が哀れだが同情はしないゴブリン達の
終わりの始まりだった。
> > >
GDSのお姉さん達と共にゴブリン達を景気良く血祭りに上げた俺達は
とりあえず体がゴブリンの血とかで色々と酷いことになってたので
まだ時間もあったし(気は乗らないが)マイスと共に風呂に入ることにした。
この世界の文明度がどの程度の水準なのかは両方の俺としては知らないが、
チッタは古代からお風呂文化があるので、結構普通に風呂に入れる。
これは元日本人としても素晴らしく有難い。
しかもフルーツ羊乳なんてのもあるのだ。これは色んな意味で素晴らしく有難い!
「ふ~ぅ…」
「む~ん…」
マイスは満ち足りた顔で瞑想するように風呂につかり、俺は俺で
適度に距離を空けつつ首とかをゴキゴキ鳴らし足を揉み解しながら入浴する。
今でこそ体が若いから念入りに…というか無理にやらなくても良いのだが、
前はそれをしっかりやるとこむら返りのリスク軽減が出来たので、ついやってる。
(あくまでショウ個人の見解です)
「お風呂は良いねえルシオ…」
「そうだな…」
「聞けば大人たちは風呂に入りながら酒を嗜むこともあるんだとか…?」
「らしいな…」
風呂で敢えて冷やした酒はマジで旨いぞ。前世で一度だけ出来た
高級温泉旅館で出来たきりだが…ああ…どうして俺は…。
「ちょっとー! いつまで入ってんのさー!?」
「うわぁ!!」
「ぬを!?」
スパーンと引き戸を開けてエリルウィンダルティアが入ってきたので
俺とマイスは素早く股間を隠しつつ立ち上がる。
「ってぇ!? 何で湯浴み着を着てないのッ?!」
「当たり前だろうが!! 俺達は男だ!」
「いやルシオ、その理屈はおかしいんじゃないかな…? まぁ裸でお風呂は
気持ち良いと思うんだけどさ…?」
日本と違うのは風呂に入るときも湯浴み着という薄いが透けるようで透けない
不思議な素材で出来た浴衣モドキを着て入浴するのがチッタの風呂文化だ。
だが俺は張り付く感触や昔溺れた思い出がジワるので非常時の股間タオルのみで
やはり元日本人らしく裸で入っている。ちなみにマイスはそんな俺の
幼馴染であるせいか、俺の裸入浴を真似するようになり………あの野郎は
自分の家でそれが自然と定着したらしく、以降時折あの野郎は
美人の義母義姉義妹とのウッカリお風呂場遭遇ラッキースケベ的な…クソが!!
どう考えてもおかしいんだよクソが!! 普通定着しねえよ!!
これがイケメン補正か!? 美少年特典というヤツなのか?! クソがぁ!!
「……そ、そんな怖い顔しなくたって良いじゃんか…」
「ふしゅるるるー…! ルシオが怒るのは当然だと思う……ふしゅっ…!」
あの、セラムさん…? 何処見てんの? やめて下さいドン勝八枚は
死ぬってレベルじゃなくなってしまいますフヒヒサーセン。
いかんいかん…そういうのではなく…。
「ん…? あ、アリア?! うあ…!! おいエリル!! アリアが
噴水がごとく鼻血を出して卒倒したぞ…?!」
「えぇぇえ!?」
「…ふしゅる………気持ちはわかる………だが…温いな、未通女め」
「御前は何を言っているんだッ!? アリアの介抱を手伝えよッ!!
あ、あととと…!! マママママイサロン達は早く着替えてぇっ?!」
他人の事を言えないセラムさんや…俺にドン勝十枚という
全俺未踏の境地へ旅立たせたいのですか? そしてルティナさん…?
マイスをガン見しすぎ。露骨過ぎて引くわ。でも、貴女のせいで
俺はドン勝11枚が決まってしまいましたよ…?(ゲス注意)
だがアリア…テメーはダメだ…どうせ上がったんだろ? 見なくてもわかる。
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名:アリア 姓:チッタ・ディ・モンターニャ・デ・ターリオエルバ
隠し名:エロース・エナ・コリーツィ 忌み名:プロテヘルニクス・カオティキテア
年齢:16(16) 性別:女(処女)
格:1
命:21/21
魔:85/198<Super Power Up!>
心:19<High Power Up!>
技:1
体:2
<技能>
卓越原初神エロースの加護LvMMM、原初神術LvΦ【未覚醒】、薬学Lv2、料理Lv1
特級魔術(腐蝕)Lv4<Double Level Up!>
<称号>
卓越原初神エロースの娘 勇者の花嫁 勇者の義妹 勇者の幼馴染 ブラコンLv4
腐界に導かれし乙女<Version Up!> 腐界道Lv4<Double Level Up!>
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無機質さんもしも見てるなら腐姉様らを軽く粛清してくださいお願いします。
(…処…ます…)
「!?」
「どうしたんだいルシオ?」
「いや…とりあえず湯冷めする前に着替えるぞ」
「っと…そうだった! アリアが!!」
「…成人式前にしっかり血になるものを食わせてやるか…」
無機質さんに俺の声が届いたかもしれないことを感謝をこめて祈りつつな。
> > >
何かゴブリン殺し云々で色々あったせいか、一応待ちに待っていたはずの
成人式は、そりゃーもうヌルゲだった。何しろ成人の条件は、俺の親父を含めた
山師達やチッタ常駐の中級冒険者達が普段は立ち入り禁止にしている
アンジェリーナ山に入山し、中腹までギブアップせずに辿り着くことだからだ。
だから…そこはまぁ、マイスのチートステータスだし。ヌルゲもヌルゲだ。
お陰で俺のレベルアップは遅々として成されないってレベルじゃねえぇ…。
まぁ…別に俺は英雄を目指してるとかそんな熱(苦し)い志はないし。
現代地球という俺的リアルクソゲー上がりだからヌルゲ上等なんだけどさ…?
まぁ、そんなわけで俺達はチッタで一番大きな宿屋で成人式終了お祝いを
町長らの厚意でさせてもらってるんですが。
「やったねマイス!! これで明日からあたし達も外で魔物狩りができるよ!!」
「隣町への同伴者抜きでの私達だけでの外出もな!!」
「…大人になったから…お酒も飲めるし…それに…ふふふ…」
いやもう飲んでますよね。っていうか妖艶な目になった気がするセラムさんの
年に似合わぬが妙に艶っぽく見える流し目のせいで俺は今夜のドン勝12枚という
重大な使命が決まりましたとです。
「……と、なると…王都にも自由に行けるのか…」
「…王都に何をしに行く気だ?」
聞かなくてもいい気がしたのだが…俺としてはマイスの
その言葉の意味が知りたくなってしまったのでつい聞いてしまった。
「…そうだね…もう僕等は大人なんだから…話しても良いかな…?」
「…え?」
「どういう意味だマイサロン?」
「マイス兄…?」
あれ、何かこれ面倒臭いフラグ立てちゃったんじゃね?
「…マイス…俺は無理には聞かんぞ」
「正直マイスの決意には興味が無い」
セラムの言も共感だが…俺は七面倒フラグを
上手に…完膚なきまでにブチ折りたいのだ。
「……………いや、無理にでも聞いてくれ…皆には…特にルシオには絶対に…!」
おい、キリッとしたイケメンフェイスを俺に向けるな…気のせいか
某正義超人王子のフェイスフラッシュみたいな輝きが出てないか?!
「ぬふぅ…?!」
「アリア…? 大丈夫…? あんたって多分下戸なんじゃないの?」
「だ、だだだ大丈夫でしゅエリルしゃん!」
「……うーん…? エリル…念のため回復魔法は…」
「らいじょぶ!! わらひらいじょぶれすから!!」
絶対大丈夫じゃねぇ気がする…無機質さんお願いします…!
「…始まりはセラムちゃんがゴブリンに拐かされた時からだけど…」
「………」
「おい、マイス…!」
俺はマイスを嘗て向けたことが無いくらいの感情を込めて睨みつけた。
フラグ圧し折りの気持ちもあるが、セラムの為が第一だ。
「何度も悪いと思ってる…でも…成人式前のGDSの人達とのゴブリン探し殺しで
はっきりと決意が固まったんだ…」
マイスは手に持っていた酒を飲み干して、何拍か置いて皆を見回した。
「僕は…王都で…アイタリエ王国で大将軍を目指す…!
この世界からゴブリンを含めた魔物を…根絶やしにするために!!」
わー…テンプレ主人公っぽい決意表明だー…もうお前が主人公で良くねー…?
「…ふむ…」
俺は酒を何杯か一気に飲み干した。もうこれ面倒臭いフラグ確定だろうし。
飲まなきゃやってられんもの。
「…良い決意じゃないか小僧」
「親父…」
「マルチアーノさん…」
成人式終了祝いの席には親父をはじめ、何人かの大人たちも同伴している。
まぁ大人が新成人を祝うのは普通だしな。
「マイサロンくんなら、きっとそう遠くないうちになれるだろうな」
「マイ坊がアイタリエ王国大将軍かー…んじゃ、アタシは今のうちに
マイ坊が率いるであろう大部隊に入れるようコネでも作らせて貰うかね?」
「どうせならGDSに入ってほしかったわ…」
町長とかGDSのお姉さま達が遠慮抜きにフラグを鉄壁にしていきやがる…!
畜生! 流れが完全にマイスのモノだ! もう逃げ出せん!!
「ルシオ…いや、山師マルチアーノの子ルショーノ…僕は君に…
チッタを愛してるだろう君に…!」
マイサロンは俺の前まで歩み寄って…おい、待て、そのポーズは違う!
そこは土下座とか軽い会釈レベルの礼で良いんだ!!
片膝をついて手を差し出すんじゃねぇ!! それはこの世界でもアレな意味が!
「僕と共に王都に来てくれないだろうか!! 頼む! この通りだ!!」
「ぶほぁお!?」
「うわぁ!? アリアぁ!? また鼻血の噴水がぁ!!」
「あわわわ回復魔法回復魔法!!」
この野郎のポーズの意味を知らないルティナ達は例によって
鼻血噴水と化したアリアの介抱にてんやわんや。
「ぷっ…! 誰だいマイスにあのポーズを教えたの!!」
「…ごめん、私…"大切な人に告げるための誠意ある姿勢が知りたい"って…
マイスきゅ…マイス君に言われたから…」
「ぶふふ…! アンタってばサラ坊にも教えてなかったっけ?!
ぷくく…! ぶわっはははははは!!」
GDSのエルフお姉さん…サラン事変はあんたが原因か…!
―ハハハハハハハ!
―ガハハハハハハハ!
―ぶわ~っはっはっはっは!
「ぶふッ……良かったな馬鹿息子…? 二人目だぞ?」
「親父ぃ…!!!」
俺は酒の勢いで親父を殺しにかかりそうだったが…レベル1で
親父に勝てるとは思えないので直ぐに冷静になれた。
「え…?! えっ…?! っちょ…! どうして皆笑うんだい!?」
―プギャーッハッハッハッハ!
笑い声が酷くなった。酷くしたのは十中八九俺の『サラン事変』を
知っている連中だろう……全員漏れなくデス予定ノートに記入だ。
何時か必ず未だ使ったことの無いインシネレートロッドか
ヴァイスヴァリアントガンの餌食にしてくれる!!
Next…4件目:普通に見れば俺の人生はヌルゲですが、普通じゃないので!!