2話 旅立ち ②
以外何との来訪に少し戸惑うとクリム王女から話しかけてきた。
「お席よろしいでしょうか」
「どうぞ」
「まぁそんなに緊張せず、お友達と話す様に接して下さいまし」
クリム王女は笑顔で席に座り、2人の顔を見ながら沢山の質問をしてきた。
「シフォンさんとアンさんはどちらの国から来たのでしょうか?」
「私達は島から来たのよ。国では無いわ」
色々話した。
どうやらクリム王女は歳が同じ12歳で、3つ上に兄がいるということ、父親つまり王が病に冒されていて、とある無人島に咲くと云われている花の朝露を求めて船を出して無人島に向かっているとこ、またその無人島は凶暴な魔獣が多数生息していてとても危険な場所ということ、クリム王女の護衛でアーモンドを含む騎士団3人とガーナ宰相とガーナ宰相の直属の配下に王家専属の船乗り達で向かっているということだった。
「凄いですね。お二人だけで冒険だなんてとても羨ましいですわ。目的をお聞きしてもよろしくて」
「神具って知ってるか?」
「あのぉ…おとぎ話のでしょうか?」
「神具はあるのよ。私達はそれを見つけて兄さんに認めてもらう為に旅をするの」
「お兄様にですか?」
「ああ、兄ちゃんに認めてもらい、そして世界最強を目指す!」
「私は兄さんと結婚を」
アンは頬に手をあて、顔を赤くしていて、シフォンは人差し指を真上に振りかざした。
「ご兄妹で結婚ですか?」
「まあ俺達は全員血が繋がって無いからな。育ての婆ちゃんも3年に死んで、兄ちゃんも当分島に戻らない。だから俺達は神具を見つけて兄ちゃんに会いに行くのさ」
「さぞかし立派なお兄様なのですね」
「宝具は知ってる?」
「はい、見たことありませんがわたくしの国にもおひとつあるという話です。王家の秘宝として代々受け継がれているそうです」
「これが私の宝具よ」
アンは左手にはめた指輪を見せると、その指輪から刀が現れる。
クリム王女は初めて見る宝具と何も無い所から出た刀にビックリしていた。
「す、凄いです」
「これは兄さんから頂いた婚約指輪よ」
もじもじしながらアンがこたえると、
「馬鹿じゃねぇの」
「はあ〜あん」
「俺のはこれだ」
急に右腕が燃え出した。
「キャッ!…あ、熱くないのですか」
「俺はな。これは火竜の腕輪、火を出して操る事が出来る。で、アンのは次元の指輪。3つまで物の出し入れが出来る。アンが刀とか1つのリュックに入れれば俺の荷物も入れられるのに、わざわざ刀と財布と着替えの荷物を分けて入れてるから俺のが入れられないんだよ」
「なんでアンタの物まで入れなきゃいけないのよ!これは兄さんに頂いた大事な指輪よ。アンタの物なんて入れたりしないわよ」
「凄いです。宝具がここに2つもあるなんて信じられません」
確かに、宝具は世界に100近くあると言われている。
単純に考えても今世界に存在されている国の数よりも少ない為、一般の子供が持てる物ではない。
宝具1つで最低でも数億から数十億はすると言われている。
物によっては更に桁が変わるとか、
なぜ、100近くあると言われているか、それは宝具には古代文字で数字が刻まれている。
全て確認されている訳では無いが見つかった最後の数字は88と刻まれた宝具という。
数字が低い程レア度が高いとされていて、シフォンの火竜の腕輪が25、アンの次元の指輪が12と刻まれている。
◇ ◇ ◇
「何っ!モンブラン王国にある物は神具ではないだと!」
ガーナ宰相が調べて集めた情報とは違っていた。
「まあいい、次期にあの国はワシの物、それにあのガキ共が宝具を持っていると、あの方に全ての宝具と国を捧げればワシの地位も上がるというものよ」
約3年かけてモンブラン王国の宰相にまでなったガーナ、それも神具を奪う為だけに潜り込んでいた。
だが、なんの疑いもなく国をも手に入れれば、たとえ神具ではなく宝具でも無駄にはならないはず、更に目の前には二つの宝具、きっと地位も上がると信じ、計画もそのまま実行する。
「そのまま監視していろ」
そして目的地の無人島、名もなき島が見えてきた。
◇ ◇ ◇
「お〜〜〜〜〜〜い、見えてきたぞぉ〜〜〜〜〜〜」
各部屋に伝達されると、シフォンとアンがはしゃいで外に出ていった。
「「ヤッター!新しい島だぁー!冒険の始まりだぁー」」
走りながら声を上げ、扉を開け島を見ると、そこには見慣れた風景が飛び込んでくる。
2人はあまりのショックに膝を付き固まった。
まさかの振り出しに戻るとは…、
出発してから約8時間、そろそろ日も暮れ始めた頃に帰宅、ただただ遊んで帰ってきただけと同じだった。
島に着き、アーモンド達と船を降りる。
「どうしたんだ?二人共」
落ち込んだ2人に話を聞くとアーモンドは概ね理解した。
アーモンドにとっては朗報である。
急いで図鑑を取りに戻り、目的の花を見せると、シフォンもアンも花が咲いている場所を知っていた。
彼等が求めている花の朝露は、二人にとってはよく風邪薬と言われ具合が悪い時に飲まされていたものであった。
「シフォンくんにアンちゃん、そこまで案内頼めるか?」
「良いけどよぉ、今からだとまだ早いぞ」
そう、今はまだ18時手前、二人の足なら目的地までは3時間あれば余裕で到着するということである。
だから出発は翌日1時に出発をすることとなった。
夕食も食べ終わり、仮眠の前にアーモンドは軽く打ち合わせをすることとなり、直属の部下2人とシフォンとアンの5人が個室に集まる。
「それではシフォンくんとアンちゃん、道案内は頼むよ。グラ、ナディラ、2人にはこの子達の護衛を頼む。私は先頭に立ち前を進む」
ガチャッ、
「待って下さい。わたくしも行きます」
「クリム様!おやめ下さい」
「アーモンド、わたくし行きます」
「しかしクリム様、ここはガーナ様の言うとおりにこちらで待っていたほうがよろしいかと」
「父の病気を治す為です。だからこそここまで来たのです」
言い出すと話を聞かないクリム王女は無理矢理ついていくこととなった。
がしかし、これはガーナの計画通りでもあり、こうなることを分かって連れてきている。
いや、連れて行く事を目的として話を持ちかけたのだった。
あとは…
「わかりました。クリム様、こちらを身に付けて下さい。魔除けの御守りです。アーモンドよ、頼んだぞ」
「はっ」
ある程度話が纏まると皆が部屋に戻り、時間まで仮眠を取る事となり、翌1時となる。
「さぁ、頼んだぞ」
「お願いしますね。シフォン、アン」
「任せとけ」
船から溢れる光以外は灯りはない。
アーモンドはランタンを出した。
「なんだそれ」
「光ってるわね」
「ふふっシフォン、アン、これは火ではなく石ですよ」
「君たちは…そうか、島暮らしだから太陽石を知らないか。便利だろ」
太陽石とは太陽の光を吸収して、日が落ちると代わりに光を放つ石である。
さほど高値では取り引きされていないため、富裕層は当たり前の様に所持している。
初めての見る太陽石、2人にとっては何も見えない暗闇でも問題なく歩けるが、思わず借りてしまう。
初めて見る太陽石にテンションも上がりながら歩き出し、クリム王女を合わせた6人が浜辺から中心の山へ向かい出発した。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。
ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!