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イストリア  作者: ヨシハル
7/30

7話 モンブラン王国 ③

 フレス殿下は思っていた。


 アンと初めてあった時は前日何も無かったように口裏を合わせて夕食を一緒に食べた。

 口裏を合わせるよりもアンの美しさに目を惹かれている自分もいて、あとからクリムから詳しく話を聞いた。

 その強さも知りたいと思う自分がいて、今この場所に自然と足を運び来ている。


 そして今グラセ副隊長との模擬戦が始まった。


「アンさん、先程は私の方が強いと言いましたね」


「ええ、そうよ」


「貴女はよく人を見てる。でも負けると分かっていてなぜ模擬戦を?」


「私達よりも強いと言っただけで負けるとは言ってませんよ」


「ふふっ、面白い。では行きますよ」


 お互いの木剣がぶつかるとすぐに距離をとる。


 確かに素晴らしい強さだ。

 氣も充実していて無駄が無い。

 一振りの剣の動作も素晴らしい。

 がしかし、それだけ、


「さあ遠慮せずにどんどん来なさい」


 アンはどんどん攻めるが全て受け流される。


 なるほど、一振り一振りは一流でも二振り三振りと動作が素人、なのにスキが無い。


 今度はグラセが攻めに転じる。


 なるほど、動きはいいが剣での防御は今ひとつかける。

 センスのいい娘が誰にも習わずに剣を使っているという所か。

 いすれにしろそろそろボロが出る頃か。

 そして防御に回ると他の人にはほとんどわからないようなスキがうまれる。

 次はそこを狙う!


 そして攻守が何度か入れ代わり、スキが見え隠れする。

 グラセは見逃さない。

 タイミングを取り狙う

 それはアンの横薙ぎから打ち下ろし後、グラセは躱した流れでのアンの肩を狙って鋭い突きを放った。


 ドン、


 天井を見上げていた。

 体が動かない。

 何が起きた?


「私の勝ちよ。グラセさん」


 差し伸べられた手が目の前にある。


 自分の足でしっかり立てるまで数分かかった。


 歓声が響く。


「アンさん、あのスキはわざと…だったのですか?」


「そうよ」


 針の穴を通す様なスキ、普通の人にはわからない。

 何となくわかった気がする。

 自分が喰らったのは死角からの右回し蹴り、最後に打ち下ろした剣と同じ軌道に回し蹴り、私の突きの視野に前の剣の残像の影に乗せた蹴り、これは躱せないよ。

 私より彼女の方が天才という言葉が相応しいな。


「アンさん、負けた私が言うのもおかしいが剣を使うのはやめた方がいい」


「そうみたいね」


 言うまでもないか。

 どうやらこの模擬戦で剣について学んだみたいだ。


「アンさんの剣にあった剣術を探すといいよ。一般的な基本の型だったらいつでも教えるよ」


「ありがとうございます」


 そんな笑顔に周りの人達はキュンとした。


 私は思った。

 やはり美しい。

 クリムの話では好きな人がいるみたいだが、今は無理でもいつか貴女と対等な男になった時、貴女に告白をしよう。


 フレス殿下はそう自分に誓った。


「がババババァーーー、面白い、面白いぞ。ワシの孫、カシューの嫁にどうじゃ。がババババァーーー」


「おい!そんなことより次は俺達の番だぜ」


「わかったわかった。嬢ちゃんと違って坊主は剣を使わんのか?」


「男は素手で闘うに決まってる」


「ほう、そうか。じゃワシも」


 マカデミアも剣を持たずに拳で構えた。


「ほれほれ、いつでもいいぞ」


「うぉぉぉぉぉ」


 シフォンの連打が続く。


 ほう、嬢ちゃんと違って氣質が粗いのう。

 ワシと同じ感覚派かのう。


「そろそろワシの番かのう」


 マカデミアが拳を繰り出すとシフォンは防御する。

 その一撃は防御したシフォンをそのまま後退される威力で、二人の間に距離が出来る。


「おっさん!本気でこい!」


「若いのう。では行くぞぃ」


 再び構えたマカデミアが一回り、いや二回り大きく見え、もの凄い風圧と共に拳が繰り出された。

 その拳は直径2メートルの拳の形に見えたという。


 やべぇー


 本能的に感じた。

 シフォンは全ての力を防御に回すが、でも足りない。


 ドゴーーーン!


 シフォンの体が宙を舞う。

 飛ばされたシフォンは強く壁にぶち当たった。


「ぐっ、気合いだぁーーー!」


 声を上げるも立つのがやっと、実質的には瞬殺である。


「はい終わり。シフォンは負けぇーーー。諦めなさい。強さの桁が違うわよ。悔しいけど…」


 しかし周りからは称賛の声が聞こえる。


「すげーぞ坊主」


「将軍の一撃喰らってよく立てたなぁ」


「今すぐ近衛隊へ入れよ。歓迎するぜ」


 そんなお祭りムードにフラン王妃が場を締める。


「とても素晴らしい模擬戦を見せて頂きました」


「シフォンさん、アンさん、貴方達はクリムに聞いていた以上に素晴らしい強さをお持ちです。今後この国を出ても私達は貴方達をずっと忘れないでしょう。ここにいる皆が認めています。私達は貴方達を応援します」


 フラン王妃は感づいているのだろう。

 二人が旅立つ日が近いことに


 その日の夜はあまり眠れなかった。

 まだ自分達が半人前だと身を持

って気付かされてしまったのだから


 翌朝、二人は旅立つ準備を進めるため、二人だけで町を見に出掛けた。


 町に出る。

 先ずは装備を見に行く。

 武器というよりも防具を探しにきた。

 この先戦う事になった時、剣相手にどう向かい合うかを考えると、やはり剣を止める防具が必要なのは当然の事、だから軽くて丈夫な籠手を探す。


「いらっしゃい。何をお求めで」


 店の店主に訊ねる。


 この店は前もって調べていた優良店で、お店の作りは古く小さいが値段も手頃で品質がいいと評判がいい。


 用意されたのは軽くて硬い手甲で、使われている金属が希少な物で高い、両手で約5000万ラテする。

 小さい一戸建てが買える金額だ。

 もう1つは少し分厚い布の様な物で更に軽いが簡単に切れそうな物だった。


 子供が二人来店もこのように高級品を出したのにも訳がある。

 店主もこの道のプロ、シフォンの宝具にすぐ気付く。

 思ったのは2つ、金持ちのボンボンか、それとも若く見えるが実は一流の冒険者か。

 だが、すぐに後者と判断した。


「ねぇ、これ本当に丈夫なの?」


「お嬢さん、これはね魔力を通すと鉄と同じ硬度になるんだよ」


「「魔力?」」


「魔力を知らないのかい?じゃあお嬢さん達にはちょっと早い代物ですね。え〜〜〜じゃあこの初心者用はどうでしょう?」


 店主の読みは初めてハズレた。

 が、すぐに切り替えて接客を続けた。


 一応聞いたが魔力を使う籠手は両手で3000万ラテという金額だった。

 初心者用と出された物は布に薄い鉄板が付けられた軽いが強度の弱い手甲で、値段も両手で10万ラテとかなり安くなっている。

 これよりワンランク上になると金属が変わり、少し重くなるが強度は約3倍、値段は両手で90万ラテで二人分180万ラテになる。

 二人はこれを購入して装備し、今度は次の目的地を決めるための情報収集をすることにした。


 正門入口から少し路地裏に入ると声が聞こえてくる。


「ガキが邪魔なんだよ」


 そこには倒れ込んでいる子供に容赦なく蹴りを入れている強面の男がいた。


「ちょっとあんた何やってんのよ」


「みっともねぇぜ」


「んだとガキがぁ」


 近寄ってきた強面の男をシフォンが殴り飛ばした。


「おいおいおい、うちのもんに手ぇだしてただで済むと思うなよ」


 ぞろぞろと強面の男共が集まってきた。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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