北欧の神
是非、よろしくお願いします。不定期で連載していこうと思います。
何度も恐怖に押しつぶされそうになりながらも、俺はただ息を殺して耐えた。
いつも通りだった日常が崩れていく。
この数分で覚えているのは、クラスメイト達の死に様と恐怖に怯える君の言葉だけだった。
死に物狂いで逃げ延びて、隠れた。
それしか考えれなかったのだ。
-数時間前-
ここ、神威育成高等学校は日本に住む神家出身者や神威者を管理育成する学校である。
他国の所有する神威者の軍事利用に対し対応すると共に神威の暴走を防ぐのが役割で神と人が共存する世界でなくてはならない場所だ。
なんせ神威者は神の力、要するに国一つ破壊しかねない力を持つのだ。
俺も神威者としてこの学校に通っているが、まだその力を使えずにいた。
神威は練習して使えるようになるわけではなく、人それぞれ能力が覚醒するタイミングがあるのだ。
先生は普通の人間だが国家機関に所属しているらしい。
「基本的に神威とは、神の力のことであり、その内容は人によって違います。しかし各自自分の能力はある程度理解しているはずですね。桐谷くん、君の能力は?」
「え?あ、え?」
雲を眺めていた俺は不意に指名され、意味不明な返答をしてしまった。
これでは好感度がだだ下がりだ。
「桐谷くんの先生は雲の上にいるのかな?」
これは挽回のチャンスかと、頭の中で最高の答えを探し当てた。
「いや、天国のじいちゃんがなんか囁いてる気がしたんですよ。」
静まり返る教室。
完全にスベった。
「それでは、鈴谷さん。君の能力は?」
何事もなかったかのように話を進める先生。
俺の心はすでに瀕死だ。
「私の能力は、治癒と再生です。」
クラスメイトさえ微動だにせず話を進める。
「そうですね、癒しの神様の能力はとても便利で素晴らしいです。」
微笑む鈴谷さんがこっちを向いた。
かわいい、やばい、かわいい。
俺の心も彼女の力で再生されていく気がする。
「それでは次の‥‥」
授業は俺の瀕死の心を無視して進んだ。
『緊急事態が発生しました。生徒諸君はその場に待機。教職員は職員室に集合してください。』
授業中に急な放送に警告音。
何事かと、皆驚きを隠せずにいる。
「静かに。私は職員室に行くのでここに待機していてください。」
しばらくすると外から轟音が鳴り響いた。
何かが落ちてきたようだ。
近くの民家から土けむりのようなものが上がっている。
俺もクラスメイト達も窓に張り付き、それを見ていた。
そして少しの間の後、槍のような物が学校に向けて飛んできた。
窓から乗り出して見ていた俺は、その槍が校舎に当たるのを見た。
間もなく、校舎が半分ほど消し飛んだ。
ものすごい轟音、爆風に襲われ、気がつくと机や椅子、瓦礫そしてクラスメイトだった『物』が散乱していた。
俺も、クラスメイトも何がどうなっているか分からなかった。
数秒後、鈴谷が口を開いた。
「逃げなきゃ、ここは危ない‥‥」
皆無言でその言葉に従った。
本当なら混乱してパニックになっていてもおかしくない状況のはずだが、皆とても冷静だった。
きっと今起こっている事に少し心当たりがあるのだろう。
「どこに逃げる?」
「多分、学校を離れた方がいいぞ」
「神威を使える奴は何人だ」
「今ここにいる生存者14人中神威を使えるのが7人、そのうち武神系が3人だ」
皆案を出し合い必死に安全な場所を探していた。
そんな俺たちに1人の男が近づいていた。
ありがとうございました。次回もよろしくです。