鈴木と佐藤と部活動 後編
神社での収穫はなかった。霊の存在はわかったが祓うことまではできなかった。しかし、一つだけ判ったことがある。俺らの中に二つ霊がいたらしい。これはあの微少女についているのか、俺や佐藤についているのかはわからない。ただ、悪い霊ではないらしいのでひとまず安心して良いだろう。
「すいません、私のせいで無駄足で……」
微少女があやまってきた。
「謝ることはないさ。それより、こっちが謝るもんだよ。なにも力になれなくて……」
「いえ、とんでもない。とても、役に立ってくださいました!」
「たとえば?」
ちょっとからかってみる。
「た、たとえばですか!? えと、その……」
予想通りの反応。やはりお世辞か。いや、この世の半分以上はお世辞でできてるから別にいいんだけど。
「冗談。からかっただけ」
「え? あ、そうなんですか」
帰り道、工事現場の近くを通った。家を建てている。これは、もしかするとフラグかもしれない。
そう考えていると、空から金槌が降ってきた。もちろん、微少女の上に。これはやばいぞ。
「危ない!」
無論、微少女を助けようとする。間に合わない。
「いやあああぁぁぁぁ!」
……ふう。やっぱり、お約束だな。
「あれ?」
微少女の上で金槌が止まった。本当にお約束。幽霊が助けてくれた。
「幽霊さん……」
幽霊の姿は見えないが、どこか、優しい空気を感じる。ふと、佐藤が小さな声で声をかけてきた。
「鈴木、あの幽霊はあの女の子のお父さんだ」
「え? お前、幽霊見えるのか?」
「ああ、ちょっとな」
お父さんねえ。お約束だな。多分。
金槌を落とした男が降りてきて必死であやまりに来た。その後、微少女はお詫びの品をもらったりもしたらしい。
それから少し時間がたち、何もなかったように歩いている。
「まだ明るいね。今から三人で寄り道でもするかい?」
「いえ、今日はちょっと用事があって……て、あれ? 今───」
突然、電車がくる。がたん、がたん、大きな音を立て、それ以外の音はかき消される。微少女が行ったことはわからなかった。だが、まだわからなくてもいい。そんな気がした。
それから少し歩いて三人は解散した。
俺は家に着き。微少女の言おうとしていたことを考えてみた。彼女は、何を言おうとしたのだろう。俺が言った言葉におかしなところがあったのか? いや、普通のことを行ったはずだ。ならばなんだ? 周りになにかがあったのか? わからない。
今、考えるとこの謎はとても簡単なものだったんだ。その答えをこのとき、俺も思いついた。でも、これはありえないと思い考えるのをやめた。いや、ありえないとおもったからだけじゃないかもしれない。俺はあの時、考えなくなかったんだと思う。
俺にとって、忘れられない一年間が、始まった。
今回はシリアス風味です。
次回からはまたギャグ(?)にもどるつもりです。
ちょっと、物語は動いたんじゃないでしょうか。
読んでいて、わかった方も多いと思います。でも、まだそれは心の中に……