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おまけの後日談その2 前編

二人がイチャイチャしているだけの後日談ですが少し長くなってしまったので前編後編に分けました。後編も本日中に公開予定ですm(_ _)m

 とある日の昼下がり。


「エリーザ」

「ダレル様……」

 いつもの花園で二人並んで木陰に腰を下ろし会話をしていると、ダレル様がそっと私の手に手を重ねて名前を呼んだ。それだけで、甘い甘い雰囲気が私たちを包み込む。


 彼の熱っぽい眼差しにのぼせてしまいそうになり、私は赤くなった顔を隠すように俯く。ダレル様はそんな私に顔を見せてと顎を持ち上げて優しく微笑むのだ。


「愛してる」

「わ、私も……」


 私も同じ気持ちだと伝えたいのに、言葉が喉で止まり出てこない。

 ドキドキし過ぎて心臓が口から飛び出してしまいそうなんですもの。

 そんな精神状態の中、彼の唇が私の額や瞼、頬へと触れる。もう駄目だわ。刺激が強すぎてっ。


「ス、ストップ!!」

「エリーザ?」

 近すぎる距離から飛び退くと、ダレル様は少し驚いた顔をした。

「わ、私、急用を思い出したので、これで失礼します!」

「待ってくれ、エリーザ!」


 呼び止める声も聞こえぬふりをして申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、私はろくに目も合わせられないまま花園を駆けて逃げ出したのだった。






 次の日。


「はぁ……」

「よう、エリーザ嬢。御機嫌よう」

「きゃっ、オスカー!」

 放課後、王妃教育の先生がいらっしゃるまで時間が空いていたので校内の廊下からぼんやりと外を眺めていた私は、オスカーの言葉にハッとする。


「なんだぼ~っとして。まさかまた殿下とすれ違ってるのか?」

「そんなことないわ。あれからダレル様は、気持ちを言葉や態度で伝えてくれるようになったもの……」

 昨日みたいに熱っぽい眼差しや言葉で……。


「おやおや~、なに思い出して赤くなってるんだ?」

「あ、赤くなんてっ」

 なってないとは言い切れなかった。


 最近知った一面だけれどダレル様は意外と情熱的な所があるみたい。それに比べて私は、照れもありあまり自分の想いを伝えられていない。心臓がもたなくなるとしどろもどろになってしまったり……

 それが悩みと言うか申し訳ないし情けない。

 ダレル様もこんな私では物足りなく感じているんじゃないかしら。不安になってくる。


 両思いにさえなれれば悩みなんてなくなると思っていたのに。なかなかそうはいかないみたいで、恋愛って難しいわ。


「私も、もっとダレル様をドキドキさせられたらいいのに……」

「へー」

「えっ!」

 ニヤニヤ顔のオスカーを見て今思ってたことを口に出して言ってしまったのだと気付いたがもう遅い。


「そんなの簡単だろ。オレがアドバイスしてやろうか」

「い、いらないわ。オスカーのアドバイスって、なんだか……ハードルが高そうだもの」


 たとえ前世の記憶を総動員させても恋愛初心者の私ではオスカーの恋愛経験値に及ばない自信がある。

「オレを誰だと思ってるんだよ。ちゃんと相手のレベルに合わせたアドバイスをするに決まってるだろ」

 とか言いながらずっとニヤニヤしてるから信用ならない。


「いいです! アドバイスなんて必要ありませんわ!」

「え~、たった一言で殿下をドキドキさせられる決め台詞があるんだけどな~」

「ダ、ダレル様をドキドキ……それもたった一言で?」

「今よりぐぐっと仲を深められる事間違いなしだぜ?」

「仲を深められる?」

「ほらほら、気になるだろ? 耳貸せよ」

「…………」


 本当かしらと疑いながらも、好奇心を押えられず私はオスカーの方へ顔を寄せ耳を傾けた。

「いいか、殿下に……一緒に夜明けのコーヒーを飲みたいって言ってみろよ」

「……え?」

「簡単だろ?」

「え、ええ」

 思っていたのと全然違ってきょとんとしてしまう。


「でもダレル様はどちらかというと紅茶派よ、なんでコーヒー」

「おっとストップ! 無暗に口に出すなって」

「またからかってるでしょ。こんな台詞でドキドキするはずないわ」

「バカだな。これは古くから使われている口説き文句みたいなものだぜ」

「そうなの? どこがですの?」

「今より深い仲になりたいんだろ。想像してみろよ、明け方二人でコーヒー飲んでるところ」


「昼間にしているお茶会となにが違うの?」

「これだから世間知らずのお嬢様は。いいか、夜明けに二人でコーヒー飲むってことはだな」

 オスカーがなにか言い掛けていたけれど、そこで校内に時刻を知らせる鐘が鳴り響いた。


「おっと、時間か。オレはこれから外せない用事があるんだ。行くな」

「用事って貴方、また夜遊びしに行くんじゃ」

「はは、まあまあ、じゃーな。いいか、ここぞって時に使ってみろよ。さっきの台詞!」


「え、ちょっとっ」

 オスカーったらさっきなにか言い掛けていた気がしたのだけれど、ひらひらと手を振っていなくなってしまった。

「まあ、いいわ。そろそろ先生がいらっしゃる時間だし、私も行かなくちゃ」

 こんなところでぼんやりとして授業に遅れてしまったら、それこそオスカーに色ボケだってバカにされてしまいそうだもの。

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