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最終話 SBWは最高ですな

 リスポーン地点。


 敗北の静寂。誰もが、あと一撃を思い出していた。


 その時。


【たまも】「……凄かったです」


 振り返る。彼女は奈落帰りの装備のまま、静かに立っていた。観戦モードで、すべてを見ていたのだろう。


【るき】「たまもさん!」

【カイル】「見てたのか」

【たまも】「ええ。最後の居抜き、あれは届いていました」


 まっすぐ、おじ武者を見る。


【たまも】「あそこまでヴェルゼを追い込んだギルド、初めて見ました」


 静かな声だが、確信がある。


【たまも】「心変わりしました。次回は私も参加したいです」


 空気が、変わる。


【パニーニ】「え……?」

【るき】「ほんとですか!?」

【たまも】「奈落攻略のパートナー、でしたが」


 小さく笑う。


【たまも】「braverが王を斬る瞬間、見届けたくなりました」


 おじ武者は、目を細める。


【おじ武者】「歓迎しますぞ」


 その瞬間。全体チャットもログが流れ始める。


【ヴェルゼ】「本当に良い戦いだった」

【ティアマト】「次は背後を取らせない」


 王者からの賛辞。

 ざわめきが広がる。


【タイダル】「わはははは!さすが俺の認めた男よ!!」


 ビッグブルーの豪傑。さらに。


【マリア】「正直に言います」


 暁光の名が光る。


【マリア】「私たちでも、勝てるか分かりませんね」


 評価。それは敗者への情けではない。

 実力を認めた言葉。


 サーバー全体が、braverを見た。


 中央金初陣、敗北。

 だが、確かに名は刻まれた。


【るき】「……なんか、負けたのに」

【カイル】「負けた気がしねぇな」

【斬鬼】「いや、負けは負けだ」


 静かに言う。


【斬鬼】「だが、王は揺れた」


 おじ武者は、全体チャットを閉じる。


【おじ武者】「皆の衆」


 視線が集まる。


【おじ武者】「次は、勝ちます」


 迷いはない。


【たまも】「ええ」


 中央金の夜は終わった。

 喧騒はまだ続いている。


 だが、おじ武者の胸の内は、不思議なほど静かだった。そして、熱い。


【おじ武者】「……はは」

【るき】「どうしたんです?」

【おじ武者】「いや」


 兜の奥で、確かに笑っていた。


【おじ武者】「楽しいですな」


 一同が一瞬、ぽかんとする。


【カイル】「負けたんですよ?」

【おじ武者】「ええ。完敗でした」


 それでも。


【おじ武者】「本気でやって、紙一重。あのヴェルゼが、あと一手で崩れた」


 思い出す。

 血飛沫。

 追い詰めた瞬間。

 視界が割れた、あの刹那。


【おじ武者】「本気でも、紙一重のライバルがいる」


 ヴェルゼ率いるBLACKSUNはもちろん、タイダル率いるビッグブルーも、紙一重だった。またやれば結果はわからない。

 まだ戦っていない暁光も、相当強いに違いない。


【おじ武者】「本気でも、まだまだ届かぬ奈落がある」


 たまもが、静かに頷く。


【たまも】「奈落は、まだ七層も先があります」

【おじ武者】「素晴らしい」


 即答だった。


【おじ武者】「簡単に制覇できぬ。簡単に王になれぬ。だからこそ、燃える」


 るきの目が輝く。


【るき】「リーダー、完全にスイッチ入ってますね」

【パニーニ】「さっきまで真っ二つだった人のテンションじゃないですw」

【斬鬼】「だが嫌いではない」


 おじ武者は振り返る。


【おじ武者】「サンドボックスウォーズには、求めていた全てが揃っている」


 強敵。

 高難度。

 仲間。

 敗北の悔しさ。

 勝利の予感。


【おじ武者】「我々、braverの伝説はここからです」


 一瞬の静寂。


 そして。


【るき】「はいっ!!」

【カイル】「次は俺がティアマト止める」

【リルティ】「ヒーラーは任せて」

【パニーニ】「今度は、最後まで立ってます」

【斬鬼】「次は王を斬る」


 最後に。


【たまも】「奈落も、中央金も。共に攻略しましょう」


 その声に、全員が頷く。

 敗北のログは消えない。

 だが、それ以上に、この夜の高揚も消えない。


【おじ武者】「行きますぞ、皆の衆」


 挑戦は、終わらない。


 王がいようと。

 奈落が待とうと。

 何度斬られようと。


 おじ武者の挑戦、否。

 おじ武者達のサンドボックスウォーズは終わらない。


ーーー 完 ーーー

サンドボックスウォーズ外伝

「105サーバーのおじ武者」をお読みいただき、本当にありがとうございました。


本編との最大の違いは、視点構成にあります。


本編では、数話ごとに視点が切り替わり、多くのキャラクターの現実や葛藤、思考が交錯する群像劇として描いてきました。


しかし本作は、終始おじ武者目線。


一人の中年ゲーマーが、もう一度「ゲームの楽しさ」を思い出すまでの物語として仕上げました。


その気になれば、物語はいくらでも広げられます。


暁光との激突。

奈落の更なる深層。

BLACKSUNへのリベンジ。

ビッグブルーとの再戦。


けれど私は、本編で不遇な退場を迎えた“おじサムライ”が、一人のゲームを愛する男として、

ささやかな情熱を取り戻す物語として、ここで完結させたかったのです。


きっと彼はこれからも、

素敵な仲間たちと、強く魅力的なライバル達と共に、

サンドボックスウォーズを楽しみ続けるでしょう。


もしこの作品を通して「サンドボックスウォーズ」という世界に興味を持っていただけたなら、ぜひ本編『サンドボックスウォーズ』、そして全く異なるテイストの外伝『44サーバー編』もご覧ください。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


またどこかのサーバーで、お会いしましょう。

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