8話 モンブラン王国 ④
ひーふーみー…
シフォンが殴り飛ばした男を合わせて8人、アンも加勢して一気にかたをつけた。
「おいおい、大した事ねぇなぁ〜。食後の運動にもならねぇぞ」
すると今度はシフォンやアンよりも少し年上ぐらいの男が現れる。
「よぉおめぇら、うちのもんに手ぇ出すとはいい度胸だなぁ〜おいっ!」
さっきも聞いたようなセリフ、またザコかぁ〜と思った瞬間、一気に間合いを詰められたシフォンが殴り飛ばされた。
「よぉ女、俺は女を殴る趣味はねぇ。さっさと立ち去んな」
「あんた、もうシフォンに勝った気でいるの」
するとゆっくりと立ち上がったシフォンが今度は間合いをつめて殴りかかるが左手で止められた。
「そんな腰の入ってねぇ拳じゃぁ俺には当たらねぇよぉ」
シフォンの左フック!
バックステップで躱して二人の距離が開く。
「おもしれぇー」
両拳を何度も叩き声を上げ喜ぶシフォンに対して相手は冷静ではなく、年下のガキと思っていたが相手の強さを直感で理解し拳を構えた。
互いに拳の打ち合い、躱して、時には喰らい、頬を掠め、拳を繰り出す。
そんな打ち合いが3分繰り返すと、倒れていた奴等も徐々に起き上がる。
「若!今加勢します」
「手ぇ出すんじゃねぇ〜、タイマンだバカヤロウ」
その声に起き上がってきた奴等もただ見守る。
繰り返される殴り合いも見えてくる。
少しづつだがシフォンが押し始めてきた。
最後に渾身の拳が同時に顔面に入るが、素人には分かりづらい僅かの差でシフォンの拳が先に当たり、シフォンは耐えその場で立ったままだが、相手の男は吹っ飛んだ。
「あーーーーー負けた負けた」
その場で座り、笑いながら話しだした。
「で、お前名前は?」
「俺はシフォン」
「嬢ちゃんは?」
「なんで私から名乗らないといけないのよ。あなたから名乗りなさい」
「そりゃそうか。俺の名はラクトだ」
「こいつはアン」
「ちょっ、シフォン!」
「まあまあ」
「でようシフォン、何でうちのもん殴った」
これまでの経緯を説明すると、最初に殴り飛ばした男が、気まずそうにするとラクトは呼び一発ぶっ飛ばした。
「わりぃな。詫びにうちにこい。飯を奢らせてくれ」
時間も昼時、二人は御馳走になることにした。
「おらぁ!てめぇらもさっさと来やがれ!」
「「「へい」」」
路地裏から更に少し離れた所にボロボロの民家が並ぶ、その中にボロボロだがでかい屋敷があった。
「ババァ、今戻った」
出てきたのは80歳になる婆さんだった。
バキッ、
するとラクトをいきなり殴り飛ばした。
「今戻ったじゃないよ。なんだいその傷は。また喧嘩かい。ったく」
婆さんとは思えない強さだ。
まるでマカデミア将軍を見ているようで、間違いなくグラセ副隊長よりも強いと分かるぐらいに氣が充実している。
「この婆さんも化物だな」
思わず漏れたシフォンの一言、
「なんだい坊主、文句あんのかい」
バキッ、
シフォンも吹っ飛んだ。
「お頭、実は」
一緒に戻ってきた男達が説明した。
「すまないねぇ〜。ほれ入っなっ」
倒れているラクトとシフォンをさっさと家の中に蹴り入れる。
ちょうど昼食の用意も終わる所だったが、追加で二人分作っている間にお茶を入れて少し寛ぐ。
他の若い衆は隣の大広間で座って待っていた。
「なあ婆さん」
ゴン、
「口の聞き方に気をつけてな」
「って〜、じゃあ何て呼べはいいんだよぉ」
「そうさねぇ〜。シャービー姉さんとお呼び」
「ケッ!姉さんって歳じゃねぇだろ」
ゴン、ゴン、
「痛ってぇ」
「ハハ、お前も馬鹿だなぁラクト」
「うっせぇー。お前っていうな!テメェ、年下だろうが」
「ごめんなさいシャービーさん。シフォンは昔から口が悪くて」
「嬢ちゃんも大変だねぇ~。まぁ昔から男ってぇのは馬鹿な生き物だからねぇ〜」
そんな感じで自己紹介も終わる頃、昼食が運ばれてきた。
シャービーからいろいろな話が聞けて盛り上がっていた所に一人の若い衆が駆け込んできた。
「お頭!」
「うっさいよ!なんだい。今来客中だよ」
「すんません」
すると若い衆はシャービーに近づき耳打ちした。
遂に突き止めました。
わかったよ。
その話は後だ。
へい。
そして二人は別室に行った。
「二人ともゆっくりしときな」
「おい!ババァ!!」
バタン、
「どうしたんだラクト」
「いや、何でもねぇ〜」
少し沈黙が続くとラクトが立ち上がった。
「すまねぇが今日は解散だ。改めて今度奢らせてくれ」
ラクトも席を外した。
さすがに他人の家で二人が寛ぐことも出来ず家を出ることにしたが、その後もいろいろ診て周るも気になって気になって集中出来なかった。
結局、一度茶店に入ると最後はこの話になる。
お互いに気になってしょうがなかったみたいで、少し探りを入れる事にした。
一度王宮に戻り食事を取る。
夜も更け、気配を消してこっそりと抜け出す。
音を消し駆け足でシャービーの家付近まで着くと、どうやら間に合ったようだ。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
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