夏祭り
前回新たに出会った仲間たちと夏の定番、夏祭りに行く鏑木。そこで出会った神楽の舞を踊る女の子は……
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「で?これからどうするの?」
期末試験も無事に終わり、今回は赤点どころか60点も取れた。いつもの2倍近い。新道は安定の90点台、マロは70点台の普通の極みだ。
「なんで自然に俺たちに和んでるんだよ霜月」
「席がアンタの前なんだから仕方ないじゃない。それに60点以上取れたら一緒に勉強してくれたお礼にアイス奢ってくれるんでしょ?私、利久堂の杏ソフトサンデーがいいなぁ」
「たけぇよ。300円もするじゃねぇか。パピコだパピコ」
結局、多数決という非人道的な手段によって利久堂に行く羽目になったのだが。まぁちーちゃんも一緒に来てくれたし1,200円くらい……1,200円!俺の分も入れたら1,500円!小遣いの四分の一じゃねぇか!それに今夜は稲荷神社のお祭りがある。縁日資金がなくなる!ここは縁日にちーちゃんを誘って浴衣姿を拝んでリターンを得なければ。
「今夜の夏祭りなんだけどさ。新道とマロも行くよな?ちーちゃんも一緒にどう?」
よしよし。自然な流れで誘えたぞ。
「あー。私達も行くよ~。ってか、あの夏祭りはみんな行くでしょ。この街の唯一の行事だし。しかも、今年の奉納の舞は珠里ちゃんなのよぉ。絶対に見たい」
くっそ霜月め……なんでいつも俺の邪魔ばかりするんだ。まぁちーちゃんが一緒に来るなら仕方ないか。
「そんじゃ、18:00に神社近くのコンビニで待ち合わせってことでいい?わー。何着ていこっかなぁ。ちーちゃんは浴衣着るの?え?自分で着れるの?いーなー。私の着付けもしてよ……」
霜月達とマロは別方面だから、新道は俺と一緒に帰る。
「なぁ。鏑木。お前本当に霜月と付き合ってねぇのか?」
「あ?付き合ってる通り越して夫婦ですよもう。なんでいっつもあんなに絡んでくるのか」
「いや、真面目な話でさ」
「付き合ってねぇよ。なんで。新道、霜月が好きなのか?」
「ああ」
そっか。新道は霜月が好きなのか。って、えぇぇぇっ!マジか!マジなのか!アレを好きになるのか!キャミソール派じゃないのに?しかし、アレを引き取ってくれるのは助かる。おし。これは応援してやろう。
「でさ。今夜の夏祭り、霜月とちょっと時間作れるようにしてくれねぇか」
「わかった。後でマロに電話して協力してもらうよ。あ、マロに言ってもいいのか?」
「いいぜ。あいつもう知ってるし。ってか、あいつ霜月にフられてるんだぜ。それに霜月はモテるからな。早めにアタックしておかないと夏休みに誰かに先を越される」
えぇぇぇっ!マジか!マジなのか!あのマロが!霜月に!なんで霜月はそんなにモテるんだ。信じられん。
しかし驚いたなぁ。マロと新道がなぁ。アレのどこがそんなにいいのか。わからん。俺は断然ちーちゃんだな。失礼の無いよう、今日は早めに出てちーちゃんを待たせないようにしよう。そう思って15分前に待ち合わせ場所のコンビニに到着したのにちーちゃんはもう待っていた。
「あれ。早いね」
「うん、着付けが思ったよりも早く終わったから」
あー、浴衣姿も可愛いなぁ。二人きりとかデートみたいじゃ……
「お待たせ~。あれ?鏑木じゃん。15分も前にどうしたの。いつもは遅刻魔なのに」
「なんで霜月がここに」
「なんでってなによ。一緒に行くって言ってたじゃない。それに着付けをちーちゃんにやってもらうって言ってたじゃない。ほら、どう?私の浴衣姿。惚れちゃう?」
「惚れねぇよ。それに着付けの件は知らねぇよ」
「お待たせー。あれ?鏑木もういるじゃん。10分も前にどうした?いつもは遅刻魔なのに」
「お前らな……」
新道とマロが一緒にやってきた。新道は浴衣を着ている。マロは半袖パーカーに半パンサンダルだ。やる気ねぇなコイツ……ま、ライバルがひとり減ったということは良いことだ。
「んじゃ、行こうか」
しかし、女の子の持ってる巾着みたいな小さなやつにはなにが入ってるんだ。霜月にでも聞いてみるか。あ、でも今回は新道の件もあるしやめておこう。俺は前を歩く霜月について行くように新道を押し出す。その後ろにちーちゃんと俺。一番最後尾にマロを押しやった。悪く思うなマロよ。マロは嫌な顔をせずにご機嫌な顔で一番うしろをついてくる。あ、こいつ、、、スカートじゃなくてやっぱりケツ派なのか。けしからんな。俺のちーちゃんのお尻を舐め回すように見やがって。
「おー。今年も縁日がたくさん出てるねぇ。なにから食べようかなー♪」
霜月は食うことになると元気が出るやつだな。ちーちゃんはりんご飴とか似合いそうだなぁ。買ってあげちゃおうかなぁ
「お。フランクフルト!おじさーん2本下さーい。はい、ちーちゃん」
「霜月、俺の分はどうした」
「は?なんで私がアンタの分を買わなくちゃいけないのよ」
そうだ。新道はなにしてる?こういうときに霜月を一緒に買いに行こうとか誘って行けばいいのに……。新道とマロは焼きとうもろこしを食べていた。新道、、、それは歯に挟まるぞ。
一通り縁日を楽しんだ後に奉納の舞の時間になったのでみんなで見にゆく。新道には「マロとちーちゃんはこの人混みではぐれた感じするから、このチャンスを逃すな」って言ったけど上手くやれるかな。
マロがちーちゃんに下駄に泥がついてるとかなんとか言ってるスキに新道は霜月と先に行って作戦通りはぐれた。マロは泥を取ってあげるとか言って屈み込んでるけど、目線の先はちーちゃんのお尻だ……。徹底してるな。そりゃ霜月にもフられるわけだ。
いよいよ奉納の舞。確か女の子の方の舞手の名前は……霜月はなんて言ってたっけな。ちーちゃんに知っているか聞いてみたところ、横井珠里という名前で同じクラスの友達とのことだった。お。始まったぞ。アレが珠里ちゃんか。なかなかの美人さんだ。化粧をしているせいもあって大人びて見える。男の方は……なんか異様に気合が入ってるな。しかも舞いながら泣いてやがる。感極まったのかな。
舞も終盤に差し掛かった頃、俺は珠里ちゃんに見惚れていた。気がつくとマロとちーちゃんがいない。あの野郎……。舞が終わってみんなを探すと、社の横手にちーちゃんを見つけた。珠里ちゃんも一緒にいる。霜月と新道、マロはいない。
「おーい。あれ?マロは?」
「うーんと……えと……帰りました」
「え?なんで?」
「その……舞の途中に連れられていきなり告白されたんですよ。私もうびっくりしちゃって……咄嗟に断ったら、そうか、、って顔して帰っちゃいました」
マロ……なにやってるんだ……。霜月にもそんなノリで告白したのか?絶対にダメなやつじゃん。霜月、そういうの嫌いだもんな。
「えと……」
「あ、ごめんなさい。この人は鏑木先輩。霜月先輩の同級生なの」
「そうなんだ。あ、初めまして。横井珠里といいます」
あぁ、可愛い。声も可愛い。いいなぁ。それに身長は低いのに霜月と違って……。
「初めまして。鏑木宣親といいます。今日の舞は最高に綺麗だったよ。見惚れた」
「ありがとうございます」
横井珠里、、、横井、、、どこかで聞いた名前だけど、横井なんてどこにでもいる名前だし気のせいかな
「先輩、もう、どこに行ってたんですか。もうすぐ花火が始まりますよ!」
いつの間にか霜月と新道がいる。珠里ちゃんの着替えてちーちゃんと花火を見に行くところだった。新道……、どうだったんだ?目配せをすると半笑いで目を逸らされてた。
ダメだったのか……。マロといい、新道といい、この夏休みは散々だな。俺は負けないぞ。あ、でもちーちゃんと樹里ちゃん、どっちも捨てがたい……。などと成功する前提で考えていたところで花火が打ち上がった。




