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『夕刻』と『暁暗』  作者: 夢野 いのり
第二節 深い傷
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第7話「二人の秘密」(零花視点)

零花「・・・あれ?」

ひかり「・・・・・・」

零花「ひかり?私、お風呂場にいて・・・あれ?・・・」

ひかり「零花・・・だよね?」

零花「え?ひかり?どうしたの?」

ひかり「よかった~。」


さっきからひかりの言っている意味が分からない。私が零花じゃなかったら他に誰が零花なのだろうか?


零花「え、どういうこと?」

ひかり「え?・・・いや、なんでもないよ・・・」

零花「そういえば私、お風呂の途中で意識飛んで・・・零花が運んでくれたの?ありがとう。」

ひかり「・・・う、うん。重かったんだからね!」

零花「そろそろ寝よっか。」

ひかり「わ、分かった。」


私はそうして目を閉じた。疲れていたのもあり、5分ほどで私はそのまま深い眠りについてしまった。


ひかり「零花ちゃん・・・」



20○○年4月8日火曜日


零花「おはようひかり。」

ひかり「ふぁ~~~、おふぁよう。」


起きたばかりなのか、語尾がほわ~んとしているようだ。


零花「眠そうだね~。」

そら「おはよう二人とも。」

零花「あ、おはようございます。」

そら「零花ちゃん昨日はごめんね~。どうしても外せない用事があったから。」


そらさんは今社会人3年目で、ひかりとは3歳差のひかりの実姉。ひかり曰く、シスコンらしいが、実際のところはわからない。


零花「いえ。」

ひかり「大丈夫だよお姉ちゃん。ちゃんと仲直りしたんだし!」

そら「そう!よかった。あ、そうそう。零花ちゃん。この後私の部屋に来れる?」

零花「?はい、分かりました。」


ひかりと学校へ行く準備をしてすぐそらさんの部屋へ向かった。


そら「あ、来た来た。」

零花「どうしたんですか?急に呼び出して。」

そら「いや、昨日の夜、風呂場で久しぶりに出てきたみたいだからね~。」

零花「え・・・。あ、もしかして・・・薫?」

そら「あ、覚えてたんだ。忘れてるのかと思ってたけど。」

零花「・・・もしかして、ひかりに見られました?」

そら「思いっきりね。あなたがそういうってことは、ここ2年出てこなかったってことか。」

零花「まあ、けっこう話してはいたんですけど、ね。」


夜霧(やぎり) (かおる)。3年前に私の中に生まれた人格で、名付け親はそらさん。当時そらさんは大学がこっちにあったのでこの家で一人暮らしをしていた。そして、私はひかりがいない間、そらさんとよく話をしていた。ここ一年はそらさんが社畜化され、会う機会がなかったが。


零花「出てきたってことは・・・やっぱり、亜美かな・・・」

そら「だろうね~。薫が出てきてから零花ちゃん、その亜美ちゃんの名前忘れてたからね。」

零花「ってことは、昨日風呂場で私を運んだのは薫だったんだ。」

そら「ひかりに話すの?」

零花「まあ、多分バレたと思いますし。混乱させるのも悪いので。」

そら「そう。あなたがそう思うならいいんじゃない?」

零花「薫もそれでいい?起きてるんだし、あなたから話す?」

薫「ん、分かったよ。」

零花「ありがと。」

そら「あ、出てこれるんだ。」

薫「まあ。というか、そらさん俺とよく話してたじゃないですか。今更過ぎません?」

そら「たしかに。」


薫は男の人格で、性格は・・・言ったら気分屋だ。私はどっちかと言えば臆病でものを言えないことが多いため、いつも薫には振り回されている。


薫「で、どうする零花?俺はそらさんともう少し話したいことがあるんだが。」

零花「分かった。じゃあ私寝てるから終わったら起こして。」

薫「はいはい。」

そら「ほんと、二人とも楽しそうだね~。本来なら多重人格って危険なんだけど・・・。」

零花「理由はどうあれ、私は薫と一緒にいるって決めましたから。」

そら「そう。で、そういえば薫君が用があるんだっけ?」

薫「はい。ひかりちゃんのことなんですけど・・・」



午前7時

ひかり「じゃあ、行ってきます。」

零花「お邪魔しました。」

ひかり家族「いってらっしゃい。」



バス停にて・・・


零花「ひかり。昨日の夜の件だけどさ。」

ひかり「え?・・・亜美の、こと?」

零花「それもあるけど・・・一番は私のこと。」

ひかり「・・・薫さんのこと、教えてくれるの?」

零花「!・・・うん。」


到着したバスに乗り込み、ゆっくりと話をする。昨日の夜、薫はある程度話してくれていたようだった。自分が何者か、私が話したくないことなどを率先して話してくれていたみたいで、話すことがほとんどなかった。


ひかり「ってことは・・・私と同じだったんだ・・・」

零花「え?・・・同じって?」

ひかり「実は・・・私も二重人格者なんだよね。」

零花「え?!」


思わずびっくりして声が裏返ってしまった。そらさんは何も言ってなかった。もちろん、直哉さんも遥さんも。とりあえず、他にバスに乗っている人がいなくてほっとした。


ひかり「私の中にも別の人格がいる。本当は1年でこっちに戻ってくるはずだったんだけど、治療のせいで伸びちゃって。」


たしかに直哉さんから1年で帰ってくるとは聞いていたが、長引いた理由が二重人格だとは思えなかった。


零花「ひかりはその子といつでも変われるの?」

ひかり「一応ね。でも、めったに変わらないかな。私を守るためにこの子に傷ついてほしくないし。あと、私は変わると負担が大きくて・・・」

零花「そっか。ちなみに名前は?」

ひかり「あかり。小暮 あかりだよ。女の子の人格。」

零花「あかりちゃん。いい名前だね・・・」

ひかり「うん。」


自分の話をするはずがひかりの話になっていたが、お互いの秘密を打ち明けられたことで私たちはまた一歩近づけた気がする。


零花「・・・着いたね。」

ひかり「だね。」


気が付いたら学校に到着していた。荷物を持ち、ゆっくりと席を立つ。


ひかり「じゃあ、行こっか。」

零花「うん。」


そう言って、二人で手をつなぎながら満開の花が咲く八重桜のトンネルを抜けるのだった。

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