episode1〜能力の覚醒〜
「おはよう」
教室に入ると友達が私の顔を見て挨拶をしてくれる。
何時ものこそながら、平和だな〜と感じるひと時である。
私が席に着いたのを確認すると、友達のみんなが私の席の近くに来て挨拶をしてくれた。
みんなに挨拶を返しながら、スケッチブックを取り出し家で描いてきた絵をみんなに見せる。
「ん?恩ちゃん、これなに?」
スケッチブックをペラペラとめくっていたところ、友達がとあるページで止めてと言わんばかりの声で言ってくる。
そのページには、大規模流星群の絵が描いていた。
「三ヶ月前に大規模流星群があったでしょ?それを描いたの」
嘘をつく理由も別にないし、普通に受け答えをする。
友達は凄く綺麗だね、と褒めてくれた。
自分でも絵を描くのは上手いと自負している。
友達と話していると、隣の席の男の子が教室に入ってきた。
友達が隣の男の子の席まで進出してるから、男の子が座りにくそうだが、なんか慣れたような顔で苦笑いをしている。
「ちょっとすまん」
男の子はそう言って、友達に避けるように指示する。
友達はごめんとも言わずに、無言でこっちに来る。
少しくらいは謝ろうよと思ったが、わざわざ言うことではないと思って私も黙る。
「………流星群の絵か」
隣の男の子はボソッと何かを言って男子のグループの方に歩いて行った。
私は時計を見ながら、みんなと駄弁っていると、まだ時間的には余裕があるのだが先生が来てしまったので、みんな自分の席に戻り始める。
そうすると、待ってましたと言わんばかりに隣の席の男の子が席に座った。
「流星群の絵、上手いね」
「う、うん」
唐突に言われたので、焦って相槌しか打てなかった。
しかし、隣の男の子は満足そうに微笑んで前の席の男の子と話し出した。
「よう、秀哉!」
「おはよう、福嶋」
今、お互いに名前を呼びあっていたが、隣の男の子の名前は 山崎秀哉
前の席の男の子は 福嶋冬華と言う。
秀哉君は一時期、私と凄く仲が良くて付き合っているという噂を立てられたが付き合ってはいない。
お互いのためということで、距離を取っていたのだが、席替えのくじ引きで隣の席になってしまったのだ。不覚。
「ん、秀哉、数学の課題やって来た?」
「ああ、10分で終わらせた」
「えっ!?早っ!?」
嘘でしょ?え?
私でも、30分以上かかったあの課題を10分で終わらすなんて……。
確かに、秀哉君は数学と英語はとてもできる、本人曰くテストの点数は悪いらしいが、授業での発言数は毎回トップだ。
驚いていたら、ペン回ししていたペンを落としてしまった。
それを素早く前の席の友達が拾ってくれる。
「ありがとう〜幸子ちゃん」
「んーん、大丈夫」
前の席の友達の名前は 朝倉幸子。
成績も優秀で容姿端麗で、多分男子の中で一番モテている存在だと思う。
私のニキビがある顔とは大違いだ。
ニキビのことを言うと、秀哉君がいつも起こってくるんだけど何故なんだろう…。
「じゃあ、HR始めるぞ」
先生の掛け声と共に、みんなの会話がフッと消える。
日直の子が前に出て、挨拶やら日程確認やらをしている間、私はずっと絵を描いていた。
と、またペン回しをしていたら落としてしまった……慣れないことはするもんじゃないな。
あぁ、届きそうで届かないギリギリのもどかしい感じだ……ぐぬぬ。
フゥゥッ
パシッ
? 今何が起きたのだろうか
5cmくらい私の指とペンの間に距離があったのだが
ペンがこちらに浮いてきたではないか、見間違いやら風で飛んできたのなら分かるが…。
明らかに宙に浮かんでこちらに飛んできた。
疲れているのか、寝ぼけているのか、とりあえず気にしないことにした。
しかし、同じ現象は続いた。
授業中消しゴムを落としたり、体育の時間のバスケのボールやら、給食時間の牛乳やらと、自分の望む方向に進むのだ。
何か悪いものを食べたわけではないのだが……。
色々と考えても拉致があかないので、とりあえず絵を描くことにした、が。
何かおかしい、違和感を感じる。
そうだ、流星群の絵のところが光っているのだ。ピカピカっと、私にだけ分かる感じで。
近くにいる友達は全く気づいていない。私だけか…?