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『夕刻』と『暁暗』  作者: 夢野 いのり
第一節 地獄の始まり
3/11

第3話「残酷な過去、絶望のチャイム」(ひかり視点)

ひかり「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


どんどん呼吸が荒くなる。動悸がひどい。酸欠で意識が薄れそうになる。呼吸を整えるために桜の木の下に座り込み、ゆっくりと深呼吸をした。


ひかり「はぁ・・・はぁ・・・・・・ふぅ。」

ひかり(怖い・・・一年間、彼女と同じクラス・・・。三年前と・・・同じ・・・・・・。)


当時のことを思い出しながら、重い足取りで校舎へと戻った。



ひかり「零花・・・なんで・・・・・・」


零花とは中学三年間同じクラスで、いつも一緒にいるぐらい仲が良かった。あの日までは・・・。中学二年生の12月に彼女の両親が離婚したのだ。原因は母親の不倫だった。今の夜霧は新しい再婚相手の性だ。零花が変わってしまったのは、彼女の母親が再婚した4月・・・三年のころからだ。



中学三年生時・・・


私とは一切口を利かなくなり、零花はガラの悪い人たちとつるむことが増えていった。最初の一か月は無視だけだったが、しばらくすると校舎裏に呼び出され、周りの仲間と一緒に殴る蹴るといった暴力までするようになっていった。


当時担任だった中谷先生にも相談したのだが、逆に「そんなことどうでもいいから」と、話しすら聞いてもらえなかった。この先生は、生徒のことなど見ていないのだ。


零花からの暴力や嫌がらせ行為は日に日にエスカレートしていった。教科書を捨てられる、上履きに画びょうを刺される、机に落書きされる、といった行為が半年続いた。その頃には私の精神は崩壊していた。


いじめが始まって7か月が経過したころ、脱衣所で衣服を脱いでいるときにそれまで隠していた体中の傷を、間違えて入ってきた父親に見つかった。見つかった時、背中は所々どす黒く変色し、胸部周辺は切り傷やひっかき傷、手から肩にかけては明らかに変な方向に曲がっていたりと、明らかに体は悲鳴を上げていた。


父はすぐに母と姉を呼んだ。母と姉は何も聞いてこなかった。気を使ってくれたのだろう。父が「その傷、どうしたんだ・・・」と聞いてきた瞬間、私は皆の前で自分が裸なのも忘れ、大声で泣いた。どれだけ泣いていたかはわからない。母はそっと抱きしめてくれた。


姉と父は少し話し合って、私のためにすぐに転校することを進めてくれた。そして、一週間後に私たちは父の転勤先がある場所へと引っ越した。でも、傷は簡単には癒えなかった。


引っ越してからも、2か月は外に出れず、大きな音が立っただけで泣き出してしまうほどだった。


人の会話も、

「私のことを話してるんじゃ・・・」

「私を陥れるつもりじゃ・・・」

と、疑心暗鬼になるほどだった。このような状態が3か月続いた。


カウンセリングに通うことになり、結局中学三年生~高校一年生の一学期の途中までは学校に行くことはできなかった。



これらのこともあり、カウンセリングもこっちに戻る直前まで通っていたため向こうの学校になじむことができなかった。こっちに戻ってきた理由は、零花やいじめっ子たちが全員高校入学とともに市外の別の学校に進学したと聞いたからだ。もう会うことはないと思い、カウンセリングも終わったためこっちに戻ってきた。


だが、ちょうど零花がこの学校に戻ってきていたのだ。おそらく、校長先生は知っていたのだろう。私と零花の当時の話は、父が当時の校長先生や学校の先生に洗いざらい伝えている。当然教育委員会にも伝わっているだろう。事件のことを知っていても何ら不思議ではない。あの時顔をしかめたのは、おそらくそういうことなんだろう。


ひかり「一年間も・・・耐えられるわけ・・・ない」


直後、外から声が聞こえてきた。どうやら式が終わったみたいだ。ここから一年間、恐怖の学校生活が始まる。


式終了の合図とともに、絶望の始まりを告げるチャイムの鐘が学校中に響きわたるのだった。

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