2件目:ご大層なお歴々由来の美少女達+周回勇者マイサロン
チッタ村は肥沃な土地に恵まれ、町の北側にあるアンジェリーナ山から湧き出す
滝川があるため水も豊富なので町の食糧事情はチッタが出来た頃から豊からしい。
それでいてチッタに一番近い所に暮らす貴族は勇猛果敢質実剛健な
スピエラディグローリア辺境伯と来たもんだからチッタが納める税は四割未満。
そんなもんだから最近は無駄に腐らせる食料が増えてきたから伯爵には
六割を納めても良いんじゃないかという話が町長会でも上がるそうだ。
要するにアホみたいに平和なのだ。どれくらいかと言うと現代日本並みの平和だ。
これで魔物とか盗賊とかが居なかったら現代日本より平和かもしれないくらいだ。
「おっそーい!!」
秘密基地のある大木の前に差し掛かった俺とマイスの前に
大声を出して降りてきたのは薙刀っぽい武器を携えた竜騎士風味の村人少女。
「いや、君が早すぎるんだよエリル。そんなに待ちきれなかったのかい?」
「そうだな。まだ夜明けだぞエリルウィンd…」
「うっ! ううううううるしゃーい!!」
俺の言葉を待つことなく叫んだこの少女は俺の幼馴染その2…
エリルウィンダルティア…愛称はエリルだが、彼女を愛称で呼べるのは
マイスと極一部だけだ。他のヤツが愛称で呼べたら賞賛に値する。
それくらいウッカリ呼んだら危ないのだ。エリルウィンダルティアが
登場してから間髪入れず大木の後ろからもう一人少女が現れる。
「きょ、今日は良い天気だな! マイ…マイs…マイサロン!」
「いや、まだ良い天気とは言いがたいんじゃないかなルティナ…」
「禿同(激しく同意)」
「だっ! 黙れルシオッ!!」
何故か俺にだけ反論してくるのはエリルウィンダルティアとは違って
普通の戦士風な装備を身に纏う幼馴染その3ことルティナリエル。
愛称はルティナ。流石に彼女は俺が愛称で呼んでも怒ったりはしない…
…しないんだが、俺とマイスに対する温度差が酷い。
マイスに対してはオドオド照れ照れなのがあからさま過ぎてムカつくくらいだ。
「おはルシオ」
「おはセラム」
「おはよう、セラムちゃん」
「マイスには言ってない」
「ハハハ。相変わらず手厳しいな」
いつの間にか俺にくっ付いて挨拶してきたのはこの中では一番小柄な幼女じみた
背丈の魔術師風の格好をした銀髪ショートの少女で、最後の幼馴染であるセラム。
真実は知らないが彼女はクァルディラオロスという古の魔術師の家系だとか。
そして俺が転生して良かったと初めて思ったのが彼女の存在だ。
彼女はどういうわけか……まぁ小さな頃から面倒見たのが主だろうが、
俺に対して何処までかは図りかねるが好意を寄せてくれる稀有な子だ。
面白いのはこれまで老若関係なく女性には100%好かれるクソモテなマイスを
唯一嫌っている節があるということだ。
「……ルシオ。マイス臭い」
…えっ…!? 僕は今朝お風呂入ったよ?! とか聞こえたが知らぬ。
「さっきマイスと手合わせしてたからな」
「ふぅん…」
そう言ってセラムは俺の背中によじ登って肩車状態になる。
超良い匂いとむにゅむにゅ最高の感触が…ッ!? …転生して良かった……
俺は! 猛烈に! 感動しているぅぅぅぅッ!!
「セラム。お前、ちゃんと食ってるのか?」
「ルシオ。セクハラ」
「……すまぬ」
「おk、許す」
「というか、俺も汗を掻いてるんだが」
「ふしゅー…ふしゅー…」
「!?」
嗅いで…?! うおっ!? 密着率が上昇しました!
やった! 今夜はドン勝だ!(下品注意)
…まぁそれはともかくさておき後の楽しみ(最低注意)として…
ここに集まった面子は全員が今日成人式を迎えるメンバーでもある。
どうやら全員待ちきれなくて早起きしてきたようだ。このお子様どもめ。
安心してください、俺もですよ?
「まさか全員集合とはね。僕も流石に驚いたよ」
「当たり前じゃない! 今日からあたし達もちゃんと外で魔物と戦えるのよ!?」
「正確には成人式が終わってからの話だぞエリル」
「ルティナちょっと黙っててよ!」
「いや、真面目に考えるとだな…」
「あーもー融通が利かない!!」
「ハハハ…やっぱり二人は仲が良いね」
そのまま談笑を始めるマイス達三人。
「だがそれでも軍配はアリア」
「そうなのか?」
「マイスとアリアの間は反吐が出そうなくらい甘ったるい」
「ああ…禿同」
厳密に言えば幼馴染はもう一人いるが、まだここにはいない彼女…アリアは
強いて言えばマイス専用の幼馴染だろうか。彼女は生まれたときから
マイスと一緒で兄妹同然に育った仲だ。普通に義妹もいるのに
アリアという似妹がいるとかあの野郎はギガ☆イン百連発からの
ホーリー、メテオ、フレア、アル☆マ、アギ☆イン、ブ☆ダイン、ガルダ☆ン
ジ☆ダイン、マハ☆ドオン、マ☆ンマオン、メギド、メギ☆ラ、メギド☆オンの
『絶対お前をブチ殺すコンボ』ものだ。だが、許す。
何故なら俺にはセラムがいるから。セラムとはもっと仲を進展させたいが、
下手を打って関係が悪化するのが怖いので大したことは何も出来てない。
俺のクソヘタレ畜生ド馬鹿野郎。
「ちゃんとした朝になったらアリアも来るんだろうな」
「あの女はマイスが居る所には何処にでも涌いてくる」
「涌くって…虫じゃないんだぞ」
「でもアリアが出てきてからのエリルとルティナの苦虫顔は見ていて飽きない」
「…ハハッ…それは同意する」
「ふふ…ルシオと私の共通点」
俺もセラムもいい性格をしている。アリアとマイスのクソ甘ったるい空間は
傍目からするとクッソウザいがそこからエリルウィンダルティアとルティナが
「ごんくそぼけがぁ!」ってな感じで突撃して
ソレナンテ・ラ・ヴコメーさんが登場するのは確かに面白いのだ。
> > >
セラム達女子メンバーはまだ朝食を済ませてなかったそうなので、
俺とマイスで滝川から魚でも釣って朝飯をご馳走してやろうということになった。
「なぁ、ルシオ」
「何だ」
魚達もまだ起きてないのか、釣果がゼロに等しいのを紛らわすためにマイスが
俺に話しかけてきた。
「セラムちゃんはどうして僕を邪険にするんだろうか?」
「知らん」
知ってても教えないが。というか何でそんな事を聞いてくるんだ?
「…ルシオがセラムと仲が良いのは小さい頃から知ってるけどさ…」
色々と何かに苛立ってるのかマイスは手近な石を上流に投げ込んだ。
「むしろ俺が知りたい。何故お前ほどの男を嫌ってるのかを」
友人なのでおべっかを交えて質問を返してみる。
「何ほどなのかは知らないけど…何でだろうね?」
「お前…本気で言っt」
「おわっ!! 大当たりがッ!?」
俺がつい口走った言葉はマイスVS大物の釣りバトルで掻き消された。
「ぬっ! くっ! このッ!!」
「………」
マイスが大物と格闘しているので俺にはまるで当たりが来ない。
セラムに詫びる言葉でも考えるか…?
「せりゃああああああ!!」
一々絵になる構図だな。マイスに釣られた雷魚モドキですら格好良く映る。
「やったな」
「うん! これは食いでがあるよ!」
「………新鮮なうちに締めておけよ」
「勿論さ!」
もこ☆ちないし坂☆さんみたいな動きで雷魚モドキを鮮やか…
…いや艶やかに捌いていくマイスを尻目に俺は俺で当たりを待った。
「………! ふんぬッ!!」
ピクリと反応があったので俺も一本釣りを決めたのだが…
「あ…オオドロエビ…」
オオドロエビ…ロブスター級の大きさの川エビだが…泥エビと
名付けられるだけはあるクソまずい雑魚だった。
「………一応締めておいてくれ。俺はちょっと野苺と苔桃でも探してくる」
「あ…うん…手短にね」
これで採集もダメなら真面目に踏まれる覚悟でセラムに土下座するしかないな。
どこぞの業界では銀髪ロリに踏まれるのはご褒美らしいが、俺からすれば
何故か高めのセラムの貴重な好感度が下がる予感しかしない。
> > >
結局俺はセラムに踏まれたが、セラムは「まずい…お代わり」と
俺の釣ったオオドロエビの塩焼きを食べられるだけ食べてくれた。
もしかすると俺はセラムには一生頭が上がらないのかもしれん。
「…みんな、早いですねぇ…おはよ、マイス兄」
「おはよう。アリア。今日も元気そうだね」
「…っはよー…アリア」
「おはようございますエリルさん」
「遅ようアリア」
「おはようございますルティナさん」
嫌気がにじみ出た表情と声音の(ルティナは露骨だが)女子二人の挨拶に
微笑みの挨拶を返すアリアがツリーハウスを訪ねてきた。
「おはようアリア」
「おはようございますルシオ」
「おはアリア」
「おはですセラムさん」
「ルシオ、間を詰めたげて」
「ああ」
セラムに言われるがまま俺は座っていた長いすの間隔を詰める。
そうすると必然的にセラム、俺、アリアの順となり、アリアの隣は
右向かいになるがマイスとなる。何か反対方向の二箇所から
小さく舌打ちが聞こえた気がするが聞かなかったことにしよう。
っていうか俺が間隔を詰めたらセラムが何故か俺により密着してきた…!
今夜はドン勝五枚イケる。(下品注意)
「アリア、今朝釣った魚の残りがあるけど食べるかい?」
「ありがとうマイス兄。でも私朝ごはん食べてきたからお昼に貰うね?」
「わかった。じゃあこれは甘酢漬けにしておくよ」
マイスは今朝の魚の残りを昼飯用の甘酢漬けにするべく席を一旦離れる。
水場はツリーハウスなので存在しないが、一応台所と呼べる場所で
も☆みちか☆本さんよろしくな調理行為をするマイスの背中を
うっとりと見つめるルティナ、アリア、エリルウィンダルティアの三人。
ふとセラムを横目で見ると魚の骨が喉に刺さったような顔をしていた。
気持ちはわかるが自重しような?
「…これでいつもの面子が揃ったか」
「うん」
「後はもう少し日が高くなるのを待つばかりだね」
魚の甘酢漬けを作り終えたらしいマイスが席に戻る。
アリアたち三人はハッとして佇まいを整えるのが何ともいえない。
「今日は日も長いから成人式が始まるまで結構な時間がありそうだねルシオ」
「そうだな」
「じゃっ…! じゃあさ! みんなで雑魚散らしでもしに行こうよ?!」
エリルウィンダルティアの言う雑魚散らしとは要するに時々山を下って
チッタに入ってくる雑魚魔物をぶっ殺そうという事である。
「ふむ…成人式前の肩慣らしには丁度いいか?」
「そうだね。ルシオとの訓練ばかりじゃ本気も出せないし」
「でしょでしょ!?」
「しかしエリル…万が一怪我をしたら…」
「あたし達が揃ってて雑魚相手に遅れを取るなんてありえないでしょ!?」
「…一理ある」
「…気乗りしませんが、でもマイス兄が良いなら…」
ほぼ満場一致で俺達は成人式が始まるまでに少し村に入ってくるであろう
雑魚魔物を狩ることとなった。それにあたって俺はメンバーのステータスを
そっと確認することにした。記憶が流れ込んでいるとはいえ、
何しろ俺が俺となったのは今日が初めてなのだ。
仲間のステータスを見ておかないと後で困るかもしれないのだ。
というかパーティメンバーのステータスを見ないで冒険に出るか? いや、無い。
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名:セラム 姓:クァルディラオロス
隠し名:【閲覧権限に達していません】 忌み名:【閲覧権限に達していません】
年齢:16(15) 性別:女(処女)
格:5
命:38/38
魔:116/116
心:9
技:2
体:3
<技能>
初級魔術(火)Lv3、初級魔術(水)Lv3、初級魔術(風)Lv5、
初級魔術(土)Lv4、初級魔術(氷)Lv6、古代魔術(天)Lv1、
斥候Lv7、棒術Lv1、体術Lv1、数秘術(三級)、魔力門(第三位階)
<称号>
古大邪神の使徒 妖精大帝の子 妖精数秘術師 大男好き ファザコンLv1
自覚のある変態
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………………なにこれ。どこから突っ込んだら良いのかわからん。
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名:エリルウィンダルティア 姓:【閲覧権限に達していません】
隠し名:【閲覧権限に達していません】 忌み名:【閲覧権限に達していません】
年齢:16(16) 性別:女(前のみ処女)
格:7
命:89/89
魔:51/51
心:6
技:11
体:7
<技能>
棒術Lv5、槍術Lv5、体術Lv4、飛燕連撃Lv5、竜神槍撃LvⅥ、回復魔法Lv3
<称号>
真竜の血族 竜姫士 聖女 ショタコンLv1 面食い 脳筋Lv3
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………いや、だからさぁ…?
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名:ルティナリエル 姓:【閲覧権限に達していません】
隠し名:【閲覧権限に達していません】 忌み名:【閲覧権限に達していません】
年齢:17(16) 性別:女(処女)
格:10
命:113/113
魔:77/77
心:7
技:13
体:10
<技能>
棒術Lv5、剣術Lv5、体術Lv8、星魔法剣(火水風土雷光闇)LvⅢ、連刃Lv5、
霊斬剣Lv3、神速連撃LvⅡ
<称号>
ベヒーモス殺しの覇王ガングレイディグナスの忘れ形見 万魔導戦士
変なところで不器用 脳筋Lv4
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………おうふ。
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名:アリア 姓:チッタ・ディ・モンターニャ・デ・ターリオエルバ
隠し名:エロース・エナ・コリーツィ 忌み名:プロテヘルニクス・カオティキテア
年齢:16(16) 性別:女(処女)
格:1
命:21/21
魔:14/14
心:10
技:1
体:2
<技能>
卓越原初神エロースの加護LvMMM、原初神術LvΦ【未覚醒】、薬学Lv2、料理Lv1
<称号>
卓越原初神エロースの娘 勇者の花嫁 勇者の義妹 勇者の幼馴染 ブラコンLv4
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……あ、良かったアリアは多分普通の村人ステゑゑゑゑゑゑゑゑ!?
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名:マイサロン 姓:マイスレジェム=フィルムナトゥマキシムム
隠し名:アイヌアルタノズィグール 忌み名:【現在の権限では閲覧注意】
年齢:16(34) 性別:男(男・今は童貞、前世はハーレム王)
格:43
命:9999/9999(限界突破時108096)
魔:999/999(限界突破時54336)
心:256(限界突破時3328)
技:256(限界突破時4992)
体:256(限界突破時4224)
<技能>
聖剣術LvⅩⅩⅩⅤ、瞬獄一刀LvⅩⅢ、体術Lv3、剣術Lv41、魔力門(第八階位)
四大属性魔法耐性Lv27 光属性耐性Lv92 闇属性耐性Lv52、無意識防御
無意識迎撃Lv9
<称号>
The勇者 剣聖にして剣鬼 手始めに世界を救いし者 人類統一皇帝の器
アールヴ女王に溺愛されし者 竜王に認められし者 閃光のブランディッシャー
マスターサムライジェネラルの好敵手 形而上存在倒滅者 古代ハーレム王
古大邪神群が恐れし者 忘却の転生者 難聴系男子 ロリコンLv2 ひんぬー星人
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キェェェェァァァァァィエェェェェナンジャコリァァァァァァァァ!?
不名誉称号がアイオブリブステーキの脇のニンジンってレベルですらねぇぞ?!
「あががががが…!?」
「ルシオ…どしたの?」
「…ん? あれ、ルシオ…大丈夫かい?」
俺は武器こそ構えなかったが殆ど無意識のうちにマイスに殴りかかっていた。
「キェェェェェアァァァアァァチエネミィィィィィィ!」
「ひゃ?!」
「うわぁ!?」
俺の渾身の一撃はマイスには届かず、そしてマイスも驚いた顔のまま
俺の鳩尾に強烈なオートカウンターをブチかましてきた。
回避など不可能だった。
「げぶぉろぉ!?」
「ルシオッ!?」
「うわぁあ!! ごめんルシオオオオオオ!?」
薄れゆく意識の中で俺は思った。某巨大掲示板の異世界転生考察スレに
新しいスレ立てするなら、タイトルは…
「負け組人生からのボーナス付転生したんだが、割と多めな幼馴染に勇者だの
真竜の血族とか伝説英雄の忘れ形見とか妖精大帝の子だとか大層な御歴々由来な
面子しかいない件について」
…ってのが…いい…な…ぐふっ!?
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