LIGHT 0:プロローグ
初チャレンジのジャンルです(σ・∀・)σ
皆様、どうか最後までお付き合いくださいm(_ _)m
新歴史2100年。
広い宇宙の中で、青く輝く星がある。その星の名は地球。
その美しく平和な地球に、ある日突然、宇宙からの侵略者『ワルーモノ』が現れた。ワルーモノは次々と人間に攻撃を与えた。
これに対抗するため、全世界の科学者及び最高権力者が力を合わせ、対ワルーモノ部隊を各国に作った。その中でも、特別な力を持っている人間がいた。
世界は彼を『地球の希望の光』と呼び、地球上全ての生物の救世主として崇めた。
そして今、新歴史2210年。宇宙の侵略者ワルーモノと今も戦っている。これはそんな世界での物語である。
「地球防衛隊アジア国第1管区日の丸。略して、地防アジア第1管区日の丸……。カッコいいね、勝利」
大山 瑛子が朝の新聞を広げて、隣に座っている木山 勝利に話しかけた。勝利はむすっとした表情で、
「略してって、略しても長いし」
と、新聞にケチをつけた。
勝利と瑛子は高校1年生。夏休みを終え、今日から新学期が始まった。瑛子はハサミを持ち出して、ある新聞の記事を切り抜こうとしていた。
「何してんだよ」
「切り抜き。あたしね、勝利のアルバムを作ってるの」
チョキチョキと、リズムの良い音を奏でながら、瑛子は自慢気に言った。勝利は呆れた顔をした。
「アルバムって悪趣味な」
「どうして? 恋人の活躍を記録に残したいのは当たり前でしょ」
瑛子はふんふん〜、と鼻歌を歌いながら、カバンから分厚いアルバムを取り出した。開いてみると、そこにはびっしりと新聞の切り抜き、雑誌の切り抜きが貼られていた。
「またコレクションが増えました〜」
上機嫌の瑛子は、ニコニコと満足そうに笑った。逆に勝利はうんざりとした表情になった。
「いいよな、お前は。全部、前向きに考えちゃうもんな」
「それがあたしの良いところだよ」
勝利は、はぁ……と溜め息をついた。そして、くしゃくしゃと瑛子の頭を撫でた。瑛子はくすぐったそうに笑った。
新学期始めの授業を終え、勝利と瑛子は街を歩いていた。今日は前から、瑛子の買い物に付き合う約束だった。瑛子はいろんな店に入っては
「ね、これどう?」
と、勝利に意見を聞た。そのたびに勝利は、面倒くさそうに
「いいんじゃね」
と、答えていた。
(どうせ俺が意見したって聞かないくせに……)
勝利はだるそうに瑛子の後をついて歩いた。勝利の言う通り、瑛子は勝利の意見が聞きたいわけではない。ただ、そういうシチュエーションを楽しんでいるのだ。瑛子曰わく、そういうやり取りって恋人同士って感じがするでしょ?
「勝利、お腹空いたね。何か食べよっか」
瑛子は両手に大きな紙袋を持っていた。勝利がすっと手を差し出した。
「貸せよ」
「あ、ありがと〜」
瑛子は片方の荷物を勝利に渡し、商店街に並んでいる喫茶店に入った。勝利が後ろに付いて行こうとしたとき、キィィンと耳の奥を刺激する高い音が勝利の耳に入った。
「……来る。瑛子!」
勝利は店に入った瑛子を呼んだ。瑛子は勝利の元へ戻った。
「奴が来た。悪いけど俺行くから」
「あ、うん。頑張ってね!」
勝利は手に持っていた荷物を瑛子に渡し、瑛子の額に軽くキスをした。そして、ひゅんっと風を切るように走っていった。あっという間に、瑛子の目の前から姿を消した。
奴は駅前の広い公園で暴れていた。すでに一般市民は避難されていて、公園に残っているのは、このアジア国第1管区日の丸の軍隊と奴……ワルーモノだけだ。
ワルーモノは、体長10メートルはあろう大きさだった。体全体を赤色の硬い皮膚で覆っていた。大きな口からは鋭い牙が見えた。手足の爪も鋭く、ワルーモノがじたばたと騒ぐたび、空気が裂ける音がした。
ワルーモノは地面が揺れてしまうぐらいの、大きな鳴き声をあげた。揺れた地面に足を取られて、公園の軍隊達はなかなか手が出せない。すると空から数機の戦闘機がやって来た。
対ワルーモノの戦闘機だ。
各機とも一斉にミサイルをワルーモノに撃ち込んだ。ワルーモノは悲鳴に似た声を上げたが、ミサイルの効果はあまりないようだ。すぐに体制を整えて、空気を吸い込んだ。そしてかぱっと大きな口を開けた。そこから光の熱線が発射され、空を飛んでいた戦闘機3機に命中した。3機のパイロットは脱出ポットで運良く逃げられたが、操縦不能になった戦闘機が周りの建物に墜落し、あちこちで炎が上がった。青かった空が、煙の影響で真っ黒に染まった。
「あーあ、仕事増やしちゃって」
公園に突然男子高校生が現れた。軍隊の1人が、男子高校生を止めた。
「一般市民は立ち入り禁止だ!」
「あれ? あんた新米さんだね。俺を知らないなんて。聞いたことない? 『地球の希望の光』って言葉」
男子高校生はにんまりと笑うと、すたすたと軍隊の前線に向かった。
「『地球の希望の光』だって……? もしかして彼が……彼が、木山 勝利?」
前線に立った男子高校生、勝利はゆっくりと目を閉じた。
『全軍隊に告ぐ。今からこの場を離れろ。あとは俺の出番だ』
勝利の声が、軍隊全体に響き渡った。そしてあちこちで撤収の準備を始めた。
「さぁ、ワルーモノ。こっからは俺が相手だぜ?」
勝利はふっと涼しく笑うと、地面を蹴り上げ、ワルーモノの顔の高さまで飛び上がった。そして勝利の左足の蹴りがワルーモノの顔面に直撃した。メキメキッとワルーモノの骨が割れる音がした。ワルーモノはその場に倒れ込んだ。勝利はすたっと空中から地面へと落ちた。
(これで終わりか?)
勝利が構えていると、ワルーモノはピクピクと体を震わせ、再び体を起こした。
今度はワルーモノの大きな右足が、勝利の頭上に下りてきた。足で潰しにきたのだ。勝利はぐっと両手でワルーモノの右足を支えた。ぐぐぐっと、ワルーモノは右足に力を加えた。と同時に、勝利の腕にもワルーモノの力がかかった。勝利はふんっと勢いをつけて、ワルーモノの右足を押しのけた。ワルーモノはそのまま、後ろのほうへ倒れ、仰向けの状態になった。
「そろそろに終わりにしようか」
勝利はぐっと左手に握り拳を作った。すると、どこからともなく小さな光が集まり、勝利の左手は眩しいほどに光輝いていた。
「じゃあな」
勝利はその拳を空高く上げ、一気にワルーモノの晒された大きな腹に一撃を食らわせた。その場が光の白一色に染まった。
「ピギャァァァ!」
ワルーモノは耳が裂けるくらいの悲鳴をあげて、灰となって消えた。
「……任務終了」
勝利はするっと、制服のネクタイを外した。
遠くに退却した軍隊から拍手がわき起こった。先程の新米軍人が唖然として、望遠鏡を通して勝利を見ていた。
「信じられん……彼はまだ16歳の少年だろ。一体どうしてこんな力を……」
『地球の希望の光』
その正体は、アジア国第1管区日の丸で、普通の高校に通っている16歳の男の子。
木山 勝利なのだ。