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サンドボックスウォーズ「105サーバーのおじ武者」  作者: 黒瀬雷牙


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第六話 注目の的?

 ハービボア・クランのギルド拠点。


 転送の光が消えたあとも、るきとカイルはその場に立ち尽くしていた。視界の中央に浮かぶ、レイド報酬ウィンドウ。高額素材、強化用結晶、そして見慣れないレアドロップ。


 思わず、声が漏れる。


【るき】「私、何もしてないんだけど」

【カイル】「俺もだ」


 カイルは腕を組んだまま、表示された報酬一覧を睨んでいた。戦った記憶はある。だが、活躍した実感はどこにもない。


 正確に言えば、始まった瞬間に終わっていた。

 拠点中央のモニターが切り替わる。


【レイド結果】


 星1クリア

 BLACKSUN

 ハービボア・クラン


 二人の思考が、同時に止まる。


 BLACKSUNと争う上位ギルドの二つ。

 ビッグブルーは果敢に3に挑み、僅か6秒で全滅。

 暁光は星1に挑戦し、惜しくも失敗。

 

 その他の中堅ギルドは星1にすら瞬殺。サーバー初のレイドは勝てなくて普通だ。


 BLACKSUNや暁光が星1を選んだのは、おそらく決定権を持つギルドマスターの、ヴェルゼとマリアが他サーバーでの経験者だからだろう。


「BLACKSUNはわかるけど、ハービボア・クランって!?」

「どこだよそのギルド!」

「え、三人でクリアってマジ?」

「星1とはいえ、レイドを三人はおかしいって」


 全体チャットが、一気に流れ始める。


 るきは、思わずおじ武者の方を見た。当の本人は、いつも通りだった。報酬ウィンドウを操作し、淡々と素材を整理している。


 まるで普段の狩りが、少し豪華になっただけのような態度だ。


【カイル】「……いや」


 ぽつりと、呟く。


【カイル】「三人って書いてあるけどさ」


 視線は、モニターではなく、おじ武者に向いていた。


【カイル】「実質、一人なんだよなぁ……」


 るきは、何も言えなかった。

 思い出すのは、ほんの数分前の光景。


 宗光を鞘に納め、キングゴブリンの攻撃を待ったあの瞬間。残像をすり抜けた一撃と、舞い上がった血飛沫。


 上手い、なんて言葉じゃない。

 次元が、違う。


 全体チャットは、まだ騒いでいる。

 だが、ハービボア・クランの拠点は静かだった。


 このレイドで、二人の中でおじ武者は、完全に別格の存在になった。


 その頃。


 同じレイド結果を、それぞれ別の場所で見つめている者たちがいた。


 BLACKSUN、ギルド拠点最上階。


 巨大なホログラムモニターの前で、ヴェルゼは腕を組んだまま微動だにしない。表示されているのは、先ほどから変わらぬレイド結果。


 星1クリア

 BLACKSUN

 ハービボア・クラン


 BLACKSUNのメンバー達は皆、ヴェルゼさんの指揮のおかげだと讃える。しかし、ヴェルゼの興味はそこにはない。


【ヴェルゼ】「……やはり、か」


 低く、しかし確信に満ちた声。

 星1。難易度としては最低。


 だが、初期サーバー。情報も戦術も揃っていない状態での、三人クリア。


 しかも生存者ログは、実質一名。


【ヴェルゼ】「類稀なる才能……」


 目を細める。


【ヴェルゼ】「やはり、欲しい」


 それは独占欲ではない。

 理解している者への、純粋な評価だった。


 一方、ビッグブルー。

 ギルド拠点は、まだ騒然としている。


 星3挑戦。6秒で全滅。

 その中央で、タイダルは豪快に笑っていた。


【タイダル】「ははははは!!」


 周囲の視線など気にも留めない。


【タイダル】「やっぱ最高だな、おじ武者!」


 モニターを指差し、満面の笑み。


【タイダル】「星1を、ああいう倒し方するヤツ、久々に見たぞ!」


 そして、拳を握りしめる。


【タイダル】「いいなぁ……!絶対、仲間にしてやる!!」


 敗北の悔しさよりも、出会えた才能への興奮が勝っていた。


 そして、暁光。


 静謐なギルドホール。白を基調とした空間で、マリアは祈るように両手を組んでいた。


 彼女の前にも、同じ結果が浮かんでいる。


 星1:失敗。


 だが、その隣に並ぶ文字。

 ハービボア・クラン。


【マリア】「……やはり」


 微笑みとも、敬虔とも取れる表情。


【マリア】「あのお方こそ」


 静かに、しかし強く。


【マリア】「我ら暁光を導く、光に違いありません」


 それは勧誘というより、信仰に近い響きだった。


 三者三様。

 思惑は違えど、評価は一致している。


 おじ武者は、別格。


 だが。その中心人物は、ハービボア・クランの、質素な拠点で、報酬整理を終え装備ウィンドウを閉じていた。


【おじ武者】「……次は」


 視線は、ダンジョン一覧へ。

 推奨レベル、敵構成、地形。

 ただそれだけを見ている。


【おじ武者】「あそこ、素材が良かったはずですね」


 誰かが自分を狙っていることも。

 評価が跳ね上がっていることも。


 ――そんなことは、いざ知らず。


 彼の頭にあるのは、次に、どこを攻略するか。

 ただ、それだけだった。

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