15話 港町キーニ
パラガス王国領、港町キーニ
夜8時に到着した一行は急いで宿を探してから夕食を食べに行くことにしたが、何故かカヌレも同行することになった。
「あっ、カヌレさんこちらどうぞ」
「ありがとうラクトくん」
「はいーーーっ」
ラクトは自分の席の隣にカヌレをエスコートすると、カヌレの笑顔にメロメロになる。
「キモっ」
「ダサっ」
「シフォンくんとアンちゃんでいいかしら?改めて私はカヌレです。ヨロシクね」
「「よろしく〜」」
アンだけは気づいていた。
カヌレはかなり強いということに!
ただ最近は強い相手ばかり出会っていたせいか、麻痺していてあまり警戒をしていなかった。
食事も終わり、カヌレがいたので明日の細かい予定も立てず、シフォンとアンが質問を受けて、ラクトは自分からカヌレに話していた。
「すごーーい。まだ12歳なのに冒険だなんて尊敬しちゃう」
「まあ僕が引率してるんで二人も安心しているんですよ」
「ねぇねぇアンちゃん達は明日から何処に行くの?」
「僕達は旅の資金を稼ぎながら王都に向かおうと思っているんです」
「だったらお姉さんが依頼しちゃおっかな」
「依頼?私達に?」
「そう、王都まで護衛を頼もうかしら」
「何言ってるんですかカヌレさん。依頼なんてしなくても僕が守ってあげますよ」
「アンちゃん、これでどうかしら」
アンに指を一本立てて頼んだ。
「10万ラテですか?」
笑顔で首を横に振る。
「えっ100万ラテ?」
まだ首を振る。
「1,000万の筈は…無いですよね。1万ですか?」
さすがにアンもだいぶお金の相場を理解してきていた。
それでも笑顔で首を振る。
「アンちゃん、1億ラテよ」
「「「いちおく〜〜〜」」」
「冗談はやめて下さいよぉ、もう」
「冗談じゃ無いわよ。だってお姉さん、アンちゃん気に入っちゃったんだもん。これもネックレスの導きかな」
そう言って胸の谷間からネックレスを取り出すとラクトはガン見、アンは石に反応した。
「それって月虹石ですか」
「そうよ。女の子ねぇアンちゃんも。こういうのに興味が出てきたのかしら」
するとアンと買った月虹石を見せた。
「これ」
「あら綺麗、いい石ね。でもちゃんと加工しないと勿体ないわ。そうだ!」
アンに紹介状を書いた。
「もしこの国に行くことがあったら、このお店で加工、装飾するといいわよ」
「いくらぐらいするんですか?」
「う〜ん、この大きさだとだいたい5,000万ラテぐらいはすると思うわ」
「そんなに…ですかぁ」
「大丈夫、私の紹介と言えば安くやってくれるから」
「あ、ありがとう」
女の子っぽい可愛い笑顔を見せるアンに驚くシフォンとずっとカヌレを眺めるラクト、めったに見れない光景だった。
「ところでカヌレさん、何で導きなの?」
「月虹石は別名【導きの石】と呼ばれているの。運命の人や想い人の所に導いてくれるのよ。ね、素敵でしょ」
「うん、とってもステキ」
1億ラテの話よりも月虹石の話で盛り上がり、シフォンは気にせず食べるだけでラクトはボーーーっと見ているだけで夕食は終わった。
一応、翌日の朝食を一緒にとって、今後を決めていく予定ではある。
翌朝、
「ごめんなさい」
少し遅れてカヌレがやってきた。
どうやらお金をおろしてきたみたいで昨日は持っていなかったバックを一つ持ってやってきた。
「はい依頼料のお・か・ね・よ」
本当に1億ラテを用意した。
「シフォンくんとアンちゃんで5,000万ずつでいいかしら。ふふっ」
「えっ、あっ、はい、えっ」
見栄を張って罰があがったラクト、アンはカヌレの冗談に乗っかった。
「ふふっ、カヌレさん。まぁ私達だけ貰うのも悪いし〜〜〜」
「えっ?」
「ラクトには〜〜〜はい、10万ラテ」
「えっ、えぇーーーーー!」
「シフォンにも10万ラテ渡しとくね」
「おっ!サンキューな」
シフォンは食べ歩き出来るお金があればいいので、アンからのお小遣い制になっているので満足しているが、ラクトに関しては単なる途中までの旅仲間、10万ラテは大金だが1億ラテと比べると霞んでしまう。
「フフ、ちゃ〜んとカヌレさんを守ってねラクト」
「あっはい」
ちょっと可愛そうだが、これで少しは懲りただろう。
この後は軽く朝食を食べた後に予定を話し合う。
もちろん依頼料を払ったカヌレの言葉を優先して話を進めた。
「わかったわ。必ずパラガス軍と革命軍の戦闘に巻き込まれるとは限らないし、遠回りをしたところで巻き込まれる時は巻き込まれるし、最短距離で王都に向かいましょう」
今回の事でリーダー風をふかしていたラクトが大人しくなり、アンが今後の指示を出すことになった。
「そんなに落ち込むなって、ほら食うか?」
さすがのシフォンも空気を読んでラクトを励ましている。
「さっ、みんな行くわよ」
大丈夫よラクト。
頼りにしてるからね。
珍しくアンがフォローした。
「守ってねラクトくん」
「まっかせて下さい」
ラクトに元気が出た所でキーニを出発した。
向かう先は王都までの直線行路にある町、革命軍の本拠地コリーだ。
港町に近い場所はまだ戦闘区域には入っていないので緑も多い。
「歩いて旅は楽しいわね」
「おう!」
「そうか?」
島育ちの二人には賑やかな町もいいが、やはり自然が一番馴染んでいる。
「そういえば3人は王都に着いた後、何処に行くの?」
3人はカヌレに魔法を学びたいけど、魔導国ブルガリアに行くとなるとラクトとは別行動になる事を話した。
「アンちゃん達の魔力属性は何?私も少し位なら教えられるわよ」
「「「魔力属性???」」」
「あら、そこからなのね。じゃあ、次の休憩の時にでも教えるわね」
そろそろ12時、まだみんなの元気だったがラクトを見ると少し疲れている様子、ちょうど目の前に大きな木があったので木陰で昼食にした。
昼食を食べ終えると休憩の間、魔力属性について教えてくれた。
「これは魔力石、この石に魔力を込めてみてくれる」
「どうやって?」
「そうねぇ〜。最初は目を瞑り、力を抜く。何も考えずに自分の胸の奥に集中するとボンヤリ見えてくるものがあるの」
3人は目を瞑り、一番リラックス出来る体制になると、シフォンとアンはすぐに分かるようになる。
少し遅れてラクトも気づいていた。
氣の流れは暖かさを感じるのに対して、魔の流れは冷たさを感じる。
これが魔力である。
ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。
これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。
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