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イストリア  作者: ヨシハル
24/30

24話 革命軍vs王国軍 ⑤

「あちぃ、あちぃ、あちぃ」


 トマの光拳が当たった所が赤く腫れ上がる。

 ダダチは地面を左右に転げ回り、痛みよりも熱さに苦しんでいる。


「て、てめえ、ハァハァ」


「お前では俺には勝てん」


 圧倒的な力の差、片手だけというハンデも物ともしない強さ、あとは相手を捕まえて何を企んでいるのか吐かせるのみ、ゆっくりとダダチに近づいた。


「お前達の目的を言え。ケマは何を企んでいる」


「言うと思ってんのか。バ〜〜〜カ」


 ドカッ、


 トマは倒れているダダチに容赦なく蹴りを入れると、5メートル程飛び転げ回る。


「ぐげっ、ハァハァ、だから言わねえよ」


 ドカッ、


 ドカッ、


 ドカッ、


 またゆっくりと歩み寄っては蹴りを入れる。

 これを数回繰り返された時、異変が起きる。

 口数が少なくなったダダチにトドメを刺そうとして近づくと、いきなり地面に穴があく。

 その穴は腰までと浅かったが、蟻地獄の様に這い上がる事が出来ない。

 這い上がろうとしてついた腕も砂に埋もれて動けなくなった。


「ハァハァ、ハァハァ、ハッハー」


 ゆっくりと立ち上がるダダチが笑いながら近づいて、更に大きな声で笑いながらトマに蹴りを入れた。


「ヒーハッハー」


 ダン、ダン、ダン、


「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ」


 トマの顔に近づき、馬鹿にするように軽く小突きながら笑った。


「ハッハー、形勢逆転とはこのことだなぁ」


 体に残っていた岩が剥がれて右手に集まると、ドカドカと顔面を殴りつける。

 数分間続くがトマの顔が腫れ上がることはない。


「てめえのバカでかい氣もいつまで持つのかな?ハッハー」


 またドカドカと殴り続ける。


 この状態ならトマを生き埋めにして殺すことも簡単だが、未だに気が済まないのか殴り続けると、後ろから延髄に蹴りを入れられた。


「くはっ」


 一瞬意識を失いそうになるも、何とか持ちこたえて後ろを振り向く。

 そこにはズキンが相手にしていると思っていたガキの一人が立っていた。


「ズキンの奴、ガキ一人止められねぇのかよ」


「よお兄ちゃん、大丈夫か?」


 弱りきったダダチを無視してトマを助けて出した。


「ゴホゴホ、すまない。助かった」


「ガキがぁーーー、俺を無視してんじゃねぇーーーーー」


 ほとんど無くなった岩の鎧を再構築、そして転岩石、その場で高速回転すると地面からは煙が噴き、威力がどんどん増していく。


「ハッハー、死んじまいな」


 その場で回転していたダダチはもう岩石と化し、物凄い勢いでシフォンに飛んでくる。

 打ち負ける事はすぐにわかった。

 ギリギリで躱すと着地したその場で回転してまた飛んでくる。

 どんどんスピードが増して躱すのも困難になったとき、シフォンは飛んだ先の岩と化したダダチに飛びつく。

 しかしその場で止まっている訳ではない為、簡単に両腕を弾かれるとそのままシフォンに突っ込んできた。


 ドォーーーン


「ハッハー、馬鹿が」


 一旦止まったダダチは顔以外岩で包まれている。

 そして回転、今度は回転がまだ弱い所に正拳を打ち込むが、これもまた弾かれる。


 ドーーン


 吹っ飛んだ所にはトマがいる。


 トマはジーッと氣を練っていた。

 そしてチャンス到来、まだ回転の威力が弱い1度目の突進、これを狙った。

 立ち上がろうとしているシフォンの前に立つと、拳を握り、光拳を打ち込んだ。


「ぎゃあああーーーーー」


 胸の岩が砕けて赤く拳大の跡が付く。


「あちぃーーーっ、あちぃーーーよぉ」


 残りの力を使ったのだろう、トマはその場で膝をつくと、転げ回るダダチに向いシフォンは走り出した。


 右手が燃える。


「ま、待て」


 更に激しく燃える。


「ちょっ、まっ」


 そして、


「まーーーっ」


 ドゴーーーーーーン


 トマの光拳を受けた所にシフォンの炎の一撃、白目と泡を吹いて気絶した。

 その受けた所は焼け焦げた跡が拳大になって残っている。

 

 トマの光拳が頭によぎる。

 シフォンだけの魔術が生まれようとしている。

 シフォンは自分の拳を見つめ、何かを感じとる。


「まだ足りない」


 トマ、シフォンvsダダチ


 勝者 トマ、シフォン


   ◇   ◇   ◇


 走り続けるアンと息を切らしながら何とか追いつこうと走るクロサ、ようやく人の姿が見えてくる。

 それは歩いて王国に向かっていた革命軍の後列、しかし手紙を革命軍に渡しては決していけない。

 革命軍に見つからずに遠回りしていち早く王国軍に持っていかなくてはならない。

 それには後ろから追ってくるクロサが非常に邪魔だ。

 このままクロサに追われながら革命軍に見つからず追い越す事は不可能、

そして決断した。


 ザッ、


 立ち止まり振り返る。


「はぁはぁはぁ、やっと観念したか。はぁはぁはぁ」


「おばさん、しつこい」


「おばさんんんんんん!!てめえ、調子に乗るなよブス」


 カッチーーーン


「ムカつくおばさん」


「死ねブス」


 二人の回し蹴りがぶつかりあった。


「ブスにしてはいい蹴りするじゃねぇか」


「おばさんにしてはやるわね」


 もの凄い接近戦が始まる。


 どちらも引けを取らない攻防、お互いが蹴り主体の戦い、しかしクロサに遅れが目立ってきた。


「終わりね。おばさん」


 一歩後退するとクロサは手を叩いた。


 パーーーーーン!


 それは猫騙しではなく音、凄い高音がアンの耳を襲う。


「いっつーーー」


 アンは思わず片目を閉じ耳を塞ぐとクロサの蹴りをマトモニ喰らう。


 速さではややアンが有利、威力ではアンが1段階上、しかしプラスαではクロサに軍配が上がった。


「キャーハッハァー、何も聞こえないか?んん、キャッハァー」


 頭を振り、手で抑えながら片膝を付きクロサを見る。


 何かを喋っている様だが、耳鳴りしかしない。


「何も返事はなしか。五感って大事なんだぜぇ〜。1つでも失えば、ほれこの通り。キャーハッハァー」


 何も聞こえない。


 クロサが蹴りを放つ。

 アンも蹴りを放つ。


 しかし聴力を失ったアンの蹴りはタイミングもズレ、間合いも上手く合わずに蹴りは遅れて相手に届かない。


 結果、アンは蹴り飛ばされ倒れてしまった。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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