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『夕刻』と『暁暗』  作者: 夢野 いのり
第二節 深い傷
9/11

第8話「悲惨な過去と今の未来」(百合要素あり)(ひかり視点)

ひかり(亜美さんが何してくるかわからない以上、やっぱり怖いな・・・)


いつ来るかわからない恐怖からか、身震いする。それを横目で見ていた零花が声をかけてきた。


零花「大丈夫?」

ひかり「う、うん。なんとかね。」

零花「亜美だよね・・・私も怖いもん。」

ひかり「今度は、離れないでね。」

零花「うん。」


二人で顔を合わせてクスッっと笑った。そうこうしてるうちに、朝のホームルームが始まった。


中谷先生「はい、今日はこのプリントを書くこと。以上。私は忙しいから。」


そう言って、先生はパソコンを開き、イアホンをつけて何か作業らしきことをやり始めた。


生徒たち「え!?」


生徒たちは皆声をそろえて驚いた声を出した。確かに今日は3時間授業で授業はないが、クラス内の自己紹介や配布物などやることはたくさんあるはずだ。


中谷先生「何?文句あるの?あるなら私に名前とその内容を教えて?ないなら話しかけないで。」

生徒たち「・・・」


一緒だ、中学と。あたりをチラッと見る。零花や当時同じクラスだった人たちは、「変わってないな」といった呆れた顔をしていた。そんな中、一人が声を上げた。


???「はい!」

ひかり/零花「?!」


声を上げたヘッドホンをしたすぐ隣の席の女の子がそっと立ち上がった。


未来「冬島 未来です。なぜ先生は今、生徒の前で堂々とパソコンを触ることができるんですか?」

中谷先生「はい?仕事をしているんですよ。見てわかりませんか?」


その言葉を聞いた未来さんは、ヘッドホンを外してしばらくしてこう言った。


未来「なるほど。では先生は、動画を見ることが仕事、だというんですね。」

中谷先生「は?私が動画見てるわけないじゃないですか!ふざけるのも大概にして!」

未来「だって音漏れてますよ?」

中谷先生「え?!そ、そんなはずは・・・」


私には全く聞こえないから幻聴でも聞こえているのだろうか、と思ったが、先生のあの焦りようを見る限り事実なのだろう。


未来「動画を見ている時間があったらちゃんとホームルームをしてくれませんか?先生。」


そういう彼女の眼は、同じ高校生とは思えないほど鋭い目つきで先生を睨んでいた。それに私は少し恐怖を感じた。


中谷先生「わ、分かったわよ・・・」

未来「ならよかったです。」


そういうと、彼女はにっこりと笑った。


ひかり(彼女、何かがおかしい・・・)


何か違和感を覚えたが、今やるべきことを優先することにした。



放課後にて・・・


ひかり「あの・・・未来、さん?」

未来「えーっと、あなたは転校生の。確か、小暮ひかりさん、ですよね。」

ひかり「はい。」

未来「私に何か用ですか?」

ひかり「は、はい。ちょっと聞きたいことがあって・・・。」

未来「?」

ひかり「なんで・・・そんなに怒ってるんですか?」

未来「そ、そんなわけn」

ひかり「未来さん。もしかして中谷先生を・・・憎んでるんじゃないですか。」

未来「・・・」


過去のいじめにあってから、私は異常に感受性が高くなっている。さっき、未来さんが先生に笑顔を放った時、明らかに心から笑っている笑顔ではなかった。


未来「ひかりさん。零花ちゃんを呼んできてくれる?」

ひかり「零花を?何でですか?」

未来「3人でいるときに話してもいい?」

ひかり「は、はい。いいですけど・・・」


そう言って、零花を呼んだところ、なぜか私の家で3人で話すことになった。私の家で・・・なんで?


帰宅後ひかり宅・・・


零花「亜美は結局今日は何にもしてこなかったね。」

ひかり「うん、それはよかったけどちょっと待って。なんで私の家にいるのが当たり前になってるの零花。」

未来「まあ、いいんじゃない?ひかりちゃん。」

ひかり「いやあなたの家でもないんですが未来ちゃん。」


遡ること1時間前・・・。私の家に零花と一緒に帰ってきた。零花に至っては自分の家に帰る気はさらさらないようだ。50分ほど経過して未来ちゃんがやってきて今に至る。


ひかり「でもまさか、未来ちゃんが従姉だったとは・・・」

零花「ちなみに私は未来とは小学校からの友達なんだ~。」

未来「零花に聞いてはいたけど、ひかりちゃんやっぱり従姉だったこと知らなかったんだ。」

ひかり「面目ないです・・・」


表面上は謝っておくが、教えなかったうちの親たちは説教だな~。


未来「まあ、会ったことないからね。私のお母さん遥さんと仲悪いから。」

ひかり「なんで?」

遥「嫉妬してるのよね~姉さんは。」

ひかり「へえ~・・・お母さん?!」

未来「あ、はるちゃん、お久しぶり。」

遥「3年ぶり~みーちゃん。元気にしてた?」

未来「うん!はるちゃんも元気そうだね~。」

ひかり「え!はるちゃん!?みーちゃん?!」


二人はとても仲がよさそうにしていて、なんで母親同士が仲が悪いのかと思うほどよく話していた。とりあえず二人の話を止め、本題に入ることにした。


未来「私が中谷先生に何で怒ってるか、だったよね。」

遥「・・・・・・」

ひかり「うん。過去にみつり先生と何かあったの?」

未来「零花には話したことあると思うけど、私高1の時先生が担任だったんだけど・・・」

零花「あ、聴覚過敏のことだね。」

未来「うん。私今もヘッドホンしてるけど、これは入ってくる音を最低限にするためなんだよ。」

ひかり「聴覚過敏って?」

零花「分かりやすく言えば、耳がとてもいいってこと。」

未来「悪く言えば、普通の人なら音が大きく聞こえすぎたりするからすぐに気持ち悪くなったり、とかあるね。」

ひかり「それって大丈夫なの?」

未来「ん?ああ、私は特異体質なんだけど、ある程度音の調節ができるんだよね。聞きたい対象を絞れば周りの音は小さく聞こえる、っていう感じでね。まあ、そうでないときはヘッドホンしてないと情報量が多すぎてすぐに気持ち悪くなっちゃうから結局これはないといけないんだけどね。」


そのためのヘッドホンだったというわけだ。誰も咎めなかったということは、校長先生からの許可は出ているんだろう。


ひかり「でも、それが先生とどう関係してるの?」

未来「あの先生ね、私が聴覚過敏だって知りながらヘッドホンを外して生活しろって強要してきたの。無理だって言ったらヘッドホン壊されたこともあったね。3回ぐらいそんなことがあったかな~。」

ひかり「親には言わないの?」

未来「言ったところでなんだよね。お母さん、私に関与したくないんだよ。事実、今私は一人暮らしだしね。」

零花「・・・」

ひかり「関与しないって・・・なんで・・・」

遥「出来損ない・・・」

未来「・・・うん。」

遥「未来ちゃんはずっと姉さんに“出来損ないの障害者”って言われてきたの。」

ひかり「なに・・それ。」

零花「そんな未来を助けてくれたのが、遥さんと直哉さんだったんだよ。」

ひかり「そうだったんだ・・・」


お母さんたちが未来さんを助けていたなんて知らなかった。ただでさえ私のことでいっぱいいっぱいだったはずなのに、従姉である未来さんにも手を差し伸べていた。本当にうちの親には頭が上がらない。


ひかり「お母さん。」

遥「ん?どうしたの?」

ひかり「私たちを助けてくれて、ありがとう。」

遥「!・・・ねえみんな。死にたいって、思ったことある?」


私と零花はぞっとした。私たちが想像もできないようなおぞましい顔をしていた。普段ずっと笑って幸せそうな顔をしているお母さんがこんな顔をするとは思えなかった。


遥「辛くて、苦しくて、悲しくて。でも生きなければならないって言われて。生きなければいけない理由を問い返したら、自身の株を上げるため。そんな世界に生きてる意味なんてある?あるわけなかった。」

ひかり/零花/未来「・・・」

遥「ごめん、暗い話になっちゃったね。さて!今日はみんな泊まるんだよね!晩御飯たくさん準備しちゃうぞ~!!!じゃあ、出来たら呼ぶからね~!」

未来「うん!はるちゃん楽しみにしてるね~!」


そう言って立ち去るお母さんの後ろ姿を私たちは黙って見ていた。


ひかり/零花「・・・」

未来「あれがはるちゃん、小暮 遥なんだよ。ずっと辛い過去に向き合いながら前を向いて笑って生きてる。強いよ、はるちゃんは。」

ひかり「過去のお母さんに・・・何があったの・・・」

未来「いずれ分かるよ。」

零花「未来ちゃんは知ってるんだね。何があったのか。」

未来「うん。でも、私の口から伝えることではないからさ。時が来たら、本人から聞いたらいいよ。」

ひかり「うん。」



1時間後・・・


一通り話を終え、お母さんに呼ばれた私たちは、みんなで夕食を食べにリビングへ向かった。


直哉「で、なんで未来がいるんだ。」

ひかり「いろいろあって。」

遥「今日ひかりから話しかけられたって聞いたけど~。」

未来「いや~実はひかりに裏の顔がバレてしまいまして~。」

直哉「あ~。え、何?お前から話したのか?」

未来「いや、ひかりに聞いたら、私の話し方と顔見ただけで気が付いたそうですよ。」

直哉「・・・ひかり、超能力でも身に着けた?」

ひかり「なわけあるかー!」


感受性が高いことは家族には全く話していなかった。これ以上不安にさせたくなかったから。でも・・・


ひかり「・・・私さ、零花との一件があってから感受性が異常に高くなっちゃって。病院の先生に言われたんだ。」

零花「え・・・。」

直哉「・・・そうか。」

ひかり「ちなみに、零花の最初の脅しが演技だって気が付いたの、昨日の夜なんだけどね。」

零花「脅し演技したのはすいません・・・どこで気が付いたの?」

ひかり「うーん、教室で自己紹介した時かな。だって零花、すごく悲しそうな顔してたし。」

零花「え、バレてた・・・。」


そんな話し合いをしながら箸を進める。気が付いたら机の上の料理はあとわずかだった。


未来「これは本当だね~。ひかりちゃん、他校の学校いるとき苦労したんじゃない?」

ひかり「うん、向こういたときはね。全く感情がコントロールできなかったから。」

未来「だよね~。しかもコントロールできないと疲れるだけだからね。」

零花「そうなんだ・・・」

零花(私には、この先もその気持ちは分からないんだろうな・・・)


ひかり「零花、何で落ち込んでるの?」

零花「ひぇ!?い、いや、なんでも・・・」

ひかり「・・・もしかして、私も同じ気持ちが共感できたら・・・とか思ってたりして。」

零花「・・・うん。」

ひかり「やっぱり。・・・なんでも一人で抱え込むのは零花の悪い癖だね。」

零花「うぅ...」


零花は顔に出やすいから分かりやすいのもあるが。


未来「まあ、そこがかわいいんだけどね~零花は。」

零花「ふぇ?!ちょ、ちょっと未来!?」

ひかり「ふふ、だよね~。」

零花「ひかりまで!?」

直哉「あれ?・・・これ、俺いる?」

遥「浮いてますよ~。」

直哉「やっぱり!」


そんなやり取りを繰り返していたら、いつの間にか机の上は空の食器だらけになっていた。


一同「ごちそうさまでした!」

ひかり「二人は先に私の部屋に行ってお風呂の準備してて~。私は食器片付けてから行くから。」

零花「いや悪いよ。私たちも手伝うよ。」

ひかり「ありがとう!じゃあ食器運んでくれる?」

零花/未来「はーい。」


片付けを終え、お風呂の準備をしに部屋へと戻った。


ひかり「二人ともありがとう。おかげですぐに終わったよ。」

零花「いやいや、ご飯を頂いてる立場だしこれぐらいのことはやるよ。」

未来「だね~。」

ひかり「じゃ、お風呂に行こっか!」

零花/未来「はーい。」



脱衣所にて・・・


未来「ははは・・・相変わらずなーくんはお風呂場は大きく設計するのすごいな~。」

ひかり「いや、お父さんのことをなーくんなんて呼べる未来ちゃんのがすごいと思う・・・。」

零花「うん・・・恐ろしい・・・」

未来「そうかな~?あの人甘々だからそうでもないと思うよ~。」

零花「そ、そうなんだ・・・ははっ。」


零花が少し怯えてる。そういえば零花はお父さんに胸ぐらを掴まれたんだった。


ひかり「あ、お父さん~。ちょっと脱衣所前に来て~。まだ服着てるから~。」

直哉「ん~?どうした~。」


私はニコニコしながらこう言った。


ひかり「昔零花と話し合いしたときに胸ぐら掴んだって~ホント~?」


お父さんの顔がどんどん青ざめていく。


直哉「は、はい~・・・。」

ひかり「今すぐ零花に謝って。」

零花「ひ、ひかり?」

ひかり「ちょ~っと待っててね零花。このバカ父に謝罪させるから~。」

零花「ふぁ、ふぁい・・・。」


零花は腰が抜けてしまった。


ひかり「え?なんで?」

未来「ひかりちゃん、やりすぎだよ・・・。」


やれやれといった顔をしながらそう言葉を投げてきた未来の意味が分からず、私はポカンとしていた。


直哉「零花ちゃん、ごめんなさい。」

零花「ふぇ!い、いえ、こちらこそ、しゅみましぇんでした・・・。」


腰が抜けてうまく言葉が話せていない零花と、恐怖で委縮しているお父さん。


未来「これ、解決してるのかな?」



お風呂場にて・・・


ひかり「ん~!あ~、いい湯舟~。気持ちいい~。」

未来「だね~。零花もおいでよ~。」

零花「ごめん・・・まだ若干腰抜けてて・・・。」

未来「も~、しょうがないな~。」


ひょい


零花「ふぇ!?ちょ、ちょっと未来!?な、何でお姫様抱っこ?!あとおっぱい!当たってる!」

未来「え~、別に女の子同士だしいいじゃん~。昔よく一緒に入ってたじゃんか~。」

零花「そ、そうだけど~!!!」

ひかり「かわいい~!本当にお姫様みたいだね~零花~。」

零花「ひかりまで~うぅ~。」

未来「それにしても、ひかりちゃん大きいね~。Dはある?」

ひかり「いや、Eだね~。おかげで肩こりがひどくて・・・」

零花「E?!」

未来「私はDだね~。まだ大きくなってる途中だけど~。」

零花「・・・」

未来「零花は・・・Bかな?」

零花「C!!Cだから!!!」


対抗するかのように零花が声を上げた。


ひかり「そういえば未来ちゃん。お風呂場では耳どうするの?」

未来「ああ、それなら耳栓してるから大丈夫だよ。まあ、しててもだいぶ大きく感じるけどね。なんだかんだ、ヘッドホンが一番軽減してくれるから。」

ひかり「そうなんだ。周りと違うって、やっぱり大変?」

未来「そうだね~。でも、それはひかりちゃんも同じじゃない?それと、零花も。」

零花「!?・・・」

ひかり「え?二重人格のこと?」

未来「え?ごめん、それは知らないんだけど・・・零花は知ってたけど、ひかりちゃんも?」

ひかり「ふぇ?・・・ああああああ!!!やば!話しちゃった!え?でも知らなかったって・・・零花、他に何か隠してるの?」

零花「未来~!!!」

未来「え?!ごめん!てっきり話してたもんだと・・・。」

零花「まあ、話してもいいか・・・。私は・・・」



ひかり部屋にて・・・


ひかり「いや~、いい湯だった!」

零花「だね~。疲れがばっちりとれたよ~。」

未来「本当、なーくんに感謝だね~。」

ひかり「じゃあ、寝よっか~。明日も早いし。」

未来「だね~。じゃあ、今日からよろしくね~ひかりちゃん。」

零花「うん。今日からよろしくね~。」

ひかり「ん?どういうこと?」


二人の言っている意味が理解できない。


零花「いや、今日からひかりの家に住むことになったから。」

未来「うん、私も。」

ひかり「・・・・・・ふぇ?!?!?!?!?!?!」

零花/未来「これからよろしくね、ひかり!」

ひかり「聞いてないんだけど!!!ちょっと!!!二人とも~!!!」


訳も分からないまま、楽しい楽しい?同居生活が始まったのだった?

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