表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イストリア  作者: ヨシハル
9/30

9話 モンブラン王国 ⑤

 夜11時が過ぎようとする頃、準備に取りかかる。


 最近、貧困街での違法薬物出回っている件で、若い衆に探らせていた。

 この薬物は本来魔物を呼び寄せる効果がある代物だが、この薬物にとある薬物を上手く配合すると出来る幻覚作用のある薬物へと変わる。

 この少量の粉末をかなり薄めて飲むとちょっとした興奮剤へと変わり、やがて落ち着いてくるとリラックスして軽い幻覚症状が出てくる。

 一番厄介なのは依存性あるということだ。


 だからさほど出回っていない間にケリをつけようとシャービーが若い衆を使い調べさせていた。


「あたしのシマで勝手なことはさせないよ。お前ら準備はいいかい」


「「「おーーー!」」」


 全組員が正面入口の門を出ようとしていた。

 門番には前もって根回ししていたのでスムーズにことが運ぶ。

 一番若いラクトから一番の年配者であるシャービー含めて総勢64名が門を出た。


   ◇   ◇   ◇


「外に出るみたいね」


「ああ」


「ラクト達に合流する?」


「いや、いい。それはラクトが嫌がるだろ。しばらく様子見でいこうぜ」


「ふふっ、似た者同士ってやつね」


「うっせぇー」


 気付かれない距離を取るが少し検問で足止めをくらう。

 しかし貰った身分証を見せると王家の印が入っており、兵士は焦りながらかしこまりスムーズに通してくれた。

 遅れといっても数分、簡単に追いつける時間だ。


「行ったか」


「はい」


「少し予定外だが出る用意をしろ」


「はい」


   ◇   ◇   ◇


 外に出て歩くこと約1時間、森の入口付近まで近づくと、前を歩いていた者が足を止める。


「どうしたんだい」


 シャービーの予想は森の奥、そこにアジトがあると践んでいたが、森の入口付近に少し気配を感じる。


「ギギ、ご苦労」


 組内部での裏切り、前々から方針に揉めてはいたが組のナンバー2である男、ガトーがほとんどの組員を統率していた。

 山賊30人、裏切った組員54人、が敵に回る。

 一方、シャービーとラクトを除いた8人は皆70歳後半の組を立ち上げた時のメンバーだった。


「お頭、いやシャービーよぉ。もうアンタの考えは古いんだよ」


「テメー、ガトー!」


「およし。で、あたしらをどうするつもりだい?」


「古くて使えないものは処分に決まっているだろ」


 シャービー達を囲むと後方から声が聞こえる。


 ドカッ、バキッ、


「ぐわっ!」


「おーーーい。ラクトーーー。遊びに来たぜーーー」


「おめぇら」


 4人が倒れ、その側にはシフォンとアンが立っていた。


「おもしれぇー事してんじゃん。俺達もまぜてくれよ」


「ふっ、ああいいぜ。すきにしな」


「おう!」


 これで山賊を含め80人対12人、しかし山賊達は後ろで高みの見物、笑って見ているだけで何もしない。

 それでも50人対12人、しかも9人が年寄りときている。


 バキッ、ドン、ドカッ、


 殴り合っている鈍い音が周りから聞こえてくる。

 若い敵よりも仲間の年寄りの方が断然に強い。


「おいラクト」


「何だよ」


「お前んとこの爺さん達、やたら強くね?」


「そりゃ俺に喧嘩を教えてくれた人達だからな。見た目で判断すっとこうなるんだよ」


 圧倒的な強さに相手はどんどん倒れていく。


「オレイさん、エットさん、悪いが手ぇ貸してくれ」


「おいガトーよぉ、テメェのケツぐれぇテメェ拭けよ」


 ガトーに言い放ったのは山賊ナンバー2の双子の弟のエットだった。


 熊殺しのエット

 懸賞金 800万ラテ


 自分よりもデカいジャイアントベアを素手で殺しては食べる。

 そんなことを繰り返しているうちに山にはジャイアントベアの亡骸が多数転がっているという。


「まあそう言うな。俺見てるのも飽きてきた所だ」


「オレイさん、助かる」


「ギギ、ギギ、ギギ」


 兄のオレイは山賊のリーダー、この兄弟は2メートルを有に超し、老人から見れば2倍の大きさにも見える大男である。


 首狩りオレイ

 懸賞金 1600万ラテ


 一言で言えば戦闘狂、大きな包丁の様な剣で敵の首を一撃で狩り取る。

 オレイの通った後は綺麗に胴と首が別れた死体が転がっていることから名付けられた。


「おめぇらーーー!見物は終わりだーーー!さっさと終わらせろやーーー!」


「「「オオォォォ」」」


 形勢逆転、戦い慣れしたぶきを持った山賊相手となると話は変わる。

 いくら喧嘩慣れしてるとしても年寄りで素手、勝てる筈などなかったが、シャービーがオレイの前に立った。


「ババァ、やめろ」


 ラクトは声をかける。

 ラクトはシフォンと二人がかりでエットの相手に手こずっていて、アンも傷ついた年寄り組員のフォローに入っていて余裕が無い。


「ババァ、俺様の前に立つとはいい度胸だ」


 長年使い込んだ剣、首切り包丁を手に持ちシャービーの首めがけて薙ぎにいった。


「あぶねぇーーー!」


 首切り包丁をしゃがんで躱すと一気に間合いをつめてオレイの腹に一撃、苦し悶えてしゃがみ落ちた顔面にさらなる一撃、立った2発のパンチで前に倒れていく。


「アニキーーーーー」


「どこからわいたか知らないがあたしのシマで好き勝手するんじゃないよ」


 山賊達の動きが止まった。


「ほれラクト、よそ見してる場合じゃないよ」


 しかしエットを二人がかりで対等、アンは残り40人以上を相手に疲労が見えてくる。

 他の年寄り組員も傷だらけでボロボロ、気合いを入れる為にシャービーが発破をかける。



「最近のもんは大した事ないねぇ〜。お前たちもしっかりおし!そんなへなちょこな拳じゃ相手もたおれないよ。こうやってもっと腰を使いな、腰を」


 グキッ、


 鈍い音が聞こえた。


「いちちちちっ」


「ババァ」


 まさかのシャービーがぎっくり腰でリタイア、ようやくこれから巻き返しと思った所にさらなる追い打ちが…


「っつ〜、やってくれたなババァ!」


 一瞬気を失っていたオレイが立ち上がると山賊達も息を吹き返すようにテンションを上げる。


 まさに絶体絶命!


 その時、月明かりの中で眩しい光が皆を囲い出した。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ