第4話「夜霧零花」(零花視点)
零花「ひかり・・・ごめんね。」
私、夜霧零花はいじめをしたいわけではない。むしろその逆だ。私は、いじめられていた。中学二年の時に両親が離婚してからずっと。
中学生時・・・
私にとってひかりは希望だった。生きる意味だった。周りがどんどん離れていく中、ひかりだけは一緒にいてくれた。でも、いじめっ子たちは今度はひかりをターゲットにしたのだ。ひかりは何も悪くないのに、守ってくれていただけなのに、それが気に食わないからという理由だけでいじめようとする人たちに私は恐怖した。
高校三年生に上がって母が不倫相手と再婚した。そして、それがトリガーになったかのようにターゲットがひかりにも向いた。教科書を捨てる、机に落書きをする、といった行為に加えて暴力までするようになった。それをすべて私に実行させる。おそらく、彼らの目的は私とひかりの仲を崩壊させることだった。
だから私はそれを逆手に取った。ひかりにこれ以上地獄を味わってほしくない、その一心で私は嫌われ役を演じることにした。自ら冷たい態度をとり、彼女を私から遠ざけるために。嫌がらせを前より過激にし、私との関わりを完全に断ち切ろうとした。
・・・結果は最悪だった。7ヶ月が経った頃、ひかりは・・・自殺しようとした。夜、公園の高さ8メートルほどある丘から投身自殺を図った。偶然身を乗り出した場所の下にあった大量の落ち葉クッションとなり、ひかりは全身の打撲と骨折で済んだ。一部始終を覗き見ていた私はショックと罪悪感で押しつぶされそうになった。
その次の日からひかりは学校に来なくなった。
私はその日の夜ひかりの家へと向かった。チャイムを鳴らすとひかりの両親が出てきたが、ひかりは出てこなかった。家にお邪魔させていただき、ひかりのご両親と話をすることになった。
ひかりは病院に入院していた。1週間の入院とカウンセリングを受け、遠くに引っ越す言われた。私は安堵した。「これでひかりが巻き込まれることはない」と。
私は意を決して、これまでの仕打ちをひかりのご両親に打ち明けた。嫌がらせ、暴力、全て嘘偽りなく。ひかりのお父さんは激怒し、怒り狂った顔で胸ぐらをつかんできた。
直哉「お前の・・・お前のせいでひかりは!!!」
遥「お父さん!!!やめて!!!」
零花「いいんです、ひかりのお母さん。これは私自身への戒め。ひかりが私から受けた痛み、苦しみ、絶望はこんなものじゃないんですから。」
直哉「・・・・・・」
私の言葉の後、すぐに私を掴んでいる手が緩まった。
直哉「・・・取り乱してすまなかった。・・・・・・何か事情があるんだろう?君がやったことは許せない。・・・だが、今の言葉が嘘でないなら、何か訳があると思うんだ。」
零花「・・・ひかりには・・・伝えないでください。」
私はひかりがほかの女子たちのいじめの対象になっていたこと、その原因である私から距離を置かせるためにひかりをいじめたことを伝えた。
全てを話し終えたとき、私は・・・涙をこぼしていた。
零花「な・・・なんで・・・」
遥「・・・・・・ありがとう、話してくれて。・・・あなたが私たちの娘にしたことは、どんなにひどい理由であっても許されないことよ。でも・・・そこまでひかりを思ってくれて、ありがとう。」
零花「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・・・」
ひかりはそのあと転校していった。
私はこの時、二度と同じ過ちは繰り返さないと心に決めた。
またひかりがここに戻ってきたのはおそらくひかりのお父さんの差し金だろう。私が今の高校に戻ったことは伝えているはずだ。
零花「今度は、絶対に間違えません。必ずひかりを守ります。」
その頃、ひかりと零花を狙う影が動き出そうとしていた・・・