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第十五話 きっとまた、会える

【奈落 第二層 砂漠エリア】


 転移と同時に、視界が白く焼けた。


 果てなき砂。陽炎。

 空は異様に近く、空気は乾いている。


【たまも】「……まるで、一層一層が異世界ですね」

【おじ武者】「ええ。奈落というより、多層世界ですな」


 足を踏み出すたび、砂が沈む。


 その時だった。


【おじ武者】「む、あれは」


 砂丘の向こうを、巨大な影が横切る。

 地中から現れたのは、タイラントワーム。


 レイドボスとして君臨している怪物が、雑魚敵として砂を泳いでいる。


【たまも】「……冗談でしょう?」


 さらに、石像のように佇むスフィンクス。

 遠くで蠢くサンドゴーレム。


 一層とは、明らかに格が違う。


 タイラントワームが砂中から突き上げる。


【おじ武者】「左へ!」


 たまもが瞬間移動で回避。


【たまも】「凍結、足止め!」


 砂を凍らせ、巨体の動きを止める。


 そこへ宗光が閃く。


 一撃、二撃。


 だが硬い。


【おじ武者】「流石に雑魚ではない……!」


 スフィンクスが魔弾を放つ。


【たまも】「防壁、展開!」


 魔法障壁が砂煙を弾く。


 互いをカバーし合いながら、少しずつ確実に削る。


 回復薬も、残量は減っていく。

 そして、最奥到達時。


【おじ武者】「残りHP……三割を切りましたな」

【たまも】「こちらも、同じくらいです」


 ボスの前、熱風が吹き抜ける。


【おじ武者】「やれるところまで、やりますか」

【たまも】「はい!」


 第二層ボス、

 嫉妬の獣姫 妬みのジェラシア


 現れたのは、可憐な獣人。


 しなやかな体。

 長い耳。

 鋭い牙と爪。


 愛らしい顔立ちと裏腹に、目は獲物を狩るそれ。


 次の瞬間、消えた。


【たまも】「速っ!」


 残像。連撃。爪が空気を裂く。


【おじ武者】「速い……!」


 圧倒的速度。


 たまもの高速デバフも、距離を詰められれば意味が薄い。だが。


【おじ武者】「隙ありですな」


 跳躍の着地、ほんの僅かな硬直。

 宗光が閃く。


 一刀。


 怯み。


 二刀。

 三刀。


 怯みが連鎖する。


【たまも】「凍結、重ねます!」


 動きを止める。


(やれる)


 確信が走った、その瞬間。

 ジェラシアが咆哮。空気が震え、砂が巻き上がる。


 そして、姿が変わる。可愛らしさは消え失せ、全身が隆起する筋肉に覆われる。牙は巨大化し、瞳は血のように赤い。


【たまも】「第二形態……!」

【おじ武者】「ここからが本番ですか」


 踏み込む。宗光が、再びジェラシアを捉える。

 だが、怯まない。


【おじ武者】「……!」


 次の瞬間、拳。衝撃。

 視界が白く弾ける。


【システム】《おじ武者 戦闘不能》

【たまも】「っ……!」


 攻撃ダウンに、盲目を重ねる。

 だが第二形態の圧は違う。


 高速突進。


【システム】《たまも 戦闘不能》


 白い光。そして、リスポーン地点。

 おじ武者は、静かに立ち上がる。


(第二層……甘くはない)


 たまもはギルド未所属。

 別の復活地点へ飛ばされているはずだ。


 静かな奈落の空間。

 ふ、と口元が緩む。


(きっとまた、会える)


 確信ではない。だが、妙に自然な予感。

 おじ武者は、少しだけ笑った。


 翌朝、土曜日。

 ログインと同時に、ギルド通知が鳴り響く。


【システム】《ギルドバトル 戦線布告開始》


 おじ武者は、静かに戦況マップを開いた。


 南銀大区画。


【るき】「……え?」

【カイル】「ちょ、誰!?」


 赤く点灯している。ハービボア・クランの名が、南銀に刻まれている。


【斬鬼】「……誰かが、布告しましたな」


 挑戦。ついに銀へ、おじ武者は一瞬だけ目を細める。


(覚悟は、決まったか)


 しかし、守るべき銅区画も動いた。


《南西銅 ハチャメチャクチャ 布告》

《南東銅 グラトニー 布告》


【カイル】「うわ、来た!」

【るき】「やっぱり……!」


 当然だ。ハービボア・クランは全勢力を南銀へ向ける構え。銅は手薄になる。取りに来るのが定石。


【おじ武者】「想定内です」


 むしろ、動きやすい。

 問題は、南銀の対戦相手、ビッグブルー。だが。


【カイル】「……あれ? ビッグブルー、他に布告してなくない?」

【リルティ】「本当ですね……」


 マップを拡大する。ビッグブルーの布告は、ゼロ。つまり。


【斬鬼】「真っ向から、受けるつもりですな」


 逃げない。分散もしない。

 全軍、南銀防衛。タイダルの性格が、そのまま盤面に出ている。


 一方、中央金。暁光が布告。


【るき】「うわ……」


 サーバートップ同士の激突。


 サーバー総合力1位の、ゼウスが所属する暁光。

 冷静なギルドマスターにして名指揮官、マリア。


 対するはBLACKSUN。

 マスターにして、指揮者のヴェルゼ。

 主に置くのは、サーバー総合力2位のティアマトか。


 ギルド総合力は、ほぼ互換。

 侵攻側の暁光がやや有利か。


【おじ武者】「あちらは、知略戦になりますな」


 ヴェルゼの構築力。

 マリアの冷静な布陣。


 感情を排した読み合い。

 銀の乱戦とは、対極。


 そして、ビッグブルーのギルド拠点。


【タイダル】「わははははは!!」


 豪快な笑い声が、拠点に響く。


【タイダル】「久しぶりにBLACKSUNと暁光以外の強敵だ!楽しみで仕方ないぞ!!」


 部下たちがざわつく。


【タイダル】「ハービボア・クラン! 逃げずに来たか!」


 拳を握る。


【タイダル】「全軍、防衛特化だ! 叩き潰す!! わははははは!!」


 純粋な戦闘狂の笑み。


 その頃、ハービボア・クラン拠点。


【カイル】「……銀、いきなりビッグブルーって重くない?」

【るき】「怖いですけど……ワクワクもします」


 静かな視線が、おじ武者に集まる。指揮官としての初の大舞台。


【おじ武者】「……銀は、力だけでは取れません」


 盤面を見る。


 銅二面。

 銀一面。


【おじ武者】「我々は挑戦者です」


 深く息を吸う。


【おじ武者】「銀区画全振り、ビッグブルーに勝ちにいきます」


 おじ武者は初めて銀へと刃を向ける。


 戦いは、目前だった。

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