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イストリア  作者: ヨシハル
17/30

17話 革命軍

 朝、ラクトとシフォンは4時間しっかりと睡眠を取ることが出来てカヌレとアンは朝食を用意した。

 食事も終わり片付けると3人は10分間の瞑想に入る。

 カヌレはそれをにこやかに見物していて、教えるのでもなく急ぐわけでもなく、ただボーッとのんびりしていた。


 歩いていると徐々に風景が変わりだす。

 周りは草木がどんどんなくなり、荒れた大地に変わってきていた。


 戦場に近づいている証拠である。


 昼食も終え、歩くこと約1時間、早くもコリーの町が見えてきた。

 本来なら到着は早くて日暮れだろうが、それはあくまでも一般人の足でであり、ラクトは疲れた表情を見せていた。


「そこ!止まれ」


 武装した二人が町の入口に立っていた。

 明らかに門兵ではなく、たぶん革命軍って人達であろう。


 当たり前のことだが、見かけない人への警戒が強い。


「おい、お前等こっちへこい!」


 男性のボディーチェックと荷物検査を終えると女性のボディーチェックへと移る。


「ちょっとどこ触ってんのよ!」


 アンの太ももに少し触れただけで男は蹴り飛ばされた。


「あ〜〜〜ぁ、やっちゃったよ」


「貴様ら!」


 もう一人の男の声を聞き、4人の革命軍が集まった。


 シフォンとラクトが前に出て相手にすると、圧倒的な強さで倒していく。


 今までの相手が強かったせいか、所詮は一般人が剣を持った程度、武器の使い方も満足に出来ない素人相手に傷一つ付かないで伸していった。

 しかし数だけはいるようで、徐々に増えていく。

 さすがに素人でも武器を持った人をこれだけ相手にするとなると、無傷ではいられない。


「アン、一旦町を出るぞ。カヌレさんと先に行け」


「わかったわ。シフォンにしては珍しく良い判断じゃない」


 今いるところは町の入口、すぐに町の外に行けると思っていたのだが、二人の男女が入口になっていた。


 女は20代前半だろうか、顔立ちは良いが左側に縦の剣傷で隻眼であり、男は30代半ばだろうか、鍛え上げられた体は無駄がなく引き締まっているが、左腕の肘から先を失っている。


「すまないがここをすぐに通すわけにはいかない」


「あなた達、少し話を聞かせてもらうわ」


 話す気はなく、女に向けてアンが回し蹴りを放ったが、隣の男が右腕で簡単に防いだ。


 ビリビリ、


 少し痺れがくる。


「お嬢ちゃんは化物か」


「ふん、女に対して言う台詞じゃ無いわ」


「ふふ、その通りだ。私の名はレモネだ。貴女の名はなんという」


「アンよ」


「ふふふ、トマよ。手を出すなよ」


 レモネと名乗る女は隣のトマという男を止め、アンの前に出た。


「私に勝てば皆を見逃そう。しかし負ければ私の質問に答えてもらう」


「ええ、いいわよ」


 即答で応えるとすぐに構える。


 アンの読みが正しければ、今の自分には隣の男に絶対に勝てないが、目の前の女性は別である。

 身体つきや氣に関してはある程度把握出来る。

 見る限り鍛えてはいるがここ数年の鍛え方、長年鍛えてきた体と氣ではない。

 その点に関しては明らかに私の方が上と読んでいるし、見たところ武器も持っていないとなると体術勝負になる。

 ここまででは負ける要素は何一つないが、気になるのは相手の自信、そう魔力と魔術に関してはこっちは全くの素人、相手の力も測れなければ予測も立てられない。

 不用意に突っ込むわけにもいかず、すぐさま構えて様子を見るしかないが、あまりにも隙だらけであった。


「その余裕な笑みを消してあげるわ」


 スピードに自身のあるアンの動き、予想を超えるアンのスピードに少し焦りバックステップを踏むレモネ、間合いに入った瞬間アンの横蹴りがレモネの鳩尾を捉えようとしたその時、アンの体が弾け飛んだ。


 ダン、ダン、


 後ろに吹き飛ばさせたアンはすぐに体制を立て直そうとするが、そう簡単には立て直されてはくれない。


 ダン、ダン、ダン、


 ダン、ダダン、


 レモネが持っているのはアンが初めて見る武器、いやこっちの地方にはあまり出回らない値の高い武器【魔弾銃】、そこまで珍しい武器ではないが、生産量が多いわけでもない。

 作りとしては使い手の魔力をそのまま弾丸として撃ち出す。

 特殊な鉱石が内蔵されていて、その石が使い手の魔力を変換して撃ち出すのだが、その際の変換に用いる演算処理の数式をその鉱石に記憶されているので誰でも魔力がある限り使える様になっている。


 レモネが扱っている魔弾銃は一番単純な作りなので魔力消費量が少ない。

 発射される魔力弾丸は直径10センチ程の大きさの円形で時速150キロのスピードで射程距離20メートルである。

 魔力消費量でいうと、1発撃つと魔力5を使う。

 一般魔術師が持つ魔力量が100〜200位だが、一流魔術師ともなれば500以上、中には1,000を超える魔力を持つ者もいる。

 参考に覚えたてのラクトの魔力量はたぶん50も無いだろう。


 ダダン、ダン、ダン、


 現在撃たれた弾数12発、まともに喰らったのは最初の2発、どうやら射程外になったらしい。


 レモネが撃ってこない。


 余裕なのか、バックステップで後ろに動いてからは一歩も動いていない。


「もう終わり?」


 挑発には乗らず、無言で呼吸を整える。


「アンちゃん、それは魔弾銃よ。銃口から魔力が弾丸のように撃ち出されるの。大きさや速さ、威力や射程距離も銃によって様々だから…」


 カヌレがアドバイスをする。


 アンは決して相手から目を離すことなくカヌレの言葉、自分が受けたダメージ、今まで撃ってきた数や速さ、全てを把握しながら体制を整える。


 相手との距離10メートルまでなら避けれるが残り5メートルまで近づけは避けるのは困難、弾丸は真っ直ぐくるから後は撃ち出すタイミングだけ。


 見る場所は銃口と指の動き


 足に氣を集め


 重心を低く


 そして最短距離を


 行く


 アンがレモネに向い走り出す。

 その速さは20メートルを1秒弱で走り、撃ち出された弾丸2発を最小限に躱す。


 ダダン、


 右手で左から右へと魔弾銃を抑えて奪うと、左足で回し蹴りを放った。


「まだ甘い。誰が一丁しか無いとと言った」


 左回し蹴りは顔を掠めると同時に左手で腰にあるもう一つの銃に手をかけると、アンの腹に2発打ち込んだ。

 痛みをおさえてそのまま後ろ回し蹴りに入る。


「フラッシュ」


 眩しい光に目が見えなくなる。


 両足に1発ずつ撃ち、最後に頭に向けて放つが、それは避けきれなく少し掠めて後ろに倒れる。


「さあ、私の勝ちだ。約束通り大人しく付いてきてもらいましょか」


 誰も動かない。


「どうした。早く来い」


 シオンが答える。


「勝ったらな」


 いくら威力が無いといっても最初に喰らった左肩2発で左手は使えない。

 今喰らった3発で動くことは出来ない。

 いや、普通なら最初の2発で終わっているのに、よくここまで戦えたと褒める所だ。


 ダン、ダン、ダン、


 3発撃ったアンの魔弾の1発がレモネの背中に命中、すぐにアンの方を見るが少し遅かった。


 振り返るとアンは目の前にいた。


 左足を軸として使えない右足は鞭の様に相手の脇腹へ、そのまま倒れ込む様に右掌で相手の顎を下から上へと放ち、痛みを耐えて右足を前に出して右掌に氣を込めて、相手の鳩尾へ打ち込んだ。


 悶絶するような痛みがレモネを襲うが、歯を食いしばり立ち上がろうとする。

 しかし顎への一撃が脳を揺らして立つことが出来ない。


 空を見上げ、悔しさを抑え、潔く、


「私の負けだ」

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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