放火魔
「一体何がどうなって……」
私はこの不可解な現象に頭が追いつかない。
いや、この現象に追い付く程、頭の整理が得意ならもっといい点数をとっているはず。
いや、そんなことはどうだっていいのだ。
まず、この状況をどうにかしないと。
「そういや、秀哉聞いたか?最近、ここら辺で火事が多発してるらしいよ」
「そうらしいね、警察が放火魔が出たという確信は持ってるらしいけど、証拠が不十分らしいね」
「怖いね〜俺の家も狙われなきゃいいけど」
必死に悩んでいる私を差し置いて、隣の秀弥君と冬華君が話している。
この2人は、呑気に世間話を話している、私と大違いだと、皮肉を挟んで思った。
それにしても、放火魔か…。
「え?」
放火魔の話を聞いていると、スケッチブックの流星群の絵がまた光り始めた。
しかし、周りの人は気づいていない。
最初は黄色に、次は赤く光る。
私が、この現象にキョドっていると、
ジリリリリリリリ!!!
急に大きなサイレンがなった。
「!?」
周りがザワザワし始める、そして先生の一声でピタッと止まる。
校内放送によると、一階のゴミ捨て場から、謎の出火らしい。
まさか、と思った次の瞬間。
ドォォォォォン
大きな爆発音と共に床が揺れる。
「えっ!」
私はバランスを崩して、転びそうになった時、咄嗟に秀哉君が引き止めてくれた。
冬華君は先生に対処法を聞き、先生が皆に非常階段による脱出を促された。
「何があったんだろう……怖いね」
幸子ちゃんが震えた声で話してくる。
私も怖い、そう伝えると、そうだよね、と言いながら手を繋いできた。
こういう時に人の温もりは大切だなって感じる。
「!! キャアッ!」
次の瞬間、幸子ちゃんが派手に転ぶ。
それに釣られて、手を繋いでいた私も転ぶ。
非常階段から、転げ落ち、ゴミ捨て場の方へ吹っ飛んでしまった。
ボオォッ!
周りを見渡すと、暑苦しい炎が私達を囲んでいた。
そして、炎の真ん中に誰かが立っていた。
「……誰?」
うちの学校の制服を着た、1年生らしき少年が話しかけてくる。
私は何が起きたかわからないで、黙っていると、
「なにか喋れよ」
と、言いながら炎を飛ばしてきた!
私は何が起きたか分からず、ギリギリ反射的に避けることが出来た。
いや、体が勝手に逸れた、と言うべきか。
あの能力がまだ続いているとしたら、私は今、彼が放ってきた炎を避けたのだ。
「はぁ?なんで、今、お前避けれたの?」
「ま、いいや、死ね」
さっきよりも、大きい炎を、私ではなく、幸子ちゃんに向けて放つ。
幸子ちゃんは、吹っ飛んだ衝撃で気を失ってしまっており、私は必死に幸子ちゃんを掴み、避ける。
やはり、能力のお陰で身体脳が上がっている。
「なんだお前?お前も何か変な能力持ってんのか?」
「………」
「答えろよ!」
私は、能力で近くにおいてあった鉄パイプを引き寄せ、キャッチし、走りながら相手に向かって殴りつける。
しかし、相手は軽々と避け、私の脇腹に蹴りを入れてくる。
反射的に鉄パイプで蹴りを防ぐ。
「……お前、先輩か……運動能力そこまで高くなかったすよね?」
「てことは…やはり、お前、いや先輩もあの流星群の能力すか…!」
「流星群の能力……どういうこと?」
「アハハ!やっと口を開いてくれた…もしかして知らないんすか?」
どういうこと?やはりこの謎の能力と流星群は関係があるの?
「どういうこと?教えなさい」
私は鉄パイプを強く握り、いつでも炎が飛んできても良けれるように臨時体制で話を聞く。
「いいすよ、教えてあげますよ、俺に勝てたら……ね!」