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空白に舟を浮かべろ!  作者: SBT-moya
第三章
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エピローグ

 何もない、真っ白な地面に、僕は立っている。

 ここにはまだ何もない。『まだ』何もない。


 僕が思い浮かべれば、黒い文字が情報になって浮かぶ。そんな、『有る』と『無い』の二択の世界だ。


 空白の上に立ち尽くし、僕は、一人の女性からの言葉を待っている。

 それは僕のパートナー。同僚。仲間。そういった関係の女性だ。


 これから僕たち二人で、この何も無い大地に文明を作ったり、滅ぼしたり、再興したりするんだ。

 そう、僕たちはこの世界の最初の男女。『アダムとイブ』なんだから。


 僕は元宇宙飛行士のライト。真っ黒な宇宙空間が僕の職場だった。

 不安はない。真っ黒が真っ白に変わっただけだ。


 ずいぶん待ちくたびれたが、ようやく、「」を使って、彼女が僕に話しかけてくれた。


「最初から気づいてました。私。

 あ、これからこの人と生きていくんだって。これからずっと歩いてくんだって。ずっとあなたの後」


 白い空間に文字が浮かんでいるだけで、彼女が今どんな顔をしているかはわからない。

 でも、僕と同じ顔のはずだ。


「またそんな恥ずかしくなることを言うんだもんなあ……。ずっと待たせておいて。僕がどんな気持ちか知らないで」


「ごめんなさい。でも、伝わってきましたよ? ライトさんの愛」


「読んだの!? あの恥ずかしい手紙! うわぁ」


「『リード、生涯僕のパートナーになってくれ!』なんてもう、プロポーズじゃないですか。真っ赤ですよ? お顔が」


「と、とりあえず、これからの話をしないか! 僕らはこれから、気が遠くなるほどの文明を描く。どんな世界にするか、話し合おう」


「五個のうちどれかの世界ですよね。ミステリーの世界だとライトさんは生き残れないし、ホラーの世界でも、ライトさんは生き残れませんから。消えました? 胸のアザ」


「いまも残ってるよ! そのまま」


「スゴ!! そうなんですか!? いたそ」


 相変わらず、呑気なセリフが「」を通じて僕に届く。

 こんなやりとりができている間は、僕たちはきっと、大丈夫だ。


「しかし、大変だぞこりゃ。

 これから多分人も増える。その人たち全員が、収まるだけの世界を作っていくなんて」


「思いついた順番に書いていきましょう。一つずつ。

 私たちには、私たちのやり方があるじゃないですか」


「え? 僕たちのやり方……? あれか『行き当たりばったり』」


「なんでそうなるんですか! 認めちゃってるじゃないですか!  計画性の無さ」


 相方に痛いところをつかれて、僕は頭をかいた。

 そして、足元に、最初の道を一本引いた。


 ここから先のことは何も考えてない。

 この世界のように真っ白だ。

 僕は、まず一歩を踏み出した。

 

 足元に地面を感じる。元宇宙飛行士としてはこの上ない快楽だ。

 これから、ここにきっと、人はいっぱい来てくれるだろう。


 そして一緒に考えるんだ。僕らなりのユートピアを。


 これば、僕の使命の物語じゃない。

 僕と、僕の少し後ろを呑気に歩く、この相棒の物語だ。


 彼女がいれば、どこまでだって疲れないで歩き続けられるはずだ。


「いきましょう! これは、私たちの物語なんですから!

 どうですか? まずは私たちの愛の巣から作るなんてのは」


「あのな! 真面目に考えてくれよもっと」


 まだ全然、人々を出迎える準備なんてできてはいない。

 あるのは、僕の呆れた声と、リードの笑い声。

 でもそれさえあれば、僕らはどこにだっていけるんだ。


 これからどこに行こう?

 どこにだっていける。

 そうだよな? ……そうですよね?


 イタズラっぽい笑顔で、リードは僕の最初の一言を待っている。


 まずは何より、この空間を渡る脚が必要だ!

 真っ暗な宇宙に宇宙船が必要なように、僕たちにはまず、この空白を泳ぐアレが必要だ!!

 帆を張って、僕らを乗せて帆走るアレが!!


 僕たちにはそれがわかっている。

 そうだよな! ……そうですよね!



 僕は、息を吸って……最初の文字を浮かべることにした





 真っ白な空間に向けて、僕は高らかに念じた。

 すなわち……



 


 空白に舟を浮かべろ! 了














 

 * * * * *


 最後まで読んでくれたあなたに、

 リードが最終話の中にもメッセージを隠したよ!


 ヒントは、一個前の話にあります!







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