LIGHT 7:ダース星にて
この話から、書き方が若干変わります。(段落で一マス空ける…など)
今まで読みにくかったと思いますが、これで少しは見やすくなった…かな?
ごめんなさい、自信ないです(__;)
ーーダース星、王の間。
「またか」
四天王リヴァウスの冷たい声が、相変わらずの薄暗いこの部屋に溶けて消えた。
先程までリヴァウスは、地球の様子を王の間にある水鏡を通して見ていた。リヴァウスが放った、2つの頭のワルーモノは勝利によって消されてしまったところだ。
(私の血を浴びせただけでは、無理だったのか)
ふと自分の腕を見た。すっ……と、横一文字に鋭い刃物で切ったような痕があった。じっとその場所を見ていると、じわじわと忘れていた痛みが体を巡った。
(ワルーモノ様……)
「こんなところで何をしているのです?」
はっとしたリヴァウスは腕の傷から目を離した。王の間に入ってきた人物は、コツコツと足音を立てて近づいてきた。時折、身に纏っているマントを翻す音が聞こえた。
「隠さなくてもいいじゃないですか」
ルシガルがひょっこりと頭を出した。相変わらず、青白い顔をしている。リヴァウスはあからさまに嫌な顔になった。
「お前こそ、何しに来た?」
「あなたと同じですよ」
ルシガルは静かに笑って、リヴァウスの後ろに隠れている水鏡を指差した。そして、リヴァウスの横を通り鏡の前に立った。
「また、やられましたね?」
ルシガルはにやりとしてリヴァウスを見た。その視線が、リヴァウスの腕の傷がある場所で止まった。
「今回はあなたの血も混ざっていたというのに。大変残念なことです」
「ふんっ。次は完璧なワルーモノを作って小さき光を消してみせる」
リヴァウスはきっとルシガルを睨みつけた。
「ご自分の体に傷を付けるくらい、地球侵略にご熱心なのですね」
ルシガルのこの発言に、リヴァウスは唖然とした表情になり、だんだんと眉間にしわを寄せていった。
「地球侵略だと? 地球を我らの手に戻し、再びワルーモノ様の世界に戻す。それが我らの目的。侵略など卑劣なものと同じにするな」
リヴァウスがぐっとルシガルの胸元を掴んだ。掴まれたルシガルは怯みもしないで高い声で笑った。やや吊り目の瞳がきらりと光った。そんな態度がますますリヴァウスの怒りに触れた。
「何がおかしい!」
「ははっ。そんなに怒らないでください。少し言葉を間違えただけのこと。しかし、あなたを不快にさせたのは謝ります」
しぶしぶリヴァウスは掴んでいた手を離した。ルシガルはぴっと、マントのしわを直した。
「私をバカにするのは我慢できる。が、ワルーモノ様を侮辱する者は誰であっても許さない」
リヴァウスはもう一度、きっと深緑の瞳に力を込めた。それに怯むことなくルシガルは、相変わらずの読めない笑みを浮かべた。
(ルシガル。貴様は一体何を考えている?)
「リ、リヴァウス。今度は、オ、オレにやらせろぉ」
またこの王の間に四天王がやってきた。大きな体を持つ四天王アラキモデウスだ。今日もだらしなく涎を垂らしている。
「アラキモデウス、お前に作れるのか?」
リヴァウスは疑うような口調でアラキモデウスを問いただした。
地球にやってくるワルーモノは、この四天王が作り出したもの、いわば分身のようなものだ。このような力が使えるのは四天王とダース星の主、ワルーモノだけだ。四天王もまた、親玉ワルーモノから作り出された存在なのである。
「オ、オレは作れないけど、オレは強いっ」
アラキモデウスがぶんっと太い腕をリヴァウスに見せつけた。
(確かに力はこの四天王の中で一番強いが……)
リヴァウスは口元に手をやって考えた。すると隣に立っていたルシガルが、
「頭脳派のあなたが失敗した……ならば、次は力重視のアラキモデウスが地球に降りるのはいい作戦だと思いますね」
と、口を出した。アラキモデウスはにたにたと笑い、嬉しそうに手足をばたつかせた。どしんっどしんっと、床が抜けるような音が広間いっぱいに響いた。
「分かった、分かったからアラキモデウス、暴れるのはやめなさいっ」
リヴァウスが声を荒げた。するとアラキモデウスは、はっと我に返り手足の動きを止めた。
「じゃ、じゃ、オ、オレ、行ってくる」
アラキモデウスが王の間を後にした。
「……どうなると思いますか?」
ルシガルが、アラキモデウスが出ていったのを確認してリヴァウスに聞いた。
「……知らん」
リヴァウスはそう答えて王の間を後にした。
一人残ったルシガルはくっくっと笑いを噛みしめた。
「リヴァウスは負けず嫌いなのですね」