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イストリア  作者: ヨシハル
28/30

28話 革命軍vs王国軍 ⑨

 予想は的中!


 レモネが一直線に向かった所にケマが陣取っていた。


 ダン、ダン、ダン、


「ケマ!」


「これはこれはレモネさん。幽閉されているはずの貴女がなぜここに?」


「早く軍を撤退させなさい!」


「ここまで来て何を言っているのですか?この状況見て出来るかどうか貴女ならわかるでしょう」


 ダン、ダン、

 ダン、ダン、ダン


 空に向い魔力弾を放つが合戦の声にかき消されて誰も見向きもしない。


「この霧を発生させているのはあなたね。早く霧を止めなさい」


 魔弾銃をケマに向ける。


 ダン、ダン、


「早く止めなさい」


「くくっ」


 霧をどんどん濃くなっていくとケマの姿も見えなくなってきた。


「今更もう無駄ですよ」


 用意していた水の入った樽も全て空にしたケマはその場から離脱しようと後ろへバレない様に後退していくと雷が胸を穿いた。


「ぐぎゃあ〜〜〜」


「!なにがあったの」


 レモネが振り返るとそこにはカヌレの姿があった。


「さあ、後はあなたの仕事よ」


 レモネは頷き、声をあげるがどこにも届かない。

 気を失ったがケマの魔術は消えることは無く、濃い霧は晴れない。


「【白雷】」


 ドドドドーーーーーン!

 バチバチッ、バチバチッ、

 バチバチッ、


 霧は消えないがあまりに凄い雷に、革命軍も王国軍も剣が止まり静かになる。


「聞こえるか!王国軍、革命軍、レモネ=アス=パラガスの名において命ずる。今すぐこの戦い止めなさい」


 ざわざわ、ざわざわ、ざわざわ、

 ざわざわ、ざわざわ、


 戦場は混乱していた。


 レモネから近い距離の者、声に聞き覚えのある者は武器を静かに下ろしていく。

 それでも全体の1割にも満たない。


 やがて剣を取り、再び争いが起きようとした時、また雷が落ちる。


 ドドドドーーーーーン!

 バチバチッ、バチバチッ、

 バチバチッ、


 驚き戸惑う中、レモネは近くにいた馬に乗ると前に走り、全体に向けて何度も何度も声をあげた。


「私達が争う必要はありません。王国軍も私達も国民の為、平和の為にやってきました。同じ思想、争う理由がありません。剣を収めて下さい」


 今までのレモネはどちらかと言うと聡明で判断力に優れ、冷静沈着に振る舞う女性であったが、レモネの必死な思いが、言葉が、口調が、お願いに変わる。


 それでもまだ足りない。


 まだ2割にも想いは届かない。


 それでも諦めない!


 声が枯れるまで叫び続ける。


「全軍撤退する。盾隊は防御の陣形!槍隊は盾のフォローに回れ!弓隊と剣隊は負傷者の救護に回れ」


 ジャガーがレモネの想いに応える。


 王国軍が撤退する。


 指揮官不在の革命軍は戸惑っている。


「全隊コリーへ撤退する。動ける者はそばにいる負傷者を連れて馬車に乗せろ」


 そこにはトマとキュリがいた。


「トマ!キュリ!助かった。本当に助かっわ。ありがとう。ありがとう」


 キュリは撤退する王国軍に合流して全てのことを報告した。


 王宮を出て以来、決して涙を流すことは無くなったレモネの目には涙が溢れる。


 ようやく争いが終わった。


 死傷者人数 


 革命軍 約2,100人


 王国軍 約1,700人


   ◇   ◇   ◇


 シフォンとラクト、それにトマ率いる革命軍はアンの容態を見ながらレモネに言われてその場で待機していると、まるで空を飛んでくるかのように一人の男がカヌレのようにとんでもないスピードで向かってきた。


 そこには一人ではなく一人背負った男がいた。


「すいません、この辺にカヌレって名乗るちょっと生意気そうな人いませんでしたか?」


「私はトマと言います。あなたがカヌレさんの友人で間違いないでしょうか」


「そうですが…なにか?」


「キュ、キュリ!」


「お知り合いですか?」


「久しぶりだな」


「どうしたんだ!そのケガ…」


「俺のことはどうでもいい。お前も急いでいるのだろう」


「すいません。失礼ですが名を伺ってもよろしいでしょうか」


「僕はクラフトっいいます」


「クラフトさん、お願いがあります急いで王都まで連れて行ってほしい人がいます。シフォンくん、ラクトくん」


 馬車からシフォンとラクトが出てくると急いでアンを見てもらった。


「命には別状は無いですが、目と耳が気になります。急いで医者に見せたほうがいい」


 アンの指につけられた指輪は【祝福の指輪】、この指輪はつけている人の体力と氣力と魔力を少しずつ回復するだけではなく、自己治癒力もあげる指輪、更には無理に使った氣力経路、それに魔力経路もカヌレが自分の氣力と魔力を流して多少回復されていた。


「この娘はひょっとしてアンちゃん?」


「何で名前知ってんだ?兄ちゃん」


「じゃあ君がシフォンくんかな?」


「そうだけど、何で知ってんだよ」


「カヌレさんから聞いてないかな?」


「何も聞いてないぞ」


 さすがカヌレさん、わざと何も教えてないな。


「簡単に言うと君達のお兄さんの友人だよ」


「マジか!」


「とりあえず僕はアンちゃんを急いで王都の病院へ連れて行くから、シフォンくん達はあとから来てね」


 するとキュリが王宮御用達の医師宛に紹介状を書いてくれた。


 クラフトはキュリをその場に残し、アンを抱えて急いで王都に向かった。


「皆、すまないが私はレモネ様の所へ向かう。あとは頼んだ」


「お、俺も連れて行ってくれ」


 トマは馬に跨がると後ろにキュリを乗せて走り出した。


   ◇   ◇   ◇


 あれから1週間が経ち、コリーの町では全て革命軍が集結していた。

 およそ4,200名、王国軍との争いで600人近くの死者を出してしまったが、残りの革命軍がレモネとトマを中心に集まった。


「皆、聞いてくれ。今まで不正を行っていた貴族や領主達を裁き、苦しむ民を助けてきた。それは手が届いていない王政を補うために勝手にやってきた事だ。喜んでくれる人がいる。だからそれを糧に頑張ってやってきた」


 オォォーーーーー!

 オオォォォーーーーーー!

 オオオォォォォーーーーーーー!


 感声が湧く。


「しかしバジル陛下の元、四聖騎士を始め王国軍は同じ思想で国を、そして民を平和にしようと日々頑張っている」


 次の言葉に革命軍は声を失う中、それでもレモネは話し続ける。


「それに対して私達がしてきたことは自己満足に過ぎない。もちろん今までやってきた事を無駄とは言わない、だが行き過ぎた自己満足がこのような結果を生んでしまった事も事実である。私達はその責任を取らなくてはならない」


 そして決断した。


「本日を持って革命軍を解散、私は責任を取るべく出頭する」


 納得のいかない者、諦める者、共に罪を償おうとする者、各々が考えた。

 だが国民を想う気持ちに偽りはなく、人を傷つけてしまった事も事実、皆が反省をする一日となり、革命軍は解散した。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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