鈴木と佐藤と記憶喪失 後編
記憶を探すため、俺ら四人は町をうろついている。三十分ほど歩いてみたがまだ進展はなかった。
「次はドコにいこうか……」
「君、なにか覚えていることはないかい? どんな些細なことでもいい」
「えーと、ですね……あ、この町に古本屋ってありますか? そこのことを覚えているのですが」
それを聞いて地図を見る。あ、あった。
「ありますね。ここから少し進んだところです。行ってみましょうか」
「はい」
古本屋。俺ははじめて行く場所だ。正直本はそんなに読まない。三大奇書とかそういうのは読んだが。
「その古本屋に何が?」
「行ってみないとわからないだろ」
「先輩方なんで古本屋前でくっちゃべってんですか? はやくはいりますよ」
本田は先に入っていた。俺らも後を追う。
「ここは……おもいだした、この古本屋でその、佐藤さんに会ったんです」
「ん、俺か。そういやそうかもしれんなあ……」
「……どんどん思い出してきました。でも唯一つ、自分が何者かを思い出せません」
「それは大変だ」
「ほかに、思い当たる場所は?」
「えっと、お墓」
「なんで!?」
思ったよりホラーだった。外は明るい。暗くなったら嫌だし急いで墓に向かおうか。そう提案したら皆賛同してくれた。そして、お墓に向かった。
「ここ、この墓石見覚えがあります」
その墓石に書かれている名前は……
「佐藤?」
「あ、これ俺のご先祖様の墓だ」
佐藤の先祖の墓をなんでこいつが覚えているんだ? 疑問が重なる。
「そうか……僕はそうだったのか……」
依頼人がなにかつぶやいている。
「どうした?」
「いえ、なんでもありません。皆さん、ありがとうございました」
こいつ、妙に急いでいやがる。少し疑っては見たが理由がわからない。ま、たいしたことではないんだろう。俺らは解散し、各自家に帰った。
寝る前、今日のことを日記に書こうとした。実は毎日日記を書いている。さて、今日のできことは……
「あれ?」
思い出せない。たしか皆で古本屋に行ってお墓に行って……皆って、だれだ? それは決まっている。俺、佐藤、本田の三人だ。なんでこの三人で? お墓に? 肝試しでもやりにいったのか? でも、こんなに明るいうちから肝試しなんて……
……俺は、今日会ったできごとを、いや今日会っただろう一連の出来事の記憶がなくなっている。なくなっているというか、なにかポッカリ穴が開いたような間隔だ。他の二人もそうなのだろうか。明日聞いてみよう。
──
「佐藤さん」
「ん、今日の依頼主さんか。いや、月下とよんだほうがいいか?」
「どっちでもいいです。そんなことより」
「お前の記憶がなくなった理由の話だろう?」
「はい。普通ならおこるわけはないのですが……」
「おそらく、鈴木の力だろう」
「そうですね、彼は私たちにとってジャマな存在。もう消すしか……」
「馬鹿なことを言うな!」
「ッ! すいません。でも、私は間違ったことをいいましたでしょうか」
「……全部間違ってるわけではない。でも全部あっているわけでもない」
「そうですか」
「あの霊能力少女もなかなか厄介だ。しかし霊感はからっきしのようだ。放っておいてもなんともならんだろう」
「では、今は様子見ということですね」
「ああ」
──
俺の知らないところで、何かが行われている。俺にとっても、皆にとっても大事な何かが。
かなり物語は進んだかと。
もうギャグ(?)にはもどれない……
まあ、ギャグはもともとやるつもりなかったのでいいんですけどね。