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第十八話 奈落で再開

 土曜日。


【システム】《braverが中央金へ布告しました》


 全体チャットに流れるログ。


 ざわめきが走る。


 中央金――最上位リーグ。


 そこへ、昇格直後のbraverが布告。


 一方。


【システム】《南銀:暁光が布告》


 現在の拠点、南銀は他ギルドに狙われた。


【るき】「南銀、守らなくていいんですか?」


【おじ武者】「捨てます」


 即答。


【カイル】「……マジか」


【斬鬼】「後ろを見ぬ、と」


【おじ武者】「目指すは金大区画のみ」


 迷いはない。


 銀に留まる理由は、もうない。


 braverは、金へ行く。



 夜9時、ギルドバトル開始。


 だがそれまでは、自由時間。


 土曜日だ。

 それぞれに、リアルがある。


【るき】「ちょっと外出てきます!」


【カイル】「飯食ってくるわ!」


【パニーニ】「私も少し離席します」


 各々がログアウトしていく。



 おじ武者も、その一人だった。


 年度末。


 部長職。


 決裁、調整、報告。


 現実は、ゲームよりも戦場だ。


 ようやく仕事を終え、帰宅。


 妻と食事。

 他愛ない会話。

 湯気の立つ味噌汁。


 風呂。

 一日の疲れを落とす。


 そして、いつものルーティンの最後。


 ログイン。


 サンドボックスウォーズ。


 時刻、20:00。


 まだ一時間ある。


【おじ武者】「……少し、温めますか」


 ギルドチャットは静かだ。


 皆、それぞれ準備しているのだろう。


 おじ武者は一人、転移陣を踏む。



【奈落 第一層】


 風が、低く鳴る。


 青黒い空間。

 底の見えぬ深淵。


 おじ武者は、淵に立つ。


 ギルド戦前の、いつものウォーミングアップ。


 敵影が揺らぐ。


 抜刀。


 宗光が、静かに光る。


  土曜日。


【システム】《braverが中央金へ布告しました》


 全体チャットに流れるログ。


 ざわめきが走る。


 中央金――最上位リーグ。


 そこへ、昇格直後のbraverが布告。


 一方。


【システム】《南銀:暁光が布告》


 現在の拠点、南銀は他ギルドに狙われた。


【るき】「南銀、守らなくていいんですか?」


【おじ武者】「捨てます」


 即答。


【カイル】「……マジか」


【斬鬼】「後ろを見ぬ、と」


【おじ武者】「目指すは金大区画のみ」


 迷いはない。銀に留まる理由などない。

 braverは、金へ行く。


 夜9時、ギルドバトル開始。

 だがそれまでは、自由時間。

 土曜日だ。それぞれに、リアルがある。


【るき】「ちょっと外出てきます!」

【カイル】「飯食ってくるわ!」

【パニーニ】「少し離席します」


 各々がログアウトしていく。

 おじ武者も、その一人だった。


 年度末。

 部長職。

 決裁、調整、報告。


 現実は、ゲームよりも戦場だ。


 ようやく仕事を終え、帰宅。


 妻と食事。

 他愛ない会話。

 湯気の立つ味噌汁。

 風呂で一日の疲れを落とす。

 そして、いつものルーティンの最後。


 サンドボックスウォーズ。


 時刻、20:00。


 まだ一時間ある。


【おじ武者】「……少し、温めますか」


 ギルドチャットは静かだ。


 皆、それぞれ準備しているのだろう。


 おじ武者は一人、転移陣を踏む。


 奈落の入り口。

 風が、低く鳴る。


 青黒い空間。

 底の見えぬ深淵。

 おじ武者は、淵に立つ。


 ギルド戦前の、いつものウォーミングアップ。

 敵影が揺らぐ。抜刀。宗光が、静かに光る。

 その時だった。


「久しぶりですね、お侍さん」


 背後から、柔らかな声。振り向く。


【おじ武者】「……おぉ」


 わずかに目を細める。


【おじ武者】「たまも殿」


 ランカーにして、ソロ。

 ギルド未所属。


 奈落の常連。


 久しぶりの再会だった。


【たまも】「今日は一人ですか?」

【おじ武者】「ええ。夜に戦がありましてな」

【たまも】「あぁ、中央金」


 口元が僅かに上がる。


【たまも】「BLACKSUN、ですよね?」

【おじ武者】「ご存知で」

【たまも】「何度も誘われましたから」


 静かな視線。値踏みするでもなく、ただ純粋に興味を向ける目。


【たまも】「勝つ気ですか?」


 一瞬の間。おじ武者は、宗光を納める。


【おじ武者】「当然」


 即答。


【たまも】「ふふ」


 たまもは、楽しげに笑う。奈落の風が、二人の間を抜ける。


 夜8時10分。

 戦まで、あと50分。

 サーバー最強へ挑む夜。


 奈落の淵で、おじ武者はたまもと再び邂逅した。


【奈落 第二層 砂漠エリア】


 灼けた岩盤の奥、黒紫の霧が渦を巻く。


 前回、二人が退けられた相手。


 第二層ボス、妬みのジェラシア。


 高速の第一形態を削り、早くも第二形態に。


 その姿は、もはや魔獣。

 前回は、その圧倒的な攻撃力と守備力に翻弄された。連携がまだ噛み合っていなかった。


 だが今回は違う。


 宗光、一閃。たまものまるで筋肉の鎧を溶かすかのような、デバフがジェラシアを捉える。


【たまも】「今です」

【おじ武者】「御免」


 踏み込み、最短距離。

 斬撃が分厚い肉体を両断する。


【システム】《妬みのジェラシア 討伐成功》


 黒紫の霧が霧散する。


【たまも】「前より、迷いがありませんね」

【おじ武者】「良き相方がいる故」


 淡い光が奥へと続く。

 初の、第三層。


【奈落 第三層 迷宮エリア】


 空間が変わる。


 石造りの回廊。

 絡み合う蔦。

 赤黒い薔薇が壁を侵食している。


【たまも】「雰囲気、悪いですね」

【おじ武者】「良い戦場です」


 迷宮は生きているかのように道を変える。

 足音が反響し、方向感覚を奪う。

 数戦をこなし、奥へ。

 その途中。


【おじ武者】「たまも殿」

【たまも】「はい?」


 歩みを止めずに、問いかける。


【おじ武者】「ギルドバトルに出ずともよい。我がギルドに、入らぬか?」


 迷宮の空気が、わずかに張る。


【たまも】「私は、ギルドに入るつもりはありません」


 即答、だが。


【たまも】「あなたのギルドなら、いいでしょう」


 おじ武者が目を細める。


【たまも】「ただし、バトルには出ません」

【おじ武者】「構いませぬ」

【たまも】「奈落攻略のパートナーとして。それが条件です」


 一瞬の沈黙。


【おじ武者】「願ってもない」


【システム】《たまもがbraverへ加入しました》


 クランタグが、彼女の頭上にも灯る。


 braver。


 奈落の奥で、静かに増えた一人。


 そして、最深部。

 巨大な温室のような空間。

 中央に咲く、漆黒の薔薇。

 棘が脈打ち、花弁がゆっくりと開く。


 第三層のボス、怨恨の黒薔薇・グラージャ。


 花弁の中心から、女の影。

 地面から棘が噴き出す。

 視界を埋める蔦。回避が間に合わない。


【たまも】「拘束……!」

【おじ武者】「速い……!」


 薔薇の花弁が刃と化し、空間を切り裂く。

 たまもは無数の魔弾で対応、おじ武者は鋭い斬撃で払う。

 だが、迷宮フィールドが二人を分断する。


【たまも】「お侍さん!」


 黒棘が足を貫く。HPが赤へ。

 宗光、最後の一閃。

 だがグラージャの花弁が爆ぜる。


【システム】《パーティ全滅》


 視界が暗転。

 リスポーン地点。

 奈落第一層入口。


 おじ武者が立ち上がる。


 時刻は20:51。

 戦まで、9分。

 おじ武者は静かに笑う。


【おじ武者】「良きウォームアップでしたな」


 敗北。だが、収穫は大きい。

 そして、ギルドに新たな風が加わった。


【るき】「なんか凄い人きた!よろしくお願いします!」

【おじ武者】「たまも殿はバトル非参加、奈落攻略のパートナーです」

【たまも】「よろしくお願いします」

【斬鬼】「それはそれで、心強い」


 夜9時。中央金大区画。

 braverの初陣が、始まる。

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