鈴木と佐藤
佐藤を探して、一時間ほどがたっただろうか。あたりはもう暗くなっていた。俺も探すものの姿をわからないし、そもそも居るのかすらもわからないからそろそろ今日の捜索は中断しようと思っていた。その時、俺は一つの人影を見つけた。あ、あいつは……
「おい! 木村!」
「あ、会長!」
そこに居たのは木村。こんな時間にいったい? てか、あれ?
「お前、目みえないんじゃなかったか?」
「はい……でも今、僕は何かに向かって歩いています。何なのかはわからないんですけど……」
「……大体俺と同じだな。よし、着いていく。お前を一人で歩かせるのも会長として見過ごせん」
「はは、すいません」
それから、いくら歩いただろうか。三十分程度歩いただろうか。また、見覚えのある人影があった。
「あ、会長と木村!」
居たのは本田だった。俺は本田に事情を説明する。
「会長たちもですか。私も、何かを探してるんです。何か……いや、副会長を!」
副会長……? 副会長…… 副会長……!
「そうだ! 佐藤は副会長だったんだ!」
思い出す。なぜ俺はこんなにも重要なことを忘れたのだろうか。それが、『この町の意志』なのだろうか。ん? 『この町の意志』ってなんだ?
「ともかく、皆同じ方向につられているっぽいな。一緒に行動できるだろう」
俺と木村に、本田が加わった。この二人、そして俺が引かれている方向は俺はあまり寄らない道。たしかあっちには古本屋があったな。
「おーい!」
歩いていて、突然後ろから声をかけられる。後ろを振り返ると、そこにはやはり、俺の生活。俺の人生には欠かせないメンバーの一人が居た。
「よ、茜」
これで、あとはお前だけだぞ? お前がそろえばもう、全員そろう。そう、全員。なあ、お前はもしかして、俺と、お前の物語を終わらせたつもりなのか……?
腕時計を見ると、針は十一時半を刺していた。
古本屋までたどり着いた。古本屋の前で皆の足が止まる。
「ここですね」
「ここだな」
「ここだね」
「ここね」
一見、ただ古本屋にきただけにも見えるが違う。ここに佐藤がいる。なんでここ? そんなのわからない。ただ、ここに居る。その事実だけがはっきりとある。
後ろから、佐藤に似ている気配を感じた。後ろには見覚えのある、でもほとんど知らない人がいる。
「や、皆さんおそろいで」
「こんばんは、月下さん……」
なんとなく、会いたくなかった。あってはいけない気がしていた。この人は、俺たちにとって特のある人ではないと思う。いや、この人といたら損をする、そこまで考えていた。
「安心して。今回は危害は加えない。いや、一回もキミタチに危害を加えたことはないけどね」
この人は何者なのだろう。佐藤のことを知っていた。だれもが忘れていたはずなのに。いや、もしかすると……
「あなたは、人間ですか?」
俺は、何も考えず口にした。
「……君は、面白い。初めてだよ、僕に向かって人間かと聞いたのは。そう、僕は人間ではない。僕はこの町の神の一人。ね? 名前、一緒でしょ?」
神? 何を言っているんだ、この人は。でも、なぜかわかる。この人が人間ではないのはホントウだと。
「佐藤君は、もうキミタチのスグソバにいる。あ、一つ言っておこう。佐藤も僕と同じ、この町の神だ。僕が言うのはそれだけ。じゃあね」
そういって月下は消えていく。
「会長」
「ん? どうした木村」
「僕の目の前にだれか居ませんか? とても強く、感じるのです」
「え? 誰も……」
いや、ちょっとまて。木村だけがその存在を理解している、それ以外は理解していない、木村だけ他の皆と違うところ、それは目が見えないということ。そうか、俺たち、目の見える組は目だけに頼って他のものを見ようとしていなかったんだ。気配を感じても、見ても何もないから何も居ない。双考えるのが普通。でも、見えない奴からしたら違うだろう。何か居そう。話しかけても返事はない。ただそこに、存在するのがわかるだけ。それでも大きな差だ。つまり……
俺は目を閉じる。
「鈴木さん? ああ、なるほど。わかりました」
本田は、俺の少し不思議な説を理解してくれたようだ。きっと目を閉じたのだろう。三人が目を閉じている今、おそらく茜もマネして目を閉じただろう。
俺たちはゆっくりと目を開ける。そいつは目の前に存在した。その時、俺の中に全ての記憶が蘇る。きっとみんなおなじだろう。
「佐藤! お前、なんでみんなの記憶を消したんだ! 自分も、消えやがって!」
「きっと、もうすぐ本当のことがばれると思ったんだ……ばれたらきっと、今までの関係は崩れ」
「んなわけないだろうが! 俺も、そして皆も、そんなことわかってもいままでのお前への接し方は買わんねえよ! お前が感じてた俺らからの友情はそんな程度だったのか?」
「そ、そんなわけない! お前達なら受け入れてくれると信じてた! だから、逆に受け入れてもらえなかったとき、どうしようとおもって……」
「安心しろ。もし、何回、何十回、何百回生まれ変わっても俺とお前のキズナは絶対に壊れない」
「……また同じ事を言うんだね。昔、この町で争いがあったときも同じことを言っていた。そうか、やっぱり鈴木はあいつの生まれ変わりだったのか……」
言っていることはよくわからない。だが、判ることは一つだけ。
俺と、こいつの。鈴木と佐藤の物語はまだ、終わっちゃいなかった!
これ以上続けると、もっとグダグダになると思ったので終わらせました。
今日ふとアクセス解析を見たらユニーク数は444人でした。いや、だからといってなんかあるわけではありませんが。
こんな話を最後まで見てくださった方、最後とはいえないけどまあ見た方、最終回で始めてみたという方も、ありがとうございました!
少しの間短編を続けた後にかなり、長くなるだろうファンタジーを書くつもりです。