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イストリア  作者: ヨシハル
12/30

12話 モンブラン王国 ⑧

 あれから半日以上経っていた。


 日が明ける前に運ばれ休んでいたシフォンと安全も、目が覚めると日が暮れていた。

 目の前にはクリムが看病していたらしく、疲れて眠っていた。

 どうやら全治一週間、体中ズタボロだった。


 後から聞いた話だとラクトも全治一週間、アーモンドは全治二週間、グラセは全治三日で済んだみたいだ。


   ◇   ◇   ◇


 あれから三日が経った。


 シャービー家ではいつもの暮らしが戻る。

 残った組員はババァを筆頭にジジイだらけの老人ホームみたいになった。


「シャービーさん、いらっしゃいますか」


 訪ねてきたのはなんとグラセだった。


「ああ、あん時の騎士さんがあたしに何の様だい」


「手紙を預ってきました」


 グラセは手紙を渡すとすぐに家を出ていった。

 シャービーは手紙を読んだ。


   ☆   ☆   ☆


 シャービーよ、気がつけばあれから70年、年が経つのは早いもんじゃな。

 あの時は互いに若かった。

 まあ、今更昔話してもしょうがねぇか。

 結論から言えば、ようやくお前との約束も守れそうじゃよ。

 陛下の体調も良くなり、ようやく起きることが出来るようになった。

 前々からの願いも承諾を得ることが出来た。

 これからは孤児院や仕事の無いものに、国が生活保護をしてくれる事となった。

 更には職の斡旋もしてくれるらしいが、すぐにとはいかない。

 なるべく早く実現出来るように先ずは役所を建設して、皆がなるべく早く自立出来るようにすると約束もしてくれた。

 だからもう頑張る必要はないぞい。

 もう儂らジジババの役目は終わりじゃよ。

 これからは若者に任せて老後を楽しめや。

           マカデミア


   ☆   ☆   ☆


「あんのクソジジイ〜」


 シャービーの目元から薄っすらと涙が流れた。


「ラクト」


「何だババァ」


「組は解散だ」


「はぁ〜、何言ってんだ。ついにボケたか?」


「もうここであたしらがやることは無くなったんだよ。これからは自由に生きることにしたよ。だからラクト、お前も自由にしな」


   ◇   ◇   ◇


 ラクトは両親を尊敬していた。

 ラクトの両親は反対するシャービーに逆らって冒険者として生きてきた。

 シャービーは知っていた。

 冒険者がどれだけ過酷かを…

 ラクトの両親の訃報が届けられたのは、まだラクトが10歳の時だった。

 口が悪いが根が優しいラクトは両親が叶えられなかった夢を継ぎたいと思っていたが、シャービーが守っているこの町も好きだった。

 だからシャービーのあとを継ぐつもりでいた。


 その日は眠れなかった。

 まだ傷が癒えて無いからではなく、今後どうすればいいかわからなくなっていた。


「くそーーーーーっ!」


   ◇   ◇   ◇


 三日後、シフォンとアンが訪ねて来た。


「よおラクト」


「おお」


「何だぁ〜、その面は」


「おお」


 未だに迷い元気が出ていない。


「私達、明日この国を出るわ。だから挨拶に来たの」


「出るって?」


「俺達はトレジャーハンターを目指してるんだよ」


「えっ?」


「言わなかったっけ?俺達はさあ〜、まだ誰も見つけていない神具をみつけるんだよ」


 二人の話が頭に入ってこない。

 でもトレジャーハンターと言う言葉が頭から離れない。

 そうか、俺はまだ冒険者になることが出来るのか。


 二人が帰っていった後も、トレジャーハンターいや冒険者と言う言葉が今もまだ頭から離れない。


   ◇   ◇   ◇


 王宮では今日初めてイタリ陛下と夕飯を一緒にすることになったシフォンとアン、席には陛下と王妃、殿下と王女、普通ならあり得ない光景である。

 陛下の顔色も良くなりもう心配は無いだろう。

 食事が並ぶと陛下がお礼の言葉を言った。


「シフォン、アン、此度は二人の活躍に礼を言いたい。ありがとう」


 薬だけではなく、これまで起きた出来事を含めての言葉だった。

 今後の事や謝礼など少し堅い話になりそうなので、すぐに王妃が話を切り替えて食事を楽しむ事にした。


 食事も終わり、お茶を楽しみながら雑談をすると、アンは今後の事を話した。


「私達、明日の朝この国を出ようと思います」


「そうですか。少し寂しくなりますね」


 薄々気づいていた王妃が応えると淡々と話は進んでいった。

 もちろんクリムは止めようとワガママを言うが、それを王妃は止める。

 陛下も殿下も王妃と二人の話を黙って見守った。


 翌日、金3,000ラテと最低限の水と食料に衣料品などが用意されていた。

 クリムをはじめ、これまで良くしてくれた人達が別れを惜しみながらも笑顔で送ってくれる。


「「みんなありがとう」」


 王宮を出て馬車で町の出入口の門まで送ってもらうと、見慣れた男が門の前で待っていた。


「よお、そろそろ来ると思っていたぜ」


「ラクト!」


「俺も途中まで一緒に行くぜ」


「途中までって、あんた私達の行くところわかるの」


「おう!魔導国ブルガリアだろ」


「よくわかったな」


「考えてることは一緒だろ」


 前回の戦いで思い知ったのは魔力であった。

 ラクトに関しては氣についてもよく理解してはいないが長年の喧嘩で自然と身につけた氣力があったが、3人とも魔力に関してはまるで理解していない。

 貴族や一部の者が学校に通うと自然と習う氣力と魔力、ただほとんどの者が卒業までの3年間に少し扱える様になるだけでまるで役には立たない。

 それだけ扱うのが難しい。


 ただ、氣力だけではこの先冒険者として生き残る事が出来ないと実感してしまった。


 魔導国ブルガリアを勧めてくれたのはグラセ副隊長で、この国にも学校はあるが、この国で戦闘として魔力を使えるのは近衛隊のみ、それだけ難しくのでこの国の学校で習っても大した事は教われないから魔力の教えに特化した国を教えてくれた。


「一緒ブルガリアに行くのはわかったが、途中までってどういうことだ」


「おっ、そろそろ馬車が出るぞ。とりあえず話はあとでな」


 この国の馬車は1日に一度、朝の8時に出発する。

 この国はさほど大きくはない島国で、港から港まで馬車で2日で着く。

 この島には町は4つ、1つは王宮が王都で港もあり、王国としては珍しい海に面した所にある。

 そしてもう1つは島の中央にある宿場町、ここは一番新しく出来た町で貿易の中枢を担うために作られた町、そしてそこから2つの港町に行けるようになっている。

 そのうちの1つは目的地に行く船の出る港町、もう1つは別の国には行くための港町である。


 シフォン達3人は宿場町へと行く馬車に乗り込んだ。

 ここまでのお付き合い、誠にありがとうございます。

これからもご愛読してもらえる様、頑張っていきたいと思います。


 ここまで読んで「面白かった」「続きを読みたい」と思われた方は、ブクマ・評価・ご感想という形で応援して頂けますと、とても嬉しいです!

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