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イストリア  作者: ヨシハル
20/30

20話 革命軍vs王国軍 ①

 朝7時になり、会議は既に始まっていた。

 もちろん話は進まない。


「レモネ様、もうあなたの思う通りには動けません。今こそ好機!我々は国を変える為に立ち上がる時だ」


「そうだ!今を逃したらまた同じ事の繰り返しだ」


「飢えに苦しむ人々の声が聞こえないのか」


 トマが立ち上がろうとするがレモネが止める。


「言いたい事はわかった。私は国を変えるつもりはない。良くなってきているのは長年国を歩き続けてきた私がよくわかる。私がやることはまだ手の届かない困っている人に手を差し伸べるだけだ。納得した者だけ私についてこい」


「それはズルくないですかねぇ〜。あなたについて行く人もいるでしょうが、こっちはもう止まらんのですよ。あなたは戦争と言う言葉から逃げてるだけ、責任逃れしてるんですよ。それは我々に対する裏切りに他ならない。

まだ同じ言葉を言うつもりなら反逆者として身柄を拘束されてもらう」


 またトマが立ち上がろうとするがレモネが先に立ち上がった。


「わかった。私は考えを帰るつもりはない」


 そう言葉に出すとそのまま素直に拘束された。

 トマもレモネと一緒に拘束され、連れて行かれた。


「この戦いの指揮はこのケマが取る」


「「「おー!」」」


   ◇   ◇   ◇


 待機していた王国軍の前に革命軍が現れる。


「レモネ様はどうした」


「お前達王国軍には関係無いことだ。さっさとこの町を出ていってもらおうか」


「それは出来ない。お前では話にならん」


 その時、王国軍の所から矢が放たれ、革命軍の一人に矢が刺さった。


「よくもやってくれたな王国軍」


「待て、誰だ!矢を放ったのは」


 しかし時既に遅し、革命軍が一斉に武器を取り攻撃してきた。


 町にいた革命軍およそ1,000人に対してキュリ率いる王国軍200名、5倍の人数差があるが王国軍が有利である。

 戦場が町中では人数差はあまり役に立たない。

 戦術が物を言う。

 革命軍のほとんどが武器の扱いに不馴れ、それに対して王国軍は武器の扱いや戦術に関しては一枚もニ枚も上手である。

 革命軍が勝つには広い荒野で10倍の戦力差が必要である。

 今まで死者が出なかったのも王国軍が死者を出さないように手加減していたからである。

 それは革命軍も一般人に被害を出さなく、死者も出さなかったから王国軍も手を出さなかったが今は違う、一般人に被害や死者が出たとなると犯罪者として本格的に動かなくてはいけなくなった。


 それでもキュリは少しでも被害が少なくなるように動く。


「全員陣を取れ!盾、前へ」


 道幅の無い通り、デカい盾道を塞ぐと隙間から刃を落とした槍が伸びる。


 決して前には出ない。

 相手にダメージを与えて後ろへ下がる。


 これは相手の陣地を取りにきたわけではない。

 自軍がいかに被害を受けずに相手の戦力を削ぐ、本来なら後方からの弓部隊が矢を放つが、死者を出すわけにはいかない。

 相手に魔術を使う者や攻撃力のある武器も見当たらない。

 後ろへ下がるも相手にわからないように左右の空き家に兵を置く、結果的には先頭にいる敵を囲み迎え討つ形になる。


 ものの数分で相手の10分の1の敵兵を制圧した。

 しかし相手も馬鹿ではない。

 相手も一度下がり陣を取る。

 レモネとトマがいなければ烏合の衆と思っていたが、なかには統制を取れる者もいるみたいだ。


「早くしないと取り返しがつかなくなる」


 キュリが呟く。


 現四聖騎士の1人、槍のキュリは唯一レモネ姫とトマの見を案じている。

 間もなく残りの四聖騎士が軍3,000人を引き連れてやってくる。

 そうなればここは血の海となるだろう。


「ぎゃあああ」


 止まっていた戦場が動く。


 それは隊列の中から悲鳴が聞こえる。


「どうした!何があったんだ!!」


 狭く密集された場所が災いした。

 同じ鎧をきた革命軍が数人紛れていて、身動きがあまり取れないところをナイフと思われる小さな刃物で次々と刺される。

 それも的確に致命傷を与えている。


 まるで手慣れたように…


「敵の陣形は崩れた。いけぇー、今だぁーーー」


「「「おぉーーーーー!」」」


 素早い決断、少しでも被害を少なく死者を出さないために撤退を決断した。


「撤退する。引けぇーーー!」


 殿に隊長のキュリ自ら立つと、一回り長い槍を振り回す。


「此処から先、誰一人通さん」


 構えと同時に槍の先から火が噴き出す。


「我が槍の餌食になりたくなければ撤退しろ」


 一騎当千、一撃で目の前にいる十数人の革命軍を薙ぎ払う。

 勢いよく走り出した革命軍がキュリの前で立ち止まり、そして後退りしていく。


「おいおい、怖じ気付くんじゃねぇよ」


「火炎と共に一人の男がキュリの前に飛ばされた」


「おい、てめえ等、コイツ一人に何ビビってんだ」


 ったく、しょうがねぇ〜。

 まあ、大人しくしてるのも飽きてきたところだしな。

 

「よぉ大将、炎を使えるのはてめえだけじゃねえぜ」


 危険を察したキュリ、明らかに素人ではない。

 それどころか自分よりも上かもしれないほど練度を見せられる。


炎槍速撃エンソウソクゲキ


 炎の槍が相手めがけて一直線に貫く。

 だが、恐ろしい速さの炎の槍をいとも簡単に掴み取ると鼻で笑い、拳をキュリの体に当てる。


「ぬるいぜ大将。爆ぜろ炎群エングン


 バンバンバンバンバーーーン


 キュリの鎧が爆発し、3分の1砕けた。

 鎧のお陰で耐える事が出来たキュリ、しかし1対1では分が悪い、明らかに格上と気づく。

 退却も出来た。

 後は自分一人だが、簡単には逃してはくれなそうだ。


「おい!ここは任せて早く行け」


 その声にケマが指示を出す。


「王国軍を追撃する。ヤツに構うな、行くぞぉーーー!」


「「「おおーーーーー!!」」」


 通り過ぎる革命軍を横目で追うキュリに大玉の炎が飛んでくる。


「よそ見する余裕があるのかい?」


「くっ」


 キュリは再度構える。


「炎槍速撃、連」


 単なる連撃と思いきや、一突き目よりも二突き目、二突き目よりも三突き目、その突きは放つたびに速さだけでなく炎と氣が増していく。

 やがて無数の突きが同時に見えてくると相手も躱しきれなくなるどころか、徐々に体に傷ついてくる。


「おっ、さすがは四聖騎士様、これは躱しきれんな」


 二人の戦いの間に誰も入れなかった革命軍、すると戻ってきた王国軍3人が助けにきた。


「隊長!」


「早くこちらへ」


「俺のことは気にせず早く撤退しろ」


 相手に気を張りすぎたのか、思いもしないところからキュリを襲う。


 ズブリ、


「あんたじゃシタバさんに勝てねぇよ」


 キュリの背中に短剣が刺さる。


「キ、キサマ、革命軍か」


「見た目で判断してんじゃねぇよ馬鹿が」


「クソ、炎槍演撃エンソウエンゲキ


 ダメージを受けた体とはいえ、後からきた3人に簡単に躱された。


「ダダチ、クロサ、ズキン、人が楽しんでるのをとるんじゃねぇよ」


 上手く致命傷は避けたが、少し血を流しすぎたキュリ、演撃で周囲を薙ぎ払うように炎の壁が出来て、一時的な防御壁を作るが残りの力は殆ど無い状態だった。


「うおーーーーー」


 全ての魔力を使い果たす勢いで円を描いた炎は火柱となり、誰も近寄れない位燃え盛り、火の高さは家の3階に届くまでになった。

 時間にして10秒、火は一気に消えていく。


「力尽きたか」


「これで終わりだ」


「四聖騎士も大したことないわね」


 火が消える。


 しかし、もうそこには誰もいない。


「ハッハッハ、ダダチ、クロサ、ズキン、逃げられてんじゃねぇよ」


「クソっ」


「俺は先に行くぜ。おめえらも早く来いよ」


 シタバは用意していた馬に乗り、三人をおいて先に戦場へ向かった。


「逃げた奴を追ってもしょうがねぇ」


「あんな雑魚ほっといて行きましょ」


「死に損ないに時間を掛けられねぇしなぁ〜、次ぃ行くぞ」


 3人も次のターゲットである残りの四聖騎士のところへ歩いて向かった。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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