人生暇つぶし
連作
『人生は長い長い暇つぶし』
高校時代に聞いた言葉が、今になって身にしみる。誰の言葉だったか。友達? 先生? それとも何かの本?
思い出せないし、その時には興味も持たなかったのに、何故か聞いたという事実だけ覚えている。
忙しい毎日。終わらない仕事。
なのに、酷く退屈している心。
「暇だ」
乾ききった眼が文字列を睨み、ささくれ立った指がキーボードを叩く。忙しなく働いている最中、漏れ言葉がこれだ。
「頭、大丈夫?」
「……失礼」
腐れ縁の同僚のキツイ一言に、二つの意味を乗せて返す。
相手に注意と謝罪を込めて。
「……アホくさ」
そんなどうでもいいことに、頭を使っている場合ではない。
早く、片付けないと。
カタカタ――カチ、カタカタ……カチッカチ、カタタ………
「暇だ」
一段落。本当に暇になってしまった。仕事の片付いた達成感と倦怠感が一挙に押し寄せる。
学生のころにはついぞ体験しなかったもの。虚無感ともいえる。
あまり、嬉しくはないが。
「お疲れ」
「ん」
席を立ち、喫煙所へと足を向ける。
火をつけ、吸い込み、すっと吐く。
ドーナツ状に薄く浮かび、揺らめいて消えた。
「何をしているんだか」
「生きているんだよ」
背後から聞こえる、同僚の声。
大きく出たなとは思うが、間違っちゃいない。
もう一度吸い込み、ふっと吐く。
ドーナツ状に薄く浮かび、先ほどより長く残った。