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14.求婚

日程を半分くらい終えたところでグレーム国からエディ兄様とアリィ兄様がやってきた。

お兄様たちは先日の警備の件でタリザリスにいらしたのだ。

「お兄様!」

懐かしさから思わず飛びついてしまった。お兄様たちは驚いていたけどちゃんと抱きとめてくれた。

「元気そうだな」

「なんとかやってます」

「わたしがリザに無理をさせたりはしませんよ」

ランス様が側にやってきてお兄様たちに言う。それを聞いて安心なさったのか嬉しそうに微笑んでランス様にお礼を言った。


少し席を外すと言ってランス様は部屋を出ていく。去り際にいつものようにわたしの手のひらにキスをしていった。

「手のひらへのキスは貴女をわたしにくださいという意味だぞ」

ランス様が部屋を出てしばらくしてからエディ兄様が唐突に言った。

「今、なんて・・・?」

その言葉を脳内変換するのにかなりの時間を要した。そしてそれを正しく理解すると、どうしようもなく顔が熱くなってしまった。

つまりわたしは求婚され続けていたのだ。

やっぱりわかってなかったんじゃん、というアリィ兄様のあきれ声と、ソフィは淑女(レディ)ではなく女社長だ、というエディ兄様の揶揄はわたしの耳に入らない。

「なっ!だって、ランス様には恋人が」

「わたしは言ったよ、あれは気にしなくていいと」

「言ったけど、でも!」

「悲しいな。ソフィはお兄様を信じてくれなかったんだね」

いや、違う。お兄様のことは全面的に信頼している。でもあれは、そう、慰め!慰めてくださったのだと思ったのよ!

「殿下自身も否定されているはずだ。お前は殿下すら信じないの?」

アリィ兄様にまで言われてわたしはもはや返事ができない。

「二人ともわたしのリザをいじめないでくれ」

そこへランス様が戻ってきた。兄二人は立ち上がって最敬礼をする。わたしもそれに続かなければならないのに、さきほどの話がショッキング過ぎてあたふたすることしかできない。

そんなわたしの手をとって彼はまた手のひらへキスを落とした。

意味はもう分かっている。混乱と羞恥で顔を上げられない。

「少し、歩こうか」

ランス様はわたしをエスコートして歩き始め、わたしは黙ってついていくしかなかった。

たどり着いた先はタリザリスの王族にしか許されていない庭園。南国らしい色鮮やかな花や木が出迎えてくれる。

「ラウに許可はとってある」

どうして?と聞くと、ランス様はしっかりとわたしを見据えて、君を口説くため、と言い、また手のひらにキスをした。

その強い視線にどうしていいかわからず、目を伏せる。

「リザ、逃げないで。俺を見て」

甘く懇願するような声色にそっと目線を上げると、焼ききれそうなほど熱のこもったまなざしが注がれる。

ランス様はわたしの手を取ってその場にひざまずいた。

「リザ、愛してる。君は俺のすべてだ。どうか結婚してほしい」

わたしたちはもう婚約している。だから彼はこんなふうに求婚する必要はない。それでもランス様は想いを言葉にしてくださった。わたしを生涯の伴侶に、と求めてくださっている。

「わたしもお慕いしております」

そういってそっとランス様にキスをした。いつもランス様からくれるキス、でも今日はわたしから。

彼は驚いて、でもすぐとろけるような甘い笑顔になってキスを返してくれる。

だんだんと深まるそれを夜のとばりが隠してくれた。

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