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話を聞いても理解はしてなさそう

 どうやら俺は死んでしまったらしい。

 ――と、目の前の男がそう言う。


「う、うせやろ?」

「マジマジ。身体見てみろ」

 ちらっと流し見する。完全に透けてるじゃないか…。

「うおおおおおおおおおおおお!!!!認めてたまるかああああ!!!!!!」

「認めろ。現実は変わらないぞ」




 というひと悶着があり、それからさらに色々あってパンクしそうな頭は一周回って冷静になった。ていうかたぶんパンクしたんだと思う。


「なんかすみません。俺取り乱しちゃってました」

 死んでる人間が神を名乗る男に語りかける言葉ではないと思うのだが、日本人らしく先攻謝罪攻撃をかましてやった。

「気にするな。5人の内4人はお前と同じ反応をする。正直もう飽きた」

「あっ、そうですか」

「落ち着いたならさっさと次の転生先を決めろ。後が詰まってるんだ」


「なんか工場生産されてるパンみたいな扱いですね」

 と茶化そうとしたが、途中で自分がそのパンだと思い当たり踏みとどまる。悲しい世界だなあ。

 しかしもう次の人生か。今世すらあまり楽しめていなかったって言うのに…。未練たらたらだろうがお構いなしに流れ作業で処理される。不平等というか、不公平というか。

 せめて、童貞さえ卒業できていればなあ。

 学生時代はお世辞にもルックスはいい方と言えなかったから誤魔化す様に勉強して、社会に出てから面倒事を嫌って仕事ばかりしていた。彼女の一人すらできない生活をしている俺も悪いのだが、なんだかこのまま終わるのは悔しい。


 何とかならないだろうかと悩んでる所で目の前の男と目が合った。

 なるほど。今世の教訓は来世に活かさねばならぬ。当たり前だよなあ。

「あのー、転生先を決められたりしますか?」

 興味本位で聞いたこの一言をこの先後悔することになるのだが、当時の俺はゲームの攻略法を見つけた小学生のようにわくわくしていた。


 男は俯いて少し悩み、出来ぬことも無い、と小さくつぶやいた。

「お前の人生を覗いてきた結果、後世に子孫を残していないようだな。こちらの世界の一因子が消滅した言っても過言ではないし、そのような人間が次の人生でうまくやっていける確率も低いだろう。まあ、お情け程度だが、転生先の要望を叶えてやらないことも無い」

 やったぜ。

 あっでも、これって今世の人生がクソ雑魚ナメクジ扱いを受けたからこそ貰えた恩恵であると考えると…俺の人生って何か…うん。考えないようにしよう。



 せっかく願いを叶えてくれると言ってるのだから、欲望に忠実に行こうじゃないか。

「恋愛が…恋をしてみたいです!」

「恋愛は普通に生きていればできるものだろう?」

 お前ふざけんなよと胸倉掴みあげてやりたかったグッと堪える。大丈夫だいじょうぶ、俺は殺ればデキる子。こんなところじゃあ目くじらを立てないぞ~。舌は嚙みちぎれそうになったけど。


「でもやっぱり男で恋愛してみたいものなんだって。できれば超絶イケメンでお願いします」

「ふむ。イケメンか。もっと詳しく言ってみろ」

 おっと、これは欲望を完全に開放しちゃっていいんじゃないですか?

「金髪碧眼、高身長、高収入、文武両道で、常にキラキラオーラ出してて、家柄も良くて、誰からも好かれるような王子様みたいな男がいいぜ!」

 ふふふ。あえて言わなかったが、ここまでの条件が揃ってしまえばモテないはずがない。言い方は悪いが入れ食い状態だって考えられる。

 残りはこいつが承認するかどうかだが…?

「ふむ。まあいいだろう」

 勝ったッ!第三部完!待ってろ異世界ライフウウウ!

 内心これ以上にないガッツポーズをかまして自分を祝う。やっと俺にも春は来るんだなぁって。



「男はこれでいいだろう。女の方はどうする?」

 てっきりもう終わりだと思っていたのだが、まだ要望を組んでくれているようだ。

 というか女っていう聞き方が既にもういやらしいじゃん。

「ここまでしてもらっていいんですか?もちろん喜んで甘えますけど、何人まで許してくれるんですか?」

「そんなの一人に決まっているだろう。分裂でもするつもりか?」

 いやいや、分裂しなくても数人くらいなら相手できますって、とかいう下ネタはさておき、どうやら神さまは1対1の恋愛をご所望らしい。


 でも一人かぁ・・・。まああの条件なら女の子には困らないはずだし、今は思いついたかわいい子でいいか。

「銀髪のかわいい子がいいです。今放送中の魔法少女ルルアちゃんみたいな子です」

「それだけか?」

「まあ、そこまで困りませんので」

 他にも食いたい放題だしね。


「そうか。一応お前の要望通りに転生先を組んでやった。今度はちゃんと人生を謳歌するんだぞ」

「もちろんですよ」

 

 これが神さまとの最後の対面だった。

 ありがとう。俺、ちゃんと女の子とイチャイチャしてくるよ。




 ざわざわとした喧噪から目を覚ます。

 目すら開けられない状況だが、恐怖は全くない。きっと周りが俺の助産をしているのだろう。

 ならば今は赤ちゃんらしく泣き喚いてやろうと俺は思った。

 

 誰かが俺を持ち上げ、こう叫ぶまでは。

「奥様!やりましたよ!元気な女の子です!」


ファッ!?


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