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イストリア  作者: ヨシハル
21/30

21話 革命軍vs王国軍 ②

「トマさん」


 監禁された二人に声をかける男がいる。

 誰も見張りはいない。

 上手く見張りを交代したトマの直属の仲間だった。


「今、開けます」


 牢を開け、拘束具を外すと現状について説明する。


 現在、指揮をケマが軍を率いて王国軍へと進行中、およそ900名が正面から攻めに、そして各地で活動していた軍、約3,800名が左右からの進軍、約2時間後に四聖騎士を含む王国軍約3,000人と衝突する予定。


 驚く報告は四聖騎士、槍のキュリの先行部隊200名が敗走、指揮官キュリが行方不明という報告だった。


「今から馬を走らせれば、まだ止めることができます。このままでは全面戦争になります」


 馬は2頭用意されていた。


「助かる」


「私達はレモネ様と同じ思いです。レモネ様が決めたことに誰も反対はしません。それだけはお忘れなく」


「ありがとう」


 レモネとトマは急いで馬を走らせた。


   ◇   ◇   ◇


 バタン、


「なあ、誰が入ってきたぞ」


 朝、部屋で食事を取るシフォン達、しばらくすると外が騒がしく、少し覗いて見るとこの町が戦場と化していた。

 下手に外に出ると巻き沿いをくらうのでいつでも出れるよう準備をして、中で落ち着くまで待機していた。


「俺が行こう」


 最近頼りない姿ばかり見せていたラクトが男らしく自らすすんで立ち上がった。

 階段を降りていくと一人の男が倒れている。


「おい、大丈夫か」


 返事がない。


 外に誰もいないのを確認して急いで2階に運び、着ている物を最低限残して脱がすと、ベッドの上に運び寝かす。


 意識はある。


 濡れタオルで体を拭く。


「ほらシフォン、ラクト、仰いで上げて」


「「おう」」


「アンちゃん、私は喉に通りやすい食事を用意するからここは任せるわね」


「ええ、任せてちょうだい」


 少しずつ水を口元へ運ぶ。


 シフォン達が旅に用意していたのは水と食料、医療道具や治療薬は用意していなかった。


「う、うう…」


「大丈夫、ゆっくりと水を飲んで」


 およそ15分、ゆっくりと目を醒ました。


 カヌレが食事を持ってくると、男の容態を確認する。


「あなた、名前は言えるかしら」


「俺の名はキュリ、助けて頂き感謝する」


「うん、しっかり受け答えは出来るようね」


 カヌレはキュリの体を見たあと、目と呼吸、体温を確認した。


「え〜と、これこれ」


 小さなバッグから小さい小瓶を取り出すと、キュリに渡し飲ませる。


「うん、大した傷はないわ。背中の傷も深くは入っていないし、自分の筋肉と氣で止血をしてる。問題は魔力ね」


 人はどんな状態でも氣力と魔力を全て失うと死ぬ。

 キュリが発見されたとき、氣力は残っていたが魔力は殆ど無かった。

 先程飲んだ薬で多少は魔力は回復したが、本来は自然に少しずつ回復していく。


「当分は動かない方がいいわ。2、3日は寝てなさい」


「助けてもらっておきながら悪いが、それは出来ない。俺は今すぐにでも戻らなくてはならない」


「そんなこと言っても、指一本動かすことも辛いでしょ」


「俺が行かないと大変な事に…」


 上半身を起こし立ち上がろうとするも、足に力が入らないし目の焦点も合わない。


「ぐぅ、はぁはぁはぁ」


「ほら、無理しちゃって」


 また横にさせられたキュリは、目を閉じ頭を手で押さえるとシフォンが立ち上がった。


「なあ、伝えたい事があるなら俺が行ってこようか?」


「子供には無理だ」


「じゃあ俺が行こう」


 ラクトも立ち上がった。


「危険すぎる」


「でも今のあなたじゃ何も出来ないでしょ」


 アンも立ち上がった。


「アンちゃんも傷治ってないでしょ」


「これぐらい大した事無いわよ」


 3人の目をジッと見て、


「ハァ~、わかったわ。ここは私が見るからいってらっしゃい」


 ため息をついた後、今度は振り向くとキュリを見て笑顔で手紙を書いてもらうことにした。


「と、いうわけなのよ〜」


「しかし危険だ。そんな所に子供を行かすなんて」


「見た目で判断しないで、あの子達は強いわよ」


 まぁ、何かあれば許さないけど…


「さっ諦めてちょうだい」


 こんな子供に危険な事をさせていいのだろうか?

 国の一大事、子供に任せて良いのだろうか?

 早くしなければ間に合わなくなる。


 葛藤するキュリが出した答えは任せるしかなかった。

 動けない体、こんな事しか出来ない自分、子供に任せないといけない現状が情けなくともある。

 歯を食いしばりながら国を思い、手紙を書く。


「た、頼む。この国の未来がかかっているんだ」


「おう!任せろ。急いで行くぞ」


 3人は急いで外に出ていった。


「あなたももう寝なさい。起きていても何も出来ないのよ。今は寝て少しでも早く回復しなさい」


「すまない」


 緊張の糸が途切れたのかすぐに眠りについた。


「さて、私もそろそろ動きますか。ちょっと遊びすぎたかしら」


 ニコりと笑うと2階の窓から手を伸ばすと、その手に雷が落ちる。


 ドゴーーーン、バチバチバチ、


   ◇   ◇   ◇


 とある場所では、


「見つけた!」


 一人の男が一番高い建物の上から落雷を見つけた。


「もう逃さん」


 彼の名は【クラフト】、5つ星の冒険者である。


 冒険者にはランクがある。


 1つ星・・・新人

 2つ星・・・ベテラン(下)

 3つ星・・・ベテラン(上)

 4つ星・・・一流

 5つ星・・・超一流

 6つ星・・・英雄

 7つ星・・・伝説級


 生涯4つ星までランクが上がる冒険者は一握り、ランクはその人の実績や強さ、そして功績で決まる。


「とう!」


 自分の体より大きな荷物を背に担いで、見たことのない美しく装飾された金色の剣を持ち、高さ30メートルはある建物の上から飛び降りた。

 落ちるスピードが不自然に遅い、まるで木の葉が風に吹かれゆっくりと落ちるかのように地に降りる。

 そして落雷があった場所へと歩を進めた。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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