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Prologue

 昔ある村に、それは美しい、気立てのいい娘がいた。娘は村一番の美人ともてはやされ、数多の男から求愛された。

 その村の長の息子も多分に漏れず、彼もまた娘に恋をしていた。息子は金持ちの家の優男であったために、娘も満更でないような様子だった。

 彼は父に、娘との結婚を認めてほしいと頼んだ。しかし村の長は、それを認めようとしなかった。息子には既に決められた許婚がおり、一平民にすぎない娘と自分の後継ぎの結婚など、断固認めるわけにはいかなかったからだ。

 そして冬のある夜のこと、長の息子と娘は互いに示し合わせて、闇にまぎれてこっそりと村を抜け出し、村から少し離れた山の中に逃げ込んだ。翌朝、そのことを知った村の長は直ちに捜索隊を出したが、二人はその追手をかわし、二人は行方知れずとなった。

 しかし、息子と娘が山に逃げてから数日後のことである。ぼろぼろになった上等な着物をまとった村の長の息子が村に帰ってきたのだ。二人で駆け落ちしたまではよかったが、厳しい寒さと山中の暮らしに耐えられなくなった息子は、夜になるのを待って娘を置き去りにすると、たった一人逃げ帰ってきたのである。息子の恥ずべき行いに村の長は激怒したが、息子の無事を安堵する気持ちが勝り、娘のことはやがて忘れ去られた。

 それから一年が経ち、次の冬がやってきたある夜のこと、村を猛吹雪が襲った。吹雪は一晩中びゅうびゅうと吹き荒れ、村の長やその息子を含め、村の住民は各々の家にこもり吹雪をしのいだ。

 そして夜が明け、朝日が真上からさんさんと地を照らし出しても、村の長の息子は起きてこなかった。小間使いが様子を見に行くと、息子は氷漬けになって、かっと目を見開いたまま、布団の上で冷たくなって死んでいたという。

 村人はこれを聞いて、一年前に山に置き去りにされたある娘のことを思い出した。そして、これはきっとその娘の呪いだ、と噂した。その数日後、今度は村の長が変死体となって見つかった。息子と同様、吹雪の次の朝に、こちらは内臓を根こそぎ喰われ、空っぽになって道端に転がっているのが発見されたのである。

 娘の呪いに一層確信を持った村人たちは、娘の霊を鎮めるべく、村に小さな祠をつくり、日々娘のために祈ったという。

お読みいただいた方は、筆者の後学のためにも感想を書いていただけると大変助かります。どうかよろしくお願いいたします。

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