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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私と精霊のシリーズ

私と精霊の非日常【ボスキャラ大移動】

作者: 暁月夜 詩音

この作品は、yukke様企画のリレー小説の第8部です。


第1部の小説はこちらです。

【https://narou.dip.jp/index_rank.php?ncode=n8268eg】








「ねぇ、本当にここが異界と繋がる土地、なの?」

 金髪に緑色の瞳の少女が話しかけてくる。だが、腰には少女には似合わない刀剣が二振り帯刀していた。彼女の名前はユグドラシル。精霊、と呼ばれる存在である。



「ん?異界と繋がってる訳ないじゃん」

 そんなユグドラシルの質問に返答したのがユグドラシルと契約しているマスターのエリミアナである。



「そんな簡単に異界と繋がったら、この世界が滅ぶぞ?そうだろう?マスター」

 エリミアナの周りを飛んでいるのが、ティンカーリュと呼ばれる精霊である。こちらは、人形の精霊ではなく竜と兎を足して割ったような姿である。


 今三人が来ているのは、異界と繋がる土地と呼ばれている場所だった。

 周りが全て山に囲まれているが、一ヶ所だけ平地となっているため湖にはなってはいない。


 ここには、一つの村があったのだが、もう廃村となってしまった。この地で何が起きたのかは誰もわからない。

 理由はこの村に住んでいた人間が全て消えたからである。

 そんな気味の悪く、異界に繋がっているのではないかという噂が囁かれている場所。何故来たのかというと、ただ珍しそうだからという理由である。



 また、何に使うのか分からない不思議でとても大きく古びた神殿があった。




「そろそろ、暗くなってくるね。ユグ、頼める?」

「もっちろん」

 近くにある木に手で触れると、その木の姿形が変わりだした。大きくドームのようになっていく大木。そして、三人をすっぽりと覆えるようになるまで大きくなった。


「さすが、植物精霊」

 そうユグドラシルは、植物の精霊なのである。なので、このようなことは朝飯前である。


「じゃぁ、夕飯にしようか」

 そんなエリミアナの声と共に空が少しずつ暗くなっていく。





「ギギッ。改心などするものか。だが、最強となればまた……」

 そんな小さな声と共に、夜が急に深くなったのを木のドームにいたエリミアナ達は気づかなかった。




※※※




「ねぇ、エリぃ。空がくらーい」

 木のドームの外側からエリミアナに向かって叫ぶ。



「ん?まだ朝じゃないから暗いのは当たり前じゃないの」

「いえ、マスター。もう朝です。寝てから6時間半経っています」

 ティンカーリュがエリミアナの間違えを訂正する。正確な体内時計を持っているので外れることは殆ど無い。



「とりあえず、何が起こるか分からないから装備だけは整えて外に出よう」



 エリミアナのいつも使用している蒼竜のローブと魔弓 アルヴェを掴む。金属鎧よりも堅くしなやかなローブは幾度と無くエリミアナを危機から救った逸品であり小さな傷が所々についている。


 魔弓 アルヴェにしてもそうだ。かなり高位の付与魔術と魔術媒体を使用して一から作った相棒である。


 ユグドラシルは昨日帯刀していた二振りの剣を持つだけで良い。精霊のため殆ど怪我をすることはないからだ。しかし、怪我をしないわけではない。痛覚は無いが、傷はつく。





 恐る恐る、というように外へと出て周りを散策し始める。朝であるというのに月明かりすらも無く、真っ暗で完全な夜が辺りを支配していた。






「ティンっ、下がって!」

 エリミアナの指示にすぐに従い後ろに下がる。べちゃりとした真っ黒な塊が空から降ってきたのだ。



「なにこれ~。気持ち悪ーい」

「マスター、ありがとうございます」

 二体の声が重なったが、一応内容は聞き取れた。




「ギギッ。最強に近い俺様の糧となれ」

 突然喋りだしたナニカは、楕円形で黒い毛が全身に覆われていた。ティンカーリュも真っ白な毛で覆われているが、黒いナニカからは嫌悪感しか感じなかった。そして、昆虫のような足が生えていた。

 しかし、治りきっていない傷や傷が至る所に付いていた。ここではないどこかで、激戦を潜り抜けていたのだろうか。



「エリ~。暴れるねっ」

 二振りの剣を抜く。黒鋼樹(クロコウジュ)と呼ばれる木を削りだした木刀である。


 思いっきり近づいて、黒いナニカを斬りつけた。

 だが、その鋭い斬撃は後ろの木を切断しただけで、黒いナニカをすり抜けてしまった。


「えぇ、なにこれ~。攻撃した筈なのにぃ」

 確かにユグドラシルの攻撃は黒いナニカに当たっていた。それなのに傷一つ、ついていなかった。



「貴様、何者だっ」

「俺様は悪の大妖怪、世壊シ。世界を渡り最強となる妖怪だ」

 ティンカーリュの問いに答えた。それは、黒いナニカは世壊シと名乗っていた。



「ヨコワシ?ヨウカイ?何それ?でも、悪を名乗るなら敵っ」

「まって、ユグ。ティン、目眩ましっ」

 また走って世壊シを斬りつけようとするユグドラシルを止めて、ティンカーリュに指示をだす。


「了解。閃光」

「ギャッ、眩しい」

 ティンカーリュの魔法で創られた眩い光と共に、魔弓 アルヴェから矢が放たれる。その矢は世壊シに突き刺さって地面に落ちた。だが、世壊シには浅い傷が付いた。



 ユグドラシルの斬撃はすり抜けたのに、だ。



「マスター、恐らくあの目がスイッチになっています。目を閉じてる時のみ攻撃が効くようです」



「ギギッ、俺様に傷をつけたな。だが、なぜ弱点が分かった」

「勘だっ」

 エリミアナが叫び返した。まさかの、勘である。


「ギギッ、これはどうだ。一閃」

 ぼへぇ、としていたユグドラシルに向かって鋭い斬撃が放たれた。

 周りの木々を巻き添えにしながら、刃がユグドラシルに近づいていく。




「ふぇっ、樹壁(ジュヘキ)っ」

 ユグドラシルは持っていた剣の形状を盾に変えて黒鋼樹で弾く。衝撃に強いため、加工すらできないとされる黒鋼樹だが、ユグドラシルの植物を操る能力でその効果は最大限に有効活用されている。


 しかし、そんな黒鋼樹の盾が真っ二つに切れてしまった。


 そしてユグドラシルの顔にも薄く傷が付いていた。



「イテっ、久しぶりに攻撃されたぁ」

 涙目でエリミアナの方を向く。しかし、精霊であるユグドラシルは血液を持っていない。そのため、ただ傷が付いただけである。

 ちなみに、痛覚は無いので痛がっているだけである。




 ユグドラシルは基本的に樹壁(ジュヘキ)で大概の攻撃を弾いている。また、身体能力も高いので回避することもできる。


 そんなユグドラシルが攻撃を受けたのだ。エリミアナとティンカーリュの顔が強ばった。



「ギャギッ。良い能力持ってるなぁ。コピーさせて貰うぜ」

 世壊シの目が赤く怪しく輝く。暗闇にポツンと赤い光が見える光景は不気味であった。


「ユグっ、大丈夫?」

 エリミアナはアルヴェで牽制しようと、矢を幾重にも放つ。




「ギギッ。樹壁(ジュヘキ)

 ユグドラシルと寸分変わらない壁が矢を受け止めた。それは、見慣れている手順で小さくなっていく。


「ええぇぇっ、ユグの能力がっ!」

「使い勝手が良いじゃねぇか、」

 かなりショックを受けていた。ちなみに、先程の傷は無くなっていた。ティンカーリュの回復魔法である。



「ねぇ、ユグ。ユグの能力ってさ」

「うん。植物に触れてないと発動しないよ」

 そうユグドラシルの能力は強力な分、発動条件がある。それは触れている植物しか操れない、というものだ。

 しかし、それ以外は基本的に何も代償を支払わずに能力を使用できる。


「なら、なぜ操れたの?」

「え、ほら大木に触れてるし?」

 エリミアナの疑問に、答えながら指差す。世壊シの足がギリギリ、大木に触れていた。




「あ、本当だ」


「ギギッ、最初のお返しだ。樹槍(ジュソウ)

 樹槍(ジュソウ)、と叫んだが叫んだだけであった。完全に足から大木が離れている。



「へへーんっ、ユグの能力は植物に触れてないと発動できないんだよーだ」

 笑いながら欠点を伝えていた。余程、コピーされたのが悔しかったのだろう。かなり、ドヤ顔であった。


「ユグっ、それ言ったらダメ」

「あっ」

 エリミアナの指摘を受けて、おろおろし始める。


 そして、何を思ったのか先程斬られた盾の半分をぶん投げた。鋭く飛んでいった盾は、世壊シの胴体に突き刺さるように消えた。


 文字通り消えたのだ。これについては世壊シも驚いたようにキョロキョロ左右に目玉を揺らしていた。



「ギギッ、何をした」

「別に何も?」

 明らかに何かしたのに惚けてみせる。だが、その姿が癪に触ったのか攻撃を始めた。


 足での攻撃は、樹壁(ジュヘキ)で防ぐ。ときおり放たれる、一閃に対しては二枚重ねにした樹壁(ジュヘキ)で対応する。だが、二枚重ねにしたところで全て一刀両断されているが。


 エリミアナが矢を放つが、すり抜けて後ろの木に刺さってしまう。ユグドラシルの攻撃もだ。ティンカーリュは、回復や障壁を使った足場の作製など、補助を行っていた。




「ギギッ、樹槍(ジュソウ)

 今度は、大木に足を触れさせてから放った。触れている大木が真っ黒に染まり黒鋼樹へと変質する。黒鋼樹の先端が尖りユグドラシルやエリミアナに向かって飛んでいく。


「もうっ、真似するな!樹槍(ジュソウ)!」

 しかし落ち着いてはいないがすぐに、世壊シと同じように樹槍(ジュソウ)を展開して相殺する。黒鋼樹の木片があちらこちらに飛び散る。



「ギギ、バーニングフィスト」

 一閃やユグドラシルの能力では無い、新しい能力だった。

 世壊シの足の一つが炎に包まれる。これでは、黒鋼樹の盾を使っても瞬く間に引火してしまう。衝撃には強くても炎等には強く無いのだ。


「えぇ~。樹壁(ジュヘキ)っ」

「それでは燃えるだろうっ、障壁」

 ティンカーリュのツッコミと共に、回復魔法である障壁が樹壁(ジュヘキ)の前に展開される。それは、樹壁(ジュヘキ)よりも衝撃には強く無い。その代わりに、魔法系統の攻撃や自然現象に強い。



 黄色に薄く輝く障壁こそティンカーリュの十八番である。

 その障壁に炎の足は障壁に阻まれて、当たらなかった。


「ギギッ、外れたか」

「ふんっ。貴様の攻撃など障壁で防げる」

 嘲笑うように、上空からティンカーリュが言う。輝く障壁がティンカーリュの周りに浮いている。しかしそれは、壁というよりも剣に近い形状をしていた。


「障壁・攻。壱の型」

 小さく呟くと、先程まで浮いていた剣状の障壁が世壊シに向かって雪崩のように落ちていく。遠くから見れば流れ星のようにも見えるだろう。


 刹那、轟音が走る。それは、障壁が地面へと落ちた音である。最大にまで質量を持たせた障壁なのだ。さすがの世壊シでも怪我の一つはするはずである。




 煙が晴れて、そこにいたのは紛れもない世壊シの姿だった。ほんの少しだけ怪我をしていた。


「ギギッ。危なかったぞ」


「これでも倒れないのか……」

 ティンカーリュが驚いたように言う。余程、悔しかったのだろう。いつも、感情を表に出さないティンカーリュが悔しげな顔をしている。


 エリミアナも驚いていた。必殺と呼べる程の攻撃を受けても全く倒れる気配の無い世壊シに。





 直ぐに世壊シの足元へと矢が放たれる。深々と地面に突き刺さる矢が威力を物語っていた。


「まだやる?やるならこっちにも考えがあるけど」

「ギギッ、いや良い。弱点も聞けたことだ。他の世界に移るとしよう」

 その静かな小さな問いに、世壊シは闇に溶けるように、掻き消えていくことで答えた。



※※※



「まさか、本当に異界と繋がっていたとは。そして、世壊シと言ったか。アレは強かった」

 ティンカーリュが感慨深げに呟いた。


「そうだね。私も驚いた」

「ねぇ、エリぃ。ユグね、ヨウカイってのを見てみたいっ」


「こことは違う、異界に行かないと行けないだろ?」

 ユグドラシルが笑顔で言ったのを現実的に無理だ、と暗に諭す。行けるはずはない。なにせ、世界と世界を繋ぐモノが無さすぎる。だが、異界があるという事だけは知った。



「大丈夫っ。お手紙をヨコワシ?に入れといたから」

「届くのか?その前にいつそんなことを?」

 ティンカーリュの疑問は最もである。


「ほら、盾投げたでしょ?それに、届かなくてもいいの。気持ちが大事だから」

 そう言ってユグドラシルは笑った。



おまけ


ユグ「ユグの能力は、《植物を操る》だよっ。エリ」


エリ「知ってるよ」

ユグ「もぉ、つれないなぁ」

エリ「はいはい」


ユグ「能力が使える条件は一つ!植物に触れていること。でも、ある程度触ってないとダメなの。ん~、ユグが投げた壊れた盾よりも大きい植物じゃないとダメかな」


ティン「使い勝手が良いのか悪いのか、分からないな」

ユグ「そーゆーこと言わないのっ、ティン。それに植物は少し時間がかかるけど他の植物に変えることもできるの!」


エリ「触っている間に形を変えて、それを投げるとか、最堅の黒鋼樹から生き物に触れたら霊化する憑霊樹に変える、とか?」

ユグ「そういうこと!さすが、エリ。ユグはその憑霊樹でお手紙を書いたの」


エリ「あぁ、投げた盾ね」

ユグ「そーゆーこと!」


ティン「なぁ、世壊シはどこに行ったと思う?」


ユグ「ん~。きっと、ここじゃない?」


【第九部 https://ncode.syosetu.com/n0283ei/】


ティン「当たっているといいな、私達は確かめる術は無いが」


ユグ「そうだね、ティン。ユグはヨウカイの世界に行きたい!」

エリ「まだ言っているのね、それ」

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