東京某所にて
肌寒い曇り空。
季節を勘違いした桜が小さく芽吹き、丸っこい冬毛の雀が小枝を揺らす。
河川を辿ること数分、古びた橋が見えてきた。
貨物列車が通っていのだろう。歴史的遺産である鉄橋は潮風に当てられ、茶黒い錆を残してもなお立ち続けていた。
河川敷じみた雑踏の上を歩き、緩やかなスロープを下る。雲の合間合間からは淡い夕焼けが水面を照らし、複数立ち並ぶ高層マンション群が暗く長い影を揺らす。
湿り気のある磯の香り。鼻孔をつく度に変に哀愁を感じさせられる。
時刻は四時半に差し掛かった。
向こう岸、学校のチャイムが虚空に響き渡る。特有のテンポを刻む電子音は、まるで自身の記憶を引き戻すような懐かしさを届けた。