鈴木と佐藤と七不思議 一つ目 中編
完全にフィクションのつもりです。
なにか心当たりがあっても、関係ないので気をつけてください。
「夜は霊力というか、存在というかがハッキリしますわね」
微少女が言った。いまさらだがこの少女の名は茜というらしい。微少女と呼ぶのもアレなので先ほど聞いたのだ。
「茜さんは霊感とかあるんですか?」
「それなりにね。でも、あなたのほうがかなり上だと思うわ。かなりの霊能力者を上回ってる。いや、正確には霊感とは違うのかしら」
「そうなんですか?」
「そうだな、鈴木はすごいぞ」
佐藤も話に入ってくる。お前、知らんだろう。
「そういえば、七不思議って何があるんですか?」
本田が聞いてくる。そうか、本田はしらないのか。一年生だから仕方がないか。
「この学校の七不思議! その一、追いかけてくる首吊り男。その二、卒業しない生徒。その三、学校の真実。などなどあと四つ。でも、今言うのは三つくらいで丁度良いだろう」
俺が説明をする。言うのもなんだが、俺はオカルト的なものが好きだ。茜さんが言うには俺にもかなり霊感的なものがあるようだが、霊なんざ見たことがない。見てみたい、と思ったこともないがどうせいるなら見てみたい。あ、今思ったな。
「その一が普通に怖いんですけど。二は謎、三も謎です。内容は?」
「そこまでは知らんなあ」
俺も、そこまでは詳しくない。そもそもこの学校ではそれほど七不思議は有名ではないのだ。
「それは俺が説明しようではないか」
佐藤が叫ぶ。不覚にも驚いてしまった。
「七不思議のその一、おいかくて来る首吊り男だっけか? それのもととなった話はな、とある男、生徒が首吊り自殺をしたんだ、この学校で。その事件で学校にもいろいろな噂が立ち始めた。それから、毎年同じ日に、その生徒が首吊り自殺をした日に被害者がいるんだ。最近はほとんど害はないっぽいけども、昔は毎年、首吊り死体が発見された。幸運にもその呪いのようなものから最初に生き残った奴がいてな。そいつがこういったんだよ。『男が……首をつりながら俺の後ろにピッタリと、ピッタリとくっついて追いかけてきたんだ……ハシってもハシっても、ハシってもハシっても、逃げ出せない。ずっとピッタリ後ろにいるんだ。後ろにいるんだ。ピッタリ後ろに、後ろに、後ろに……』。生き残った少年はその後、精神病院に入れられたが首吊り自殺をしたそうだ」
「マジメに怖い話ですね、それ!」
全員のテンションはかなり下がっていた。そんな内容だったのか、確かに怖い。
「ちなみに、その毎年被害者が出るという日が、今日だ」
「「「やめてえええええええ!!!!」」」
三人でビビっていた。俺と本田はともかく、茜! あんたは怖がるキャラじゃないだろう!
「そう、それでいつもより今日は霊力が強いのね……」
「ココ最近は被害がない、ってかその事件で深夜に来る人がいなかったからな。今年は、七不思議が復活するな!」
「「「楽しそうに言うな!!!!!」」」
知らなかったよ。佐藤が怖い話とか、大丈夫だなんて。こいつなら真っ先に怖がると思っていたよ……
「……足音が聞こえますね」
「怖いことを言うなァ!」
「いや、首吊り男は首をつってるんだぜ? 床に足が突いているわけがない」
「そういう理論なのかよ!」
「だ、だ、だ、だ、大丈夫……! なにかあってもお、お、お父様、が!」
「テンパり過ぎですよ茜さん!」
足音が近づいてくる。
こつ、こつ。こつ、こつ。こつ、こつ。
俺ら四人は一か所に固まる。そうしている間にも足音は近づいてくる。
「……あれ? 足音がなくなった?」
もうすぐそばまで来ているはずなのに、目の前には何もいない。気のせいだったのか? 茜さんが後ろを振り向く。少しの沈黙。そのすぐ後、今年最大の絶叫が校内に響き渡る。
そう、後ろに、いた。
首吊り男が。ずっと首をつっていたせいか、首がありえないほどに伸びて、床に足が着くようになった首吊り男。ロープは男が走るのに合わせ、天井をしゅるしゅると滑っていく。俺らは、もちろん走る。叫びながら走る。それと全く同じ速さで男が追いかけてくる。俺らと男の距離は一メートル程度しかない。
「わわわ私霊とかだめなのおおおお!! お父様ああああ! たすけてええええ!」
「霊がダメなのが自分だけだと思うなよおおおおおおおお!!!!」
「ぼ、僕も科学で証明できないものは嫌いだあああ!」
「いやー、面白いことになってきたね!」
「「「面白くない!!!!!!!!!!」」」
「ぬおっ?」
「ウオオオオオオオォォォォォォォ!!」
男はうめき声のようなものを上げながら追いかけてくる。霊でも年をとるのだろう。もうおっさんだった。
「ココは二手、いや四手にわかれるぞ!」
「いやですわ! 四分の一の確立で自分ひとりが追いかけられるじゃありませんか! ひ、一人にしないで……」
……不覚にも少し萌えた。しかたがない。いざというときはお父様もいるからな。茜さんと組んで、三手にでも分かれるか。いや……
「俺、茜さん。佐藤、本田で二手に分かれるぞ!」
「わ、わかりました!」
「わかりましたわ!」
「わかったよ~」
俺らは二手に分かれる。自分の身を守って卑怯だなんていわせないぞ。誰だって自分を優先するだろう? それに、佐藤なら霊は大丈夫だしな。
二手に分かれる。……霊はコッチにはきていない。佐藤・本田ペアの方にいったようだ。
「言っちゃ悪いが、助かった……」
「そうね……少し疲れたわ……」
「いつもの言葉遣いと違いますね」
「私がいつでも中二病だとおもわないでよね。私だって年相応の女の子らしくしたいわよ。お父様がいるから、周りの人に被害が加わらないように自分の周りから人を遠ざけてるだけよ」
「へえ」
しらなかった。そんな事情があったのか。
「そういや、今日はそのお父様は?」
「なんか、最近でてきてくれないの。なにかあったのかな?」
「わからない。ちょっと俺は周りの様子を見てくる。待ってて」
俺も、さすがにあの二人が心配だ。ちょっと様子を……
服を掴まれた。幽霊じゃなくて、茜さんに。
「ひ、一人にしないでよ……」
茜さんは涙ぐんでいる。
「わ、わかりました……安心してください。もう一人にはさせませんよ」
「あ、ありがと」
……ギャップ萌えというやつですかね。なんか、すごく萌えてます。俺だけか?
「でも、ここでジっとしているわけにもいけませんし、少しは行動しなくては。あ、安心してください。茜さんも一緒ですよ。もう絶対に一人にはしません」
「絶対だからね! 約束だからね! あと、茜さんじゃなくて茜ってよんで。それと、同い年なんだから敬語じゃなくていいからね!」
「わかった。じゃあ、いこう。茜」
「!」
茜は顔を赤くしている。自分から言えといったのではないか?
「わ、わかってるわよ。い、いきましょう」
俺にも、青春という奴が近づいてきたようですね。こんな状況じゃなければ、もっとおいしい状況なのですが……ま、これも大きな収穫です。生きて帰れたら……
微少女がヒロイン格になるとは想像していなかったですが、まあ、いいですね!
ちなみに、この話は今年中に終わらせる予定でいます。