ロリコンっていつの時代にもいたと思うんですがどうなんですかね
「ヴォエ!」
女性トイレから、ましてや年頃の少女から発したとは思えない音が響く。
嘔吐に近い悲鳴だったが、吐き気も込み上げてきたので勘違いされても別に間違いではない。
ただの飲みすぎだと思われた方がまだマシだ。
もしもあの金髪野郎ともう一度出会ったら髪を引っ掴んで問いただしてやりたい。
「お前ホモかよぉ!」
あっこれはちょっと違うな。
今の俺は花も恥じらううら若き乙女だ。若干の弊害はあるものの、これで勝手にホモ扱いするのはやはり良くない。
やはり自身を再確認したほうがいいな。
どれどれ。
身長は140センチ(体感なので合ってるかは分からない)、体重は30キロくらい。
じゃあ年齢を教えてくれるかな?
14歳です。
14歳?じゃあまだ未成年なんだ?
学生です。
あっ・・・(察し)、あいつロリコンかよぉ!?
どうも。
金髪野郎からのキスに誘われてから気分が著しく低下し、適当に理由をかこつけて拒絶し、ずっとトイレに引きこもっていたわけですが、先ほどようやく舞踏会が終わった所でお父さまに招集をかけられました。ジャンナです。
早々に退席した理由ですか?
嘔吐と踊っちまったんですよ?
という言い訳はさすがに通用しないので、正直に話しておくことにした。
「不慣れな人込みの中に長時間居たものですから、少々気分が悪くなり、御手洗で休憩しておりました」
「そうか。いやしかし、それでも一曲くらいは踊るべきではないか?あれでは断られた殿方に対して失礼だろう」
「そ、それでも気分が優れない訳ですから、あの状態で粗末な踊りを披露することこそ失礼ではないでしょうか」
「なるほど、それも一理あるな。では今回の事は不問としよう。幸い、大きな影響はなかったわけだからな」
おっと・・・?今回は随分と寛大なお父さまだ。
舞踏会主催側がダンス中に姿をくらますなんてかなりの失礼を働いたのになぜかお咎めなし。
これがいつもなら数日は家事手伝いを命じられるぞ。何かいい事でもあったのかな?
あっ、分かった。おめでただ!
「お母さまがご懐妊されたのですか?」
「は・・・?馬鹿を言え、いくつだと思っているんだ」
「じゃあお姉さまですか?」
「長女は産んだばっかりだし、次女は結婚すらまだだろ」
「じゃあお兄さまだ!」
「男で妊娠はできんぞ」
出来るかもしれないだろ!
前世のエロゲーで男の娘は妊娠できるって書いてあったもん!
顔をしかめたお父さまはこちらの意図を察したのか、男気よく笑ってから数枚の紙をテーブルに並べた。
その中から地図を広げ、指さしながら語ってきた。
「まあ良い。言いたいことは大体分かっておる。隠すことでもないから教えてやろう」
「はぁ」
「実はここ数年この国の情勢は大きく変わってな、何年か前の魔物戦争を境に北側の勢力図が一変。土地を肩代わりするという名目でヴィリアーズ家がそのほぼを買収したのだ」
「ヴィリアーズ家といえば百年以上の歴史を持つ名家ではないですか。今では王族に最も近い貴族御三家の一つですし」
「実際はヴィリアーズ家の1強状態だがな。そして喜べ、そのヴィリアーズ家の一人息子が近々こちらで舞踏会を主催することになるのだが、パートナーをお前に指名した。何でも今日の埋め合わせだそうだ」
今日の埋め合わせって・・・あっ!?
あの金髪ロリコン野郎か!?
「よかったなぁ、ジャンナよ。一度ならず二度までも上位貴族に誘ってもらえるだなんて。もしかして気に入ってもらえたんじゃないか?」
ハッハッハとお父さまは陽気に笑って、あの金髪野郎の写真を渡してくる。
なんだこれは・・・、呪いでもかければいいのか?
とはいえ、これで謎が解けた。うまくいけば上位貴族との繋がりを持てる状況だからこそこんなに楽観的だったのか。
って冗談じゃないぞ。
こんなのただの粘着質なロリコンが獲物を自分の巣におびき寄せようとしてるだけじゃないか。
助けてー!ストーカーに襲われてまーす!