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『夕刻』と『暁暗』  作者: 夢野 いのり
第一節 地獄の始まり
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第2話「始まる学校生活、最悪の再会」(ひかり視点)

20○○年4月7日月曜日


ひかり「あーーーー!!!!!!なんで起こしてくれなかったの?!遅刻ギリギリなんだけど!!」

そら「昨日夜更かししたのが悪いんじゃない。自業自得でしょ?」

ひかり「いや!あれはお父さんの、ってこんなこと言ってる場合じゃない!バス出るまであと20分しかないじゃん!!急がないと!!!!」


結局あの後眠れたのは深夜2時を回ってからだった。あんな恥ずかしい話を家族全員にされて照れない人はいるのだろうか・・・


直哉「おはようひかり~。朝食は?」

ひかり「いい!行ってきます!!!あっ、お父さん!あの話、絶対に他の人にしないようにね!!!いい!絶対だからね!!!」

直哉「はいはい、いわな・・・ってもういないし!!」


私は勢いよく玄関を飛び出しバス停を目指す。手に持っているピンクのカバーにストラップのついたスマホを見る。現在時刻7時15分。バスが出るまで残り5分しかない。全力で走って間に合うか怪しいところだ。スマホをポケットに入れて無我夢中にバス停までの道を走る。バス停のある大通りに出てあと少しの時・・・


ひかり「やっばい!バス来ちゃった!」


私は走るスピードをさらに上げる。


ひかり「車掌さん!!!待って~!!!」


扉が閉まるギリギリでバス停に到着し、なんとかバスに乗車した。


ひかり「危なかった~・・・」


転校初日から遅刻はシャレにならないので、本当に間に合ってよかったと思いながらバスに揺られて学校へと向かった。


数十分後。

高校前のバス停に到着した私はゆっくりと校門をくぐり、本校舎へと向かう。校舎までの道のりには、この学校で一番綺麗とされる八重桜トンネルがあり、まるで観光名所のように人混みができてしまうこともある。


ひかり「・・・桜なんか嫌いだ」ボソッ


言葉をこぼす。あの出来事があってから私は・・・


ひかり「っと、そういえば校長室に行かないといけないんだった。急がないと。」


校門をくぐり、トンネルを走って抜けて校舎に入った。現在時刻8時。入学式・始業式開始が9時からだが、まだ本校舎に来ている生徒は数えられる程度しかないようだった。思ったより少ないなと感じながらも校長室へと足を動かす。


???「・・・」

ひかり(ん?なんか、視線を感じる・・・?)


そのばあに立ち止まって辺りを見回したが、特に誰もいなかった。


ひかり(気のせいかな?とりあえず校長室に急がないと。)


止まっていた足を再び動かした。さっき感じた視線は何だったのだろうか?疑問に思いながらも校長室についた私は、コンコンとドアをノックして部屋に入った。


???「・・・お帰り・・・・・・ひかり、ちゃん。」




校長室にて・・・


高田校長「おはようひかりさん。今日からよろしくお願いします。」

ひかり「おはようございます校長先生。一年間よろしくお願いします。」


お互いにあいさつを交わした後は、5分ほど今日の日程について説明を受け、手続きのコピーや、今後の学校生活で必要なものが書かれた書類の入ったファイルを受け取り、校長先生の入学式と始業式の準備があるため話はここでいったん切ることになった。


高田校長「そろそろ私は行かなければならないのでね。ひかりさんは式には出ないのだろう?まだ40分ほどあるから、学校を回るといい。ここに直接来たってことはクラスも確認していないだろう?」

ひかり「そうですね。まだクラスも確認してないですし、校舎も回ってみたいです。お気遣いいただきありがとうございます。」

高田校長「うん。では。」

ひかり「ありがとうございました。」


そういって校長は式が行われる体育館へと向かっていった。私も校長室を後にし、まずはクラスを確認するため昇降口に向かった。


ひかり「・・・あ、あった。3年5組か。他に誰がいるのか・・・な・・・・・・」


私はその名前を見て、言葉を失った。聞きたくも見たくもなかった名前が2つあった。


ひかり「中谷・・・みつり・・・・・・、夜霧・・・・零花・・・・・・。」


3年5組の欄に記載された名前を見て、私はその場を逃げるように走り去り、八重桜トンネルまで走って一本の木の前で止まった。そこで私は中学の記憶を思い出していた。中谷みつりは中学時の担任で、数学教師。私が転校した理由の1つにこの先生がある。でも、この先生よりも・・・


ひかり「なんで・・・いるの・・・・しかも・・・なんで同じクラスなのよ・・・・・・」


その瞬間、後ろから声がした。


???「久しぶりだね、ひかりちゃん。」

ひかり「・・・零花・・・ちゃん・・・。」

零花「感動の再開なのに、なんでそんなにテンション低いの~?悲しいんだけど。」

ひかり「・・・・・・」


夜霧(やぎり) 零花(れいか)。私が転校した理由の元凶。中学生時代、私は・・・彼女からいじめを受けていた。それに耐え切れなくなった私は、彼女のいない遠い地まで転校することになったのだ。ここではない高校に進学したと聞いていたのに・・・


零花「さっき廊下で見かけてね~。私も去年ここに転校したんだよね~。ねえねえ、ひかりちゃんの転校先の学校はどうだったの~?ボッチにならなかった?こっちにいたときみたいに、ねえw」


あの時感じた視線は零花だったのかとする。


ひかり「そ・・・そんなこと・・・ない。」

零花「へえ~。よかったね~、ボッチにならなくて~www」

ひかり「・・・」

ひかり(変わってない・・・あのときから・・・なにも)

零花「何?無視?ひかりのくせに生意気。中学の時みたいに、たっぷり可愛がってあげようか?」

ひかり「ひっ・・・」


喋れない・・・いや、喋りたくても喋れなかった。どれだけ言葉を発しようとしても、直前で突っかかって声として出すことができない。恐怖で体がすくむ。


零花「・・・なんてね。また一年間・・・よろしく、ね。」


そういって零花はこの場を去っていった。不吉な笑みを浮かべながら。彼女の後ろ姿が見えなくなるまで、私はその場に立ち尽くすことしかできなかった。

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