夢をつくる三兄弟
モル、ポべ、パンタは夢の中に住む3人兄弟です。
彼らにはお父さんとお母さんから任された大事なお仕事がありました。
それは夢をつくるお仕事。
それぞれ別々の夢を作ります。
長男のモルは色々な夢の形を作ります。
次男のポべは怖い夢を作ります。
三男のパンタは現実の世界ではできないない事、空を飛んだり、水の上を歩いたりという夢を作ります。
3人は今日も今日とてせっせと夢を作ります。
そんな毎日を過ごしながらポべはふと疑問に思うのです。
──どうして僕は怖い夢をつくらなけれはならないんだろう?
隣を見ればお兄ちゃんのモルはきれいな花畑の夢を作っていました。
反対隣を見れば弟のパンタはポべにはよく分からない夢を作っていました。
ただポべには二人のつくる夢は楽しそうに見えました。
ポべは考えます。
──僕もモルとパンタの様な楽しい夢がつくりたい!
ですが、どんな頑張ってもポべには二人の様な楽しい夢は創れません。怖い夢ばかりです。
頑張っても頑張ってもつくれません。
その内、ポべはだんだんと夢をつくるのが嫌になってしまいました。
「ポべどうしたの?」
お母さんが夢をつくらずにいるポべに尋ねました。
「なぜ僕は怖い夢を作らなければならないの? 僕はモルやパンタの様な楽しい夢がつくりたいのに」
そう言うとお母さんはモルとパンタを呼びました。
「モル、パンタあなた達はどんな夢を作りたい?」
モルが答えました。
「僕はポべの様な怖い怪物やパンタの様な変わったものをつくりたい」
パンタも言います。
「僕はモルやポべの様な夢がつくりたい。どんなに頑張っても僕は変なものしかつくれないから」
ポべは驚きました。二人もポべと同じ気持ちだったのです。
「3人とも良く聞いて。あなた達のつくる夢はそれぞれ意味のある物なのよ」
「どんな?」
モルが尋ねます。
「モルのつくる夢は現実を忘れさせてくれる夢、パンタのつくる夢は現実では叶えられない夢を叶えてくれる夢、そして、ポべのつくる夢は──」
お母さんはポべに優しく微笑んで言いました。
「現実に戻る為の夢よ」
「現実に戻る? ずっと夢の中にいてはダメなの?」
ポべが尋ねるとお母さんは「ええ」と頷きました。でも、ポべには分かりません。ポべならずっと楽しい夢の中にいたいと思うからです。
「ポべ、人はずっと夢の中に居続けることはできないの。でも、楽しい夢ばかり見ていたら夢から出ていくことができなくなってしまうわ。だから、そんな人には怖い夢を見せるの」
お母さんは続けます。
「怖い夢を見て目覚めた時、人は皆きっとこう思うでしょう。『ああ、これが夢で良かった』って」
ポべは何だか悲しい気持ちになりましたが、少しほっとしました。ポべのつくる夢が必要なものだとわかったからです。
「モル、ポべ、パンタ」
お母さんは3人を呼び、優しく抱きしめてこう言いました。
「あなたたち3人のつくる夢はどれもすばらしいものよ。他のだれにもつくることはできないの」
3人は嬉しくなり、再び三人三様の夢をつくり始めました。
夢をつくりながら、ポべはこう思いました。
──やっぱり、楽しい夢もつくりたいな。
でも、今のポべは二人も同じ気持ちなのを知っています。
ポべが二人を見ると、二人と目が合いました。
そして、3人は
『──何時か3人で一つの素敵な夢をつくろう』
そう約束したのです。